心残りは春の空
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ーその理由なんて、私には知る由もないと思っていた。
詳細は省くけれど、私のクラスにはここの所ずっと学校に来ていない生徒がいる。名前は空条承太郎といって、私の家からもそう遠くない静かな場所にひとつ「空条」の文字を掲げたお屋敷があるのだが、彼はその家の一人息子らしい。
と、一応学級委員を任されている私だけれど、学校以外の空条くんについて自分の知っている情報はそこまでだ。もっとも、日本人離れした体格や、端正な顔立ちも相まって、男女問わず校内にファンがいる彼のことだ。これ以上のことを知ろうと思えば集めるのは容易いだろうけど。
登校してこない彼のことを心配した生徒が先生たちに質問してみても、「家庭の事情」だとか、更には「海外旅行中」らしい、なんて当てにならない返答が来るだけだったようだ。
いちおう、彼の隣の席であった私は、期間こそそう長くはなかったけれど、空条くんの様子を見る機会は多かったように思う。思い返してみれば、彼の身につけていた制服も、元のものとは遠くかけ離れた改造が施されていたし、育ちの良さこそ感じられたが、普段の素行が良いとはお世辞にも言えなかった。それこそ彼に睨まれようものなら、大抵の人は腰を抜かしてしまうに違いない。
学校では「JOJO」のあだ名で通っており、慕う生徒も多い彼だったが、側から見れば完全な不良にしか見えない。しかもとんでもないことに、彼が学校に来なくなる数日前には、喧嘩を吹っかけて来たゴロツキたちを全員まとめて病院送りにした、という噂まで立っている。
もちろん、私もいちクラスメイトとして心配はしているが、特別仲が良い訳でも無かったので、そのうち隣の席が空いているのにも慣れて、気にすることなく学校生活を送っていた。
「ちょっと、みょうじさん!大変よ!JOJOが…空条くんが帰って来たって!」
「えっ、JOJO帰って来たの?マジかよ!おい、行こうぜ山田!」
「おう!どこ行ってたんだろーな?JOJOのヤツ!やっぱし海外かなぁ〜」
「もう、押さないでよ!あっ!今ちょうど校門を抜けたところだわ!ほら、行きましょ!みょうじさん!」
「えっ!?…ちょ、ちょっと…桜井さん、待ってよぉ…」
「走って走って!学級委員としてちゃんと迎えてあげないと、ね?」
空条承太郎が、学校を欠席し始めてから50日。ちょうど年が明けたころに、早朝からその報せが学校中に響き渡っていた。
クラスメイトに言われるがままに校庭に出ると、側に駆け寄っていく生徒たちからの質問には、特に答えることは無く、平然として校舎まで歩みを進める空条くんの姿があった。
「ねぇ、JOJO!なにがあったの?」
「先生たちはなにも教えてくれなかったわ!本当になんとも無かったの?」
「なあJOJO!留置所にいたってホントかよ!襲って来たヤツら全部病院送りってのも…」
「…やかましいッ!さっきからうっとおしいぜお前ら!」
しかし止まない質問の嵐に耐えかねたのか、とうとう空条くんが周りの生徒たちに向かって一喝する。
澄んだ冬の空に、怒声が響き渡る。皆、一瞬目を丸くしたものの、
「ああ、良かった!いつものJOJOね!安心したわっ!」
「ねぇってば!ホントのホントに何も無かったのよね?」
全く怯む様子はなく、むしろ「いつもの承太郎だ」とワイワイはしゃぐばかりである。
「ちょっと心配しちゃったけど、いつものJOJOね。これで安心してみんな卒業できるわね!みょうじさん。」
「う、うん。そうだね…私も安心したよ!ありがと、桜井さん。」
「あら、もう戻るの?話を聞かなくていいの?」
「ははは、私はいいよ。じゃあ、後でね!」
これは、しばらく隣の席が騒がしくなりそうだ。しょっちゅうキレる性格でも無かった気はするのだが、このほとぼりが早く冷めてくれることを祈ろう。
何はともあれ、無事に空条くんが登校してきたのだから、これ以上は私の気にするところでは無いだろう。…まあ、全員揃って卒業出来るかどうかを考えると、そればかりは、彼の出席日数と努力次第となるだろう。
詳細は省くけれど、私のクラスにはここの所ずっと学校に来ていない生徒がいる。名前は空条承太郎といって、私の家からもそう遠くない静かな場所にひとつ「空条」の文字を掲げたお屋敷があるのだが、彼はその家の一人息子らしい。
と、一応学級委員を任されている私だけれど、学校以外の空条くんについて自分の知っている情報はそこまでだ。もっとも、日本人離れした体格や、端正な顔立ちも相まって、男女問わず校内にファンがいる彼のことだ。これ以上のことを知ろうと思えば集めるのは容易いだろうけど。
登校してこない彼のことを心配した生徒が先生たちに質問してみても、「家庭の事情」だとか、更には「海外旅行中」らしい、なんて当てにならない返答が来るだけだったようだ。
いちおう、彼の隣の席であった私は、期間こそそう長くはなかったけれど、空条くんの様子を見る機会は多かったように思う。思い返してみれば、彼の身につけていた制服も、元のものとは遠くかけ離れた改造が施されていたし、育ちの良さこそ感じられたが、普段の素行が良いとはお世辞にも言えなかった。それこそ彼に睨まれようものなら、大抵の人は腰を抜かしてしまうに違いない。
学校では「JOJO」のあだ名で通っており、慕う生徒も多い彼だったが、側から見れば完全な不良にしか見えない。しかもとんでもないことに、彼が学校に来なくなる数日前には、喧嘩を吹っかけて来たゴロツキたちを全員まとめて病院送りにした、という噂まで立っている。
もちろん、私もいちクラスメイトとして心配はしているが、特別仲が良い訳でも無かったので、そのうち隣の席が空いているのにも慣れて、気にすることなく学校生活を送っていた。
「ちょっと、みょうじさん!大変よ!JOJOが…空条くんが帰って来たって!」
「えっ、JOJO帰って来たの?マジかよ!おい、行こうぜ山田!」
「おう!どこ行ってたんだろーな?JOJOのヤツ!やっぱし海外かなぁ〜」
「もう、押さないでよ!あっ!今ちょうど校門を抜けたところだわ!ほら、行きましょ!みょうじさん!」
「えっ!?…ちょ、ちょっと…桜井さん、待ってよぉ…」
「走って走って!学級委員としてちゃんと迎えてあげないと、ね?」
空条承太郎が、学校を欠席し始めてから50日。ちょうど年が明けたころに、早朝からその報せが学校中に響き渡っていた。
クラスメイトに言われるがままに校庭に出ると、側に駆け寄っていく生徒たちからの質問には、特に答えることは無く、平然として校舎まで歩みを進める空条くんの姿があった。
「ねぇ、JOJO!なにがあったの?」
「先生たちはなにも教えてくれなかったわ!本当になんとも無かったの?」
「なあJOJO!留置所にいたってホントかよ!襲って来たヤツら全部病院送りってのも…」
「…やかましいッ!さっきからうっとおしいぜお前ら!」
しかし止まない質問の嵐に耐えかねたのか、とうとう空条くんが周りの生徒たちに向かって一喝する。
澄んだ冬の空に、怒声が響き渡る。皆、一瞬目を丸くしたものの、
「ああ、良かった!いつものJOJOね!安心したわっ!」
「ねぇってば!ホントのホントに何も無かったのよね?」
全く怯む様子はなく、むしろ「いつもの承太郎だ」とワイワイはしゃぐばかりである。
「ちょっと心配しちゃったけど、いつものJOJOね。これで安心してみんな卒業できるわね!みょうじさん。」
「う、うん。そうだね…私も安心したよ!ありがと、桜井さん。」
「あら、もう戻るの?話を聞かなくていいの?」
「ははは、私はいいよ。じゃあ、後でね!」
これは、しばらく隣の席が騒がしくなりそうだ。しょっちゅうキレる性格でも無かった気はするのだが、このほとぼりが早く冷めてくれることを祈ろう。
何はともあれ、無事に空条くんが登校してきたのだから、これ以上は私の気にするところでは無いだろう。…まあ、全員揃って卒業出来るかどうかを考えると、そればかりは、彼の出席日数と努力次第となるだろう。
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