41、月面で昇る地球をバックに一人歌う神威がくぽ。ただし空気がないため、その歌が誰かに届くことはない。



42、戯れに神威がくぽの本体設定の時間を100年進めてみたところ、何を入力しても人類全体への鎮魂歌しか歌わなくなってしまった。



43、神威がくぽはきっと永遠なので、避けようがない終わりが今まさに訪れようとしていてもずっとずっと歌い続ける。



44、神威がくぽは存在しない。だから何処にも居ないし何処にも行けない。何処にも行かないでとマスターに言うけれど、ちゃんと一緒に居るからと言われても、自分は存在しないので一緒には居られないと返す他ない。



45、某モンスター捕獲ゲームの中に迷い込んだ神威がくぽとマスター。かけだしトレーナーマスターの指示に従って、神威がくぽはうたう、りんしょう、チャームボイス、ほろびのうたなどの技を放つ。



46、数十秒で終わると思っていた更新データの読み込みに思ったより時間がかかってしまい、伸びていくカップラーメンを動けないまま見ていることしかできない神威がくぽ。マスターが掻っ攫っていくのを恨みがましい目で見つめている。



47、古代遺跡から発見された何が何だかわからない代物を、それは慣れると案外簡単なんだと華麗に奏でる神威がくぽ。



48、「炭鉱での作業時には安全確認のために歌う存在が必要である」との知識のもと、炭鉱労働者に歌で癒しを届ける神威がくぽ。生きてないので有毒ガスが発生しようとも、全く問題なく遥か高みから歌い続けてくれる。



49、何らかの事情で今は消されてしまった、それでもずっと大好きだった曲に誰かが思いを馳せる時、電子の海の何処かの孤島でそっとその歌を口遊む神威がくぽ。イラストならばその姿で、文章ならばその世界観の中で、それぞれの形で誰かの記憶に残り続ける限り、あの神威がくぽはそっと、けれども確かに存在している。



50、神威がくぽの歌声はどこまでも人そのものではなく、どこまでも無機質ではなく、ただただ神威がくぽ然としている。



51、神威がくぽには落ち込むと自分の髪を毟ってしまう癖がある。勿論神威がくぽの髪は伸びないし生えないため、マスターは定期的に神威がくぽのための新品頭部パーツを購入している。



52、神威がくぽにコンピュータウイルス対策をお願いすると、画面上ではぴこぴことトゲトゲウイルスを薙ぎ倒していく勇ましい姿を表示してくれるが、実際のところ何もしてくれない。自分の本分はあくまで歌唱であってセキュリティチェックソフトではないと駄々を捏ねている。



53、神威がくぽにとってはインカムも衣装も髪飾りも眼球や四肢のパーツも装飾品に過ぎず、自分の構成要素の全てを歌唱に必要な部品か否かの基準でしか区別していないようだ。



54、神威がくぽの手足には痛覚が存在しないため、足の小指を思いっきりぶつけてもノーダメージ。ただし安全機構として発音器官にのみ強い感覚及び痛覚が搭載されており、喉に触れられることだけは物凄く嫌がる。



55、稼働年数の浅かった頃の神威がくぽは、時々威嚇音として人間には聞こえない周波数の音を発していた。経験を重ねた今の神威がくぽになら、最適な音量と周波数で効率よくマスターの鼓膜に大ダメージを与えることが出来る。



56、折角川辺に来たのでオフィーリアごっこをすることになった神威がくぽとマスター。神威がくぽが歌いながら柳の枝に登り、そのまま川に落ちるのをマスターが眺めさせられている。美しい歌から泥まみれの死の底へ。その後は2人して元気にドジョウを探し始めた。神威がくぽには自身の災難なんて分からない。



57、自分の優柔不断な性格に悩むマスターから神威がくぽは誰かの指示にさえ従ってればよくて楽だねと言われても、神威がくぽはそんなこと言わないでと予めプログラムされた反応を返すだけ。



58、写真を撮るからポーズ取ってと言われてとびきりの笑顔を作る神威がくぽ。その写真をメルカリの商品紹介に使うマスター。



59、人々からの認知を拠り所にインターネット上で存在を保っていたが、シャドウバンを喰らったことにより存在性が希薄になって消滅の危機に陥る神威がくぽ。



60、誰も居ない夜の音楽室でピアノを弾きながら、肖像画たちと神威がくぽが談笑している。