ディスシーンと青色
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それから1週間が過ぎた。例年通りに気温は下がり始めて、宝石達には例年通りの眠気が訪れ始めていた。ユークレースの分析と予想が正しければ、あと10日で冬眠といったところだろう。
「あら、カイヤナイト!おはようございまーす!」
「ダイヤか、おはよう。もうすぐ冬だな、1年過ぎるのは早いなぁ…」
自室での着替えを済ませたカイヤナイトは、今朝も変わらず、眩い輝きと笑顔を放つダイヤモンドに挨拶を返す。自分も眠気を覚えてきた頃だが、年の離れた若い弟たちはなんとも元気なものだ。
「ふわぁ…うーん…」
「あら、大きなあくび。もしかして、今年はカイヤナイトが1番乗りかしら?」
「…いやいや、まだまだ大丈夫だよ。それに、今年はあいつに会うって決めてるからな。」
「あいつ?」
カイヤナイトの言葉に、ダイヤモンドは首を傾げる。日光を反射させて揺れ動く髪と、彼の仕草にすらクラっときてしまいそうだから、ダイヤ属は恐ろしい。
「ああ、アンタークチサイトのことだよ。知ってるだろ?あと少し気温が下がれば、起きてくる頃だな。」
「あー!あの子ね〜…カイヤナイト、もしかして今年はずっと起きているつもりなの?」
「うん、多分な。優秀なやつだけど、先生と2人だけじゃ追いつかない仕事もあるだろうし…」
「ふふ、弟想いね。カイヤナイトは…。」
「…かもな。よし、ダイヤ!兄ちゃんと一緒に朝礼行こうぜ!」
「はーい」
元気に返事をして、自分の隣を歩き始めるダイヤモンドを横目に、カイヤナイトは、先ほどの会話に出てきたアンタークチサイトのことを思い浮かべる。
歳は確か、今年で300歳になるはずだ。まだまだ若手と言える歳だが、特異体質を生かして、毎年冬の間の仕事を先生と2人だけでこなしている。性格は、実に真面目で礼儀正しい。やや不測の事態に弱い部分もあるが、それを含めても宝石たちの中でも有数の実力者には違いない。
特別な事情が無ければ、新人教育係のカイヤナイトは新しく生まれた宝石に、基礎的な戦闘訓練に加えて、やりたい仕事を見つけるための手伝いもすることになっていた。しかし、冬の間に生まれたアンタークチサイトは、春が来て1番早起きのカイヤナイトと初めて顔を合わせた時には、彼はすでに基本的なことは全て出来るようになっていた。それに、春が来れば身体を維持出来ずに眠ってしまう彼の仕事は決まっているも同然だった。
アンタークチサイトに対して、自分は教育係として何もしてやれていない。けれども、せめて先輩としての意地は見せようと、カイヤナイトは10年に1回、冬の仕事を手伝うことを決めていた。
「それでは、解散!」
恒例の朝礼が終わり、それぞれが指示通りの持ち場に向かう。静けさが広がる会議室の中、冬が近いことを知らせる乾いた空気に釣られてか、カイヤナイトの足はアンタークチサイトの部屋へと向かっていた。
基本的な内装は他と変わらないが、持ち主が眠っている間のここは、実に殺風景である。中央に鎮座する箱の中には、大量の水が保管されている。だが、気温が下がるに連れて水の中には水とは違った、確かな輝きが生まれていた。
「アンターク、起きてるか?そろそろ仕事だぞ。」
箱を覗きこんだカイヤナイトの呟きに、応える声は無い。しかし、カイヤナイトの目には、水面が僅かに揺れ動いたように見えた。
「…おう、じゃあな。10日後にまた会おうぜ!」
気のせいか、それとも本当に起きているのか、真実は本人に訊かなければ分からないだろう。それでも、10年に一度だけ一緒に過ごすことが出来る弟に会うことが、カイヤナイトは楽しみで仕方なかった。
機嫌よく、鼻歌混じりでアンタークの部屋を後にしたカイヤナイトが、不注意で飛び出してきたダイヤモンドと衝突し、不運にもバラバラになったところを、最近医療を勉強し始めたらしいルチルに目撃され、小言を言われつつ彼に治してもらったのはまた別の話である。
「あら、カイヤナイト!おはようございまーす!」
「ダイヤか、おはよう。もうすぐ冬だな、1年過ぎるのは早いなぁ…」
自室での着替えを済ませたカイヤナイトは、今朝も変わらず、眩い輝きと笑顔を放つダイヤモンドに挨拶を返す。自分も眠気を覚えてきた頃だが、年の離れた若い弟たちはなんとも元気なものだ。
「ふわぁ…うーん…」
「あら、大きなあくび。もしかして、今年はカイヤナイトが1番乗りかしら?」
「…いやいや、まだまだ大丈夫だよ。それに、今年はあいつに会うって決めてるからな。」
「あいつ?」
カイヤナイトの言葉に、ダイヤモンドは首を傾げる。日光を反射させて揺れ動く髪と、彼の仕草にすらクラっときてしまいそうだから、ダイヤ属は恐ろしい。
「ああ、アンタークチサイトのことだよ。知ってるだろ?あと少し気温が下がれば、起きてくる頃だな。」
「あー!あの子ね〜…カイヤナイト、もしかして今年はずっと起きているつもりなの?」
「うん、多分な。優秀なやつだけど、先生と2人だけじゃ追いつかない仕事もあるだろうし…」
「ふふ、弟想いね。カイヤナイトは…。」
「…かもな。よし、ダイヤ!兄ちゃんと一緒に朝礼行こうぜ!」
「はーい」
元気に返事をして、自分の隣を歩き始めるダイヤモンドを横目に、カイヤナイトは、先ほどの会話に出てきたアンタークチサイトのことを思い浮かべる。
歳は確か、今年で300歳になるはずだ。まだまだ若手と言える歳だが、特異体質を生かして、毎年冬の間の仕事を先生と2人だけでこなしている。性格は、実に真面目で礼儀正しい。やや不測の事態に弱い部分もあるが、それを含めても宝石たちの中でも有数の実力者には違いない。
特別な事情が無ければ、新人教育係のカイヤナイトは新しく生まれた宝石に、基礎的な戦闘訓練に加えて、やりたい仕事を見つけるための手伝いもすることになっていた。しかし、冬の間に生まれたアンタークチサイトは、春が来て1番早起きのカイヤナイトと初めて顔を合わせた時には、彼はすでに基本的なことは全て出来るようになっていた。それに、春が来れば身体を維持出来ずに眠ってしまう彼の仕事は決まっているも同然だった。
アンタークチサイトに対して、自分は教育係として何もしてやれていない。けれども、せめて先輩としての意地は見せようと、カイヤナイトは10年に1回、冬の仕事を手伝うことを決めていた。
「それでは、解散!」
恒例の朝礼が終わり、それぞれが指示通りの持ち場に向かう。静けさが広がる会議室の中、冬が近いことを知らせる乾いた空気に釣られてか、カイヤナイトの足はアンタークチサイトの部屋へと向かっていた。
基本的な内装は他と変わらないが、持ち主が眠っている間のここは、実に殺風景である。中央に鎮座する箱の中には、大量の水が保管されている。だが、気温が下がるに連れて水の中には水とは違った、確かな輝きが生まれていた。
「アンターク、起きてるか?そろそろ仕事だぞ。」
箱を覗きこんだカイヤナイトの呟きに、応える声は無い。しかし、カイヤナイトの目には、水面が僅かに揺れ動いたように見えた。
「…おう、じゃあな。10日後にまた会おうぜ!」
気のせいか、それとも本当に起きているのか、真実は本人に訊かなければ分からないだろう。それでも、10年に一度だけ一緒に過ごすことが出来る弟に会うことが、カイヤナイトは楽しみで仕方なかった。
機嫌よく、鼻歌混じりでアンタークの部屋を後にしたカイヤナイトが、不注意で飛び出してきたダイヤモンドと衝突し、不運にもバラバラになったところを、最近医療を勉強し始めたらしいルチルに目撃され、小言を言われつつ彼に治してもらったのはまた別の話である。