友達のままで
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「塩谷ちゃん、ちょっと聞いてぇや。」
こじんまりした大学のテラス。隅っこでお弁当をつついている私に、声をかけてきたのは同じゼミの忍足君だ。初日に席が隣になってからなんとなく友達になって、そのままずるずる腐れ縁。サラサラの髪、ちょっと日焼けした肌。レトロな丸眼鏡は、噂によればダテらしい。
「俺一人暮らし始めてもう1年くらいになるねんけど、そのうち慣れるかなぁおもてたら全然慣れへんねん。寂しさが増すばかりで。もう、ものごっつ寂しいねん。」
わざとらしく自分をセルフハグしながら、軽妙な関西弁で語る。面白い子。
「ふーん、忍足くんって意外と繊細なんだ。」
「意外は余計や。…はぁ、もう、一人暮らし向いてへんわ、俺。」
「ルンバでも買ったら?」
「そやな〜ルンバがおったらさみしゅうないし部屋も綺麗になるしで一石二鳥やな〜…て、何言わすん。無機物やのうてぬくもりが欲しいねん。人肌恋しいねん。」
「恋人は? いないの?」
「半年前に別れたっきりフリーや。この俺がフリーや。俺をフリーにしたらあかんで。ホンマ。」
「意味はわかんないけど意外ね。君みたいにきれいな男の子、女の子が放って置かなそうなのに。」
「口説いてるんか?」
「いや全然。」
「つれないなぁ。塩谷ちゃんも一人暮らしやろ、さっむいくっらい部屋に帰るの堪らん気持ちになれへんか?」
「私は一人暮らしもうだいぶになるからな〜…初めのうちは寂しかった気がするよ。」
「俺もいつかは慣れるんかなぁ。コンビニ飯チンしてる時間が一番虚無や。何のために勉強しとんや、俺は。」
「自炊なさいよ。」
「自分のために飯作るのもなかなか虚無いやろ。かといって1人で外食するのも味気ないしな。」
「なんか…大分病んでるね。」
「病んどるわ。病み病みや。」
「んー…偶に帰り時間が合ったらご飯でも行く? …ま、私で良ければだけど。」
「…ホンマ?ええの?」
「同期のよしみで。一人で食べるより少しはいいでしょ?」
「ええ、ええ。これ以上ないわ、嬉しい。ほな今日は?行ける?」
意外にも忍足君は私の提案に子犬のように喜んだ。
それからというもの、偶に一緒にご飯に寄ったり、映画を見たりするようになった。