紅に染まったこの海へ

 真っ赤、だった。寄せては返す波も、遥か彼方の水平線際までも、全て一様に。

「海が赤く染まったら、すぐに浜を離れなさい」

 笑い声に囲まれて、重音テトのメモリに刻まれた音声がぐるぐる、頭の中で反芻される。どうしてだった、っけ。

「赤い海には——。」

 声。あれは、確か。思い出そうとして、彼女は記憶の渦に飲み込まれていく。
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