ディスシーンと青色
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ん?もちろんだとも。なんせ、俺の2番目の弟だからな。よおく覚えているさ。
ああ、確か…俺の440年目の春だったかな。でも、冬に入ろうとしていたところだったから、朝いちばんの見回りなんて、眠くて仕方がなかったよ。
まあ、砂浜に埋もれてるお前を見つけて、その眠気も吹っ飛んだけどな。そりゃあもう、嬉しかったなあ。綺麗な赤色のお前を抱きかかえてさ、急いで走ったよ。結構重かったなあ、身体と髪の毛が同じくらいあるんだもんな。全然気にならなかったけど。
…うーん、驚きはしたよ。でも、別におかしいとは思わなかった。…心配にはなったかな。学校へ運ぶ時に1回見てたけどさ、穴だらけだったもんな。
何でだろうな。先生に整えてもらった後のお前を見てもさ、お兄ちゃんの実感湧かなかったなあ。先生には「穴を埋めても動かないかもしれない」って言われたけどさ。
そういえば、知ってるか?お前学校に来てから丸1日寝てたんだぜ。俺以外の奴らもみーんな付きっきりで見てたんだよ。お前のこと。初めて動いた時は大騒ぎだったろ?ふふ、流石にあれは覚えてるよな。
やっぱり、賢いやつだよなぁ、お前。起きてからは、教えられた言葉も文字もすぐに覚えたものな。吸収が早いって、先生も喜んでいたよ。
ああ、でもさ、1番驚いたのはお前に剣を教えた時かな。恐ろしいくらい呑み込みが早かった。足も速いし、太刀筋に迷いも無い。「これはとんでもない弟が産まれたぞ!」と舞い上がったもんだよ。俺の教え方が良かったのかな?はは、そう照れるなよ。
あの頃はまだ人手が足りなかったからなぁ。大変だったな。月人の記録も追いついてなかったし、お白粉と樹脂を集めるのも全員で、しかもひと月がかりでやってただろ。
「おっと、もう太陽が昇ってきてる。よし、見回りに行こうぜ。急ごう、パパラチア。」
「ああ。行こう、カイヤナイト。」
昨日、起きてからすぐに、自分が産まれた時のことを知りたいと言ったら、カイヤナイトは快諾して、次々と在りし日のことを教えてくれた。
冬も近づいている頃にしては珍しく、今日は良く晴れた空からの日差しが眩しい。学校の外からは草木の擦れる音が風に乗って届いてくる。日差しが強く、晴れた日はなるべく外に出るように言われているので、そんな時は彼が一緒に行動してくれる。
今年で俺はちょうど500歳になる。その中で起きていたのは400年。稼働回数は今回で18回目。俺の1度につきの稼働年数は、少しずつではあるが、起きる回数を重ねるにつれて、確かに短くなっている。それに気付かないほど、俺も仲間たちも馬鹿ではなかった。俺には時間が無い。膨大にあるはずのそれが、自分には無いのだ。
学校から出て、緒の浜近くの草原を2人で歩く。緒の浜の下に新しい仲間の姿は見られなかった。その代わりに、なり損なった破片たちがそこら中に散らばっている。破片は日光を反射し、色とりどりの輝きを放つ。
「…眩しいな。ええと…こっちがルビーで、あれはオパールだろうな。回収しよう。手伝ってくれ、パパラチア。」
「分かった。器は分けた方がいいよな?」
「そうだな、そうしよう。」
破片たちの回収を終えた頃、日の光は更に強さを増した。
「ふう、今日は良い天気だな。パパラチア、今のうちにしっかり食べておくといい。俺は白粉を集めてくるよ。多分今週が最後のチャンスだからな。」
光を少しでも多く浴びれるように、と前をはだけさせている服から見えるパパラチアの胴体には、7つの穴の代わりに、同胞たちがぴったりと収まっており、光を浴びて、様々な輝きを見せている。
「…そういえば、今回はずいぶんと落ち着いた色だ。」
「うん、アゲートとアンバー。緒の浜じゃなくて、海で見つけたやつらだ。どちらもお前より脆いが、どうだ?」
今日は特別日差しが強いこともあってか、硬度差があって、同族では無いのにも関わらず、インクルージョン達は機嫌が良いらしい。
「悪くないね。概ね快調といったところかな。」
「そりゃあ、良かった!」
快調だ、と伝えると、カイヤナイトは嬉しそうにそう言って笑う。自分のものとは違って、肩にも届かないすっきりとした東の沖色の首元が眩しい。
そのまま日光浴を続けていると、反対側の崖で白粉花の実を集めていたカイヤナイトが、険しい表情をして戻って来た。
「……パパラチア、あれ、見えるか?東の空に予兆黒点だ。」
そう言って彼が指差した先にはまだ小さいが、空を裂くようにして広がる黒い穴がある。
「…どうする。」
「幸い、ここからなら余裕を持って迎え撃てる。まだ先生は寝てる。俺たちでやるぞ、いいな?」
「ああ、分かった。俺がやる。援護頼んだ、カイヤナイト!」
「了解!」
カイヤナイトの返事と同時に俺は地面を蹴り、宙へ飛び上がる。確認をしている間にも、黒点から月人が出て、全体を露わにしていた。月人より高い場所まで飛んだ俺に向かって、矢が一斉に放たれる。
しかし、予め抜いていた剣を使い、全て弾く事に成功する。勢いよく矢を防いだ勢いで、剣は折れ、体は地面に向かってまっすぐに落ちていく。
体を捻り、無事着地した時には、月人の手に第2波の矢が構えられていた。
「俺が引きつける。その隙にお前が投げろ!」
俺に自分の剣を投げて寄越すと、そう言ってカイヤナイトは月人の方へ走り出した。それと同時に、俺は剣を中央にいる器持ちの月人目掛けて全力で投げた。
カイヤナイトへ構えられた矢が放たれるより速く、パパラチアに投げられた剣は月人たちを真っ二つに切り裂いた。やがて、月人たちは霧散し、得体の知れない霧は日差しの中へ溶けていった。
「よし、よくやった。偉いぞパパラチア!」
そう言って、カイヤナイトは俺の頭を撫でようとする。少しヒヤッとしたが、手袋はしっかり着けているようなので、撫でられてやることにする。
「おいおい、俺はもう500歳だぞ? もうそこまで子供じゃないんだけどなぁ…」
「そう言うなよ。俺より300も下だろ? 可愛いもんなんだぜ、年下は。」
カイヤナイトにそう言われて、パパラチアは自分より少し前に産まれたイエローダイヤモンドのことを思い浮かべる。ダイヤモンド属固有の硬度と、生まれつきの俊足を生かして戦闘でも活躍する彼が自分のことを、そんな風に扱うことがあっただろうか。
「そうか? イエローは俺のこと、あんまり可愛いとは言わないけどな…。」
「あー…まあ2人は歳が近いからな。後輩ってよりかは、同期のが近いか。でも、お前もあいつもそのうち分かるさ。弟の良さってやつがね。」
「ははは、そうかもな。…次はどんなやつが産まれるんだろうな。楽しみだ。」
俺の言葉に同意するように、カイヤナイトも穏やかな表情で頷いた。
「よし、このまま西の森を抜けて、1度学校に戻ろう。破片も保管しないとな。まだ大丈夫か? パパラチア。」
「大丈夫。やっぱり今日は調子がいいみたいだ。なんなら、ちょっと走りまわりたい気分だな。」
「いいねぇ。お兄ちゃんと競争するか? 負けないぜ? 」
「受けて立とう。ゴールは西の森? それとも学校? 」
パパラチアがそう言うと、気分が良さそうにカイヤナイトは勢い良く答えた。
「もちろん、学校までだ!」
その声を合図にして、未だ日の差し込む草原には2人分の足音に合わせて、東の沖色と緋色の閃光が走った。
ああ、確か…俺の440年目の春だったかな。でも、冬に入ろうとしていたところだったから、朝いちばんの見回りなんて、眠くて仕方がなかったよ。
まあ、砂浜に埋もれてるお前を見つけて、その眠気も吹っ飛んだけどな。そりゃあもう、嬉しかったなあ。綺麗な赤色のお前を抱きかかえてさ、急いで走ったよ。結構重かったなあ、身体と髪の毛が同じくらいあるんだもんな。全然気にならなかったけど。
…うーん、驚きはしたよ。でも、別におかしいとは思わなかった。…心配にはなったかな。学校へ運ぶ時に1回見てたけどさ、穴だらけだったもんな。
何でだろうな。先生に整えてもらった後のお前を見てもさ、お兄ちゃんの実感湧かなかったなあ。先生には「穴を埋めても動かないかもしれない」って言われたけどさ。
そういえば、知ってるか?お前学校に来てから丸1日寝てたんだぜ。俺以外の奴らもみーんな付きっきりで見てたんだよ。お前のこと。初めて動いた時は大騒ぎだったろ?ふふ、流石にあれは覚えてるよな。
やっぱり、賢いやつだよなぁ、お前。起きてからは、教えられた言葉も文字もすぐに覚えたものな。吸収が早いって、先生も喜んでいたよ。
ああ、でもさ、1番驚いたのはお前に剣を教えた時かな。恐ろしいくらい呑み込みが早かった。足も速いし、太刀筋に迷いも無い。「これはとんでもない弟が産まれたぞ!」と舞い上がったもんだよ。俺の教え方が良かったのかな?はは、そう照れるなよ。
あの頃はまだ人手が足りなかったからなぁ。大変だったな。月人の記録も追いついてなかったし、お白粉と樹脂を集めるのも全員で、しかもひと月がかりでやってただろ。
「おっと、もう太陽が昇ってきてる。よし、見回りに行こうぜ。急ごう、パパラチア。」
「ああ。行こう、カイヤナイト。」
昨日、起きてからすぐに、自分が産まれた時のことを知りたいと言ったら、カイヤナイトは快諾して、次々と在りし日のことを教えてくれた。
冬も近づいている頃にしては珍しく、今日は良く晴れた空からの日差しが眩しい。学校の外からは草木の擦れる音が風に乗って届いてくる。日差しが強く、晴れた日はなるべく外に出るように言われているので、そんな時は彼が一緒に行動してくれる。
今年で俺はちょうど500歳になる。その中で起きていたのは400年。稼働回数は今回で18回目。俺の1度につきの稼働年数は、少しずつではあるが、起きる回数を重ねるにつれて、確かに短くなっている。それに気付かないほど、俺も仲間たちも馬鹿ではなかった。俺には時間が無い。膨大にあるはずのそれが、自分には無いのだ。
学校から出て、緒の浜近くの草原を2人で歩く。緒の浜の下に新しい仲間の姿は見られなかった。その代わりに、なり損なった破片たちがそこら中に散らばっている。破片は日光を反射し、色とりどりの輝きを放つ。
「…眩しいな。ええと…こっちがルビーで、あれはオパールだろうな。回収しよう。手伝ってくれ、パパラチア。」
「分かった。器は分けた方がいいよな?」
「そうだな、そうしよう。」
破片たちの回収を終えた頃、日の光は更に強さを増した。
「ふう、今日は良い天気だな。パパラチア、今のうちにしっかり食べておくといい。俺は白粉を集めてくるよ。多分今週が最後のチャンスだからな。」
光を少しでも多く浴びれるように、と前をはだけさせている服から見えるパパラチアの胴体には、7つの穴の代わりに、同胞たちがぴったりと収まっており、光を浴びて、様々な輝きを見せている。
「…そういえば、今回はずいぶんと落ち着いた色だ。」
「うん、アゲートとアンバー。緒の浜じゃなくて、海で見つけたやつらだ。どちらもお前より脆いが、どうだ?」
今日は特別日差しが強いこともあってか、硬度差があって、同族では無いのにも関わらず、インクルージョン達は機嫌が良いらしい。
「悪くないね。概ね快調といったところかな。」
「そりゃあ、良かった!」
快調だ、と伝えると、カイヤナイトは嬉しそうにそう言って笑う。自分のものとは違って、肩にも届かないすっきりとした東の沖色の首元が眩しい。
そのまま日光浴を続けていると、反対側の崖で白粉花の実を集めていたカイヤナイトが、険しい表情をして戻って来た。
「……パパラチア、あれ、見えるか?東の空に予兆黒点だ。」
そう言って彼が指差した先にはまだ小さいが、空を裂くようにして広がる黒い穴がある。
「…どうする。」
「幸い、ここからなら余裕を持って迎え撃てる。まだ先生は寝てる。俺たちでやるぞ、いいな?」
「ああ、分かった。俺がやる。援護頼んだ、カイヤナイト!」
「了解!」
カイヤナイトの返事と同時に俺は地面を蹴り、宙へ飛び上がる。確認をしている間にも、黒点から月人が出て、全体を露わにしていた。月人より高い場所まで飛んだ俺に向かって、矢が一斉に放たれる。
しかし、予め抜いていた剣を使い、全て弾く事に成功する。勢いよく矢を防いだ勢いで、剣は折れ、体は地面に向かってまっすぐに落ちていく。
体を捻り、無事着地した時には、月人の手に第2波の矢が構えられていた。
「俺が引きつける。その隙にお前が投げろ!」
俺に自分の剣を投げて寄越すと、そう言ってカイヤナイトは月人の方へ走り出した。それと同時に、俺は剣を中央にいる器持ちの月人目掛けて全力で投げた。
カイヤナイトへ構えられた矢が放たれるより速く、パパラチアに投げられた剣は月人たちを真っ二つに切り裂いた。やがて、月人たちは霧散し、得体の知れない霧は日差しの中へ溶けていった。
「よし、よくやった。偉いぞパパラチア!」
そう言って、カイヤナイトは俺の頭を撫でようとする。少しヒヤッとしたが、手袋はしっかり着けているようなので、撫でられてやることにする。
「おいおい、俺はもう500歳だぞ? もうそこまで子供じゃないんだけどなぁ…」
「そう言うなよ。俺より300も下だろ? 可愛いもんなんだぜ、年下は。」
カイヤナイトにそう言われて、パパラチアは自分より少し前に産まれたイエローダイヤモンドのことを思い浮かべる。ダイヤモンド属固有の硬度と、生まれつきの俊足を生かして戦闘でも活躍する彼が自分のことを、そんな風に扱うことがあっただろうか。
「そうか? イエローは俺のこと、あんまり可愛いとは言わないけどな…。」
「あー…まあ2人は歳が近いからな。後輩ってよりかは、同期のが近いか。でも、お前もあいつもそのうち分かるさ。弟の良さってやつがね。」
「ははは、そうかもな。…次はどんなやつが産まれるんだろうな。楽しみだ。」
俺の言葉に同意するように、カイヤナイトも穏やかな表情で頷いた。
「よし、このまま西の森を抜けて、1度学校に戻ろう。破片も保管しないとな。まだ大丈夫か? パパラチア。」
「大丈夫。やっぱり今日は調子がいいみたいだ。なんなら、ちょっと走りまわりたい気分だな。」
「いいねぇ。お兄ちゃんと競争するか? 負けないぜ? 」
「受けて立とう。ゴールは西の森? それとも学校? 」
パパラチアがそう言うと、気分が良さそうにカイヤナイトは勢い良く答えた。
「もちろん、学校までだ!」
その声を合図にして、未だ日の差し込む草原には2人分の足音に合わせて、東の沖色と緋色の閃光が走った。
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