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00 前日談


 ──西暦2020年某月某日


『ようこそ。コンパスへ』

 何処か機械的な女性の声が響く。白い世界に、私達は立っていた。

 白い世界に見覚えがある。
 ここは、コンパスの世界。以前ミイヤに何度か飛ばされたことのある世界だ。

「うーわ、またコンパスの世界じゃん…」

「まあ…何処かのデスゲームが行われる荘園に飛ばされるよりはマシじゃないのかな?」

 その言葉を聞いて終わらないデスゲームに巻き込まれた思い出が過る。
 あーれもアレで大変だったなぁ…と思わず遠い目になる。

「そりゃそうだけどさぁ…」

 溜息を吐きながら隣にいる青年…イツキを見上げる。相変わらずイツキは微笑んでいた。

「いっつー、最初に飛ばされた時のこと覚えてる?私ら、異物の侵入扱いで危うくボイちゃんに吹っ飛ばされかけたんだよ??」

「あぁ…そんなこともあったね」

「かっる!?想像以上に軽いよいっつー!!」

「だって、この世界には何回か来ているんだよ?もうある意味慣れたんじゃない?」

「いっつー!!!そういうの慣れちゃダメなやつぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 渾身のツッコミをイツキに決める。イツキ、それ本当に慣れちゃダメなやつ、異世界転移で慣れというのは慢心に繋がってそのまま死亡フラグへと…なんていう可能性もあるから…!
 と、解説しつつ、イツキの胸倉を掴んでガクガクと揺らそうとするが身長差があるのでそんなに効果がない。解せぬ。

「はは…それにしても、今回はどっちの世界線の方なんだろうね、ここ」

「んぇ。あー…どっちのひーちゃんなんだろう」

 ひーちゃん。正しくは「ヒサメ」という、とあるコンパスプレイヤーの一人の子だ。以前飛ばされた時に知り合った──ホムンクルスの少女。

 しかし彼女はパラレルルートのような物が存在していたらしく、明るく男勝りの方が本来の物と考えるなら…ホムンクルスという存在故に実験体にされてしまっているもう一つの世界線の彼女にも会った。
 …当然、別の世界線でも同じようにボイちゃんことVoidollボイドールに異物扱いされて泣きそうになったが。

「ひーちゃんとその周りのメンバー見ればわかるとは思うんだけどねぇ」

 ヒサメの周りのヒーロー達…どちらの世界線でも約3人程は変わらない。変わらないけれどその内の一人との恋愛関係が異なっていた。本来の世界線なら13サーティーンという黒いフードの死神のヒーローと、パラレルな世界線の方なら零夜れいやという不思議な青年のヒーローと…いうように。ちなみに残り一人はデビルミント鬼龍族の女の子・デルミンという小柄でツノとケモ耳としっぽ、ツインドリルのような髪を持つ子だけはどちらの世界線でも一緒にいたみたいだ。

「ですよねー…それじゃ、さっそく探しに来て貰おう・・・・・か」

 そう言ってイツキが武器を取り出す。
 ……イヤなにしてんのキミ、何をするつもりなの…?何?何なの?突然始まるいつものぶっ飛び思考?

「えっとーーー…?いっつー…いやイツキ、今から何をするつもりかにゃー…?」

「うん?そりゃ軽く暴れてボイドールに来て貰おうかなぁと」

「ンなことしたら出禁か永久BANされそうだからやめれーーーーーーーー!!!!!!!!」

 本日二度目の渾身のツッコミ。
 もうヤダ誰かイツキの吹っ飛び思考を止めて欲しいのですが!!?

 
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