00 前日談
「ミコトさん達ですね、お久しぶりです」
最初に会ったのはデルミンだった。…うむ、これじゃどちらのヒサメなのかわからないな!←
「うん、久しぶり~。ひーちゃんは元気にしてる?」
何気なく言うと、デルミンは少し考えてから「一応、という感じですかね」と答えた。
一応?何かあったのかな…と思っていると、デルミンの後ろから彼女より少し高めの影が現れる。
「…久しぶり」
黒いパーカーと白のロングスカート。そして白い髪を雑に結んだルーズサイドテールの女性…ヒサメだ。この格好ということは、どうやら「実験体ルート」の方の世界線に来たみたいだ。
「ひーちゃんやっほ、久しぶりー」
笑いながら手を振ると、ヒサメも控えめに手を振り返してくれた。表情は…相変わらず薄い。
「元気にしてました?ちゃんとご飯食べて寝てましたか?無理な実験とかされていませんか?それから……──」
対しイツキはヒサメの頭をぽんぽんと撫でながら質問を一気に投げる。
さすがに質問の数に困惑しているのか、言葉に詰まっている。そのままイツキに頭を撫でられていて、少しだけ困った表情をした。
「質問しすぎじゃんいっつー。というかその対応だとアレだよ、おじいちゃんみたい……いやおじいちゃんだったか」
「否定はしませんよ」
「しないんですか」
まさかのボケを肯定され、固まっているとデルミンも思わずツッコミを入れる。しかしそれでもイツキはヒサメを撫でることをやめない。おじいちゃん、そろそろステイ。
「どこだ相棒ー…って何だよこの状態」
「それは私も思ってるんじゃがー。まあそれはさておき…13もやっほー」
ひょっこり顔を出した13。イツキに一方的に撫でられているヒサメをみて若干引き気味の反応をする。私が手を振ると「おー」と言いながら軽く手を振り返してくれた。
「つーかどーいう状態?コレ」
「なんだろーね、いっつーのおじいちゃん力の暴走?」
13の問いに適当に答えてみたけど…うん、まあ、あながち間違いんじゃないかなとは思う。
何故かイツキはこちらの世界線のヒサメをやたらと気にしている傾向がある。恐らくだけど、彼女が「人体実験を受けているホムンクルス」というのが関係しているんじゃないのかと私は考えている。
…イツキ自身も、人体実験の被害者であるから、それと重ねてしまっているのかもしれない。しかも、「本来のヒサメ」の姿を知ってしまっているから余計に気にかけているのかもしれない。
私も心配していないワケではない。だけどまあ…大丈夫なんじゃないのかなぁと思っているからそこまで敏感にならなくてもいいんじゃないのかなー…。