00 前日談


 …結論から言うと、イツキの謎の暴走は止められた。

 止められたけど、私がアホみたいに騒いだのもあって、誰かが通報したのかある意味当初の目的であるVoidollは来てくれた。…かなり迷惑そうな目(?)をしながらだけど。

「ヤレヤレ、本当ニ人間ハ無駄ガ好キナンデスネ。」

「滅相もありませんですわー…というか私悪くない…」

「コチラノ世界ニ来タノナラ普通ニ言エバヨカッタノデハ?」

「正論すぎて何も言い返せない…」

 Voidollに説教をされ、あはは…とイツキが力なく笑った。…このぶっ飛び思考、やはりイツキが人間という慣性とかからズレているからなのだろうか…と思う。いや多分そうでしょう、そうに違いない←

 軽い現実逃避をしていると、「ソレデ」とVoidollが私の方を見た。

「今回ハ何ノ用件デショウカ?」

「えっとね、ひーちゃん……ヒサメ達に会わせて欲しいかなーって」

 ヒサメ。その名前を聞いて一瞬Voidollが目を丸くした。…彼女はロボだ。人間とは異なった目元が「驚く」の表情をした、というのが気になる。だって、ヒサメと会うのはこれが初めてではないし、既に何回も会っている。

「…ワカリマシタ。案内シマショウ」

 しかしVoidollは何事も無かったかのように言い、私達をヒサメの所へ案内してくれたのだった。

 …こういう時、人間じゃないからVoidollが何を思考し、感じたのかを見ただけでは判断出来ないのが厄介だなぁ…と考えていた。

(ハッキングすれば分かりそうだけど…ボイちゃんは色々と難しそうだなぁ…)

 何処かの黒いフードの死神のヒーローも電源ボタンは何処だ?と探していて見つからないみたいだし…。ハッキングした所で、彼女の「本当の思考」は手に入らないだろう。というか、別の何かに繋がって、余計なことになってしまいそう…。

(…ま、そこまで興味はないからそんなことしないけど)

 思い耽っていると「着キマシタヨ」と声を掛けられ、Voidollが一礼して去っていく。

「お、ありがとーボイちゃん~」

 去っていく姿に手を振り、隣にいたイツキを見る。私の視線に気づいたのか「どうかしました?」と訊いてきた。

「んにゃ?なんでもないよー」

「そう?ならいいけど…」

 頭の上に「?」を浮かべていそうな表情をしているイツキをよそに、どちらのヒサメかなぁと私は考えていた。

 
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