脚のない子の話
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静かな風が吹く、春の日。フォスフォフィライトはひとり、日の差し込む窓辺で項垂れていた。柔らかな光が彼の薄荷色の髪を眩しく照らしてはいるが、彼の気持ちはそう明るいものでは無かった。
「……シンシャにしか、できないこと…」
もしかしたら、その場の勢いだったのかもしれない。薄暗い夕暮れの中で俯く彼の後ろ姿を見て、僕が君の仕事を探してみせる」「夜の見回りより楽しいことをやろう」なんてことを言ってしまった。
不器用で、足も遅くて、硬度は三半。
度胸だけは一人前だと褒められたが、こんな絶望的状況の自分が、シンシャにしてあげられることなんてあるのだろうか。考えれば、考えるほど、あの時の自分に文句を言いたくなる。
口先だけで何も出来ない。しかも、一際脆いこのフォスフォフィライトが一体、優秀で賢いシンシャに何を教えてやれるというのだろう。
「…才能があるだけいいじゃない、とか思っちゃダメだよなぁー…」
彼は、自分よりひとつと半分も硬度が低いくせに、「非常な才気」「高い戦闘力」なんて高評価を受けている。…まあ、その全部が正しく活用されているわけでもないようだけれども。
「戦える力があるだけ、あいつは僕より上じゃんかぁ〜〜…悔しいけど…」
そんな重いおもーい悩みがのしかかる頭を両手で押さえて、フォスフォフィライトは、再び顔面を机に伏せた。こんなに頭を使ったことは彼史上初である。でも、今までもそうやって生きてきたのだから、これからも夜の見回りを続ければいい…なんて今更言えないし、言いたくもなかった。…あんな、友達もいないずっと夜にひとりきりのあいつを放っておけない……一言で例えるのは難しい感情だが、フォスフォフィライトのシンシャに対する気持ちはそう悪いものでもなかった。
「……でも…どうすりゃいいわけよ〜〜!わかんないよ〜〜硬度三半の僕にはわかんない!」
しかし、その解決策を自分ひとりっきりで考えるのはいささか彼には荷が重い。
「どうしたの、フォス?さっきからそればっかりだね。悩みごとかい」
うんうん頭を捻っては項垂れるを繰り返す彼に、そんなふうに誰かが話しかけた。優しい声だ。例えるのなら暖かな春の陽射しに、柔らかい花の香り……そんな感じの。
「…あっ!なまえ〜〜!!そうそう、そうなんだよ〜!僕いますっごい悩んでるの!かわいい末っ子を助けてよ〜!」
ここぞとばかりに甘えだすフォスになまえは薄く苦笑いを浮かべたが、すぐにその口元に柔らかな笑みを称えて、よしよしと最年少を宥めにかかった。
「ああ、もちろんだよ。私でよければ話を聞こう。一体全体、どうしちゃったんだいきみは。じっくり悩んで考えるなんてきみらしくない。」
「え、ちょっと失礼じゃないのそれ!?どういう意味よ」
「ははは、軽い冗談だよ。で、実際悩んでるんだろう?なにがあったのさ」
「そう、そうそうそうよ!聞いてよも〜!大変だったんだからー!」
なまえは、うまれつき両脚が無かった。
もちろん治療も試みたが他のどの素材とも馴染まず、結局は通常の半分も無い、足りない脚のまま暮らしている。
春に咲く美しく儚い小さな花のように可愛らしい薄紅色の彼を、誰もが心配そうに見守っていたが、その心配をよそに案外なまえは強かに育った。
そして今ではイエローダイヤモンドやパパラチアに続く古株である。
なまえは硬度も靭性もそこそこだが、なにぶん足りない両脚のせいで満足には動けない。なので見回りの仕事はせず、他の内勤の補佐や日々のちょっとした悩み相談なんかをして今まで生きてきた。
大切な仲間やパートナーを失い、悲しみに暮れる者の気持ちを少しでも癒してやりたい。どんなに小さな不安ごとでも無くしてやりたかった。長い時間を過ごすうちに、彼はそう思うようになった。
時に明るく、時に真剣に。柔らかな優しい微笑みを浮かべていつも自分の気持ちを受け止めてくれる彼に、学校の宝石たちは確かに救われていた。
薄荷色のダメダメ最年少と、足りない身体の薄紅色。
これはそんなふたりの、「意味」を巡るものがたり。
「……シンシャにしか、できないこと…」
もしかしたら、その場の勢いだったのかもしれない。薄暗い夕暮れの中で俯く彼の後ろ姿を見て、僕が君の仕事を探してみせる」「夜の見回りより楽しいことをやろう」なんてことを言ってしまった。
不器用で、足も遅くて、硬度は三半。
度胸だけは一人前だと褒められたが、こんな絶望的状況の自分が、シンシャにしてあげられることなんてあるのだろうか。考えれば、考えるほど、あの時の自分に文句を言いたくなる。
口先だけで何も出来ない。しかも、一際脆いこのフォスフォフィライトが一体、優秀で賢いシンシャに何を教えてやれるというのだろう。
「…才能があるだけいいじゃない、とか思っちゃダメだよなぁー…」
彼は、自分よりひとつと半分も硬度が低いくせに、「非常な才気」「高い戦闘力」なんて高評価を受けている。…まあ、その全部が正しく活用されているわけでもないようだけれども。
「戦える力があるだけ、あいつは僕より上じゃんかぁ〜〜…悔しいけど…」
そんな重いおもーい悩みがのしかかる頭を両手で押さえて、フォスフォフィライトは、再び顔面を机に伏せた。こんなに頭を使ったことは彼史上初である。でも、今までもそうやって生きてきたのだから、これからも夜の見回りを続ければいい…なんて今更言えないし、言いたくもなかった。…あんな、友達もいないずっと夜にひとりきりのあいつを放っておけない……一言で例えるのは難しい感情だが、フォスフォフィライトのシンシャに対する気持ちはそう悪いものでもなかった。
「……でも…どうすりゃいいわけよ〜〜!わかんないよ〜〜硬度三半の僕にはわかんない!」
しかし、その解決策を自分ひとりっきりで考えるのはいささか彼には荷が重い。
「どうしたの、フォス?さっきからそればっかりだね。悩みごとかい」
うんうん頭を捻っては項垂れるを繰り返す彼に、そんなふうに誰かが話しかけた。優しい声だ。例えるのなら暖かな春の陽射しに、柔らかい花の香り……そんな感じの。
「…あっ!なまえ〜〜!!そうそう、そうなんだよ〜!僕いますっごい悩んでるの!かわいい末っ子を助けてよ〜!」
ここぞとばかりに甘えだすフォスになまえは薄く苦笑いを浮かべたが、すぐにその口元に柔らかな笑みを称えて、よしよしと最年少を宥めにかかった。
「ああ、もちろんだよ。私でよければ話を聞こう。一体全体、どうしちゃったんだいきみは。じっくり悩んで考えるなんてきみらしくない。」
「え、ちょっと失礼じゃないのそれ!?どういう意味よ」
「ははは、軽い冗談だよ。で、実際悩んでるんだろう?なにがあったのさ」
「そう、そうそうそうよ!聞いてよも〜!大変だったんだからー!」
なまえは、うまれつき両脚が無かった。
もちろん治療も試みたが他のどの素材とも馴染まず、結局は通常の半分も無い、足りない脚のまま暮らしている。
春に咲く美しく儚い小さな花のように可愛らしい薄紅色の彼を、誰もが心配そうに見守っていたが、その心配をよそに案外なまえは強かに育った。
そして今ではイエローダイヤモンドやパパラチアに続く古株である。
なまえは硬度も靭性もそこそこだが、なにぶん足りない両脚のせいで満足には動けない。なので見回りの仕事はせず、他の内勤の補佐や日々のちょっとした悩み相談なんかをして今まで生きてきた。
大切な仲間やパートナーを失い、悲しみに暮れる者の気持ちを少しでも癒してやりたい。どんなに小さな不安ごとでも無くしてやりたかった。長い時間を過ごすうちに、彼はそう思うようになった。
時に明るく、時に真剣に。柔らかな優しい微笑みを浮かべていつも自分の気持ちを受け止めてくれる彼に、学校の宝石たちは確かに救われていた。
薄荷色のダメダメ最年少と、足りない身体の薄紅色。
これはそんなふたりの、「意味」を巡るものがたり。
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