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家庭科で作ったお菓子を味見してほしい、と誘われるまま出向いていったら、ついつい遅くなってしまった。ウチの副部長たちは今日は委員会だとかって言ってたから、急げば問題ないだろう。カバンを取りに貰ったお菓子を抱えたまま教室を目指すと、見慣れたモジャモジャ頭が蹲っていた。
「? 赤也。3Bの教室に何か用?」
「! 丸井先輩シッ!」
教室の壁に耳を付ける赤也に身をかがめるように手振りで示された。
「何なんだよぃ。」
「仁王先輩が忘れ物取りに行くって言ってなかなか戻ってこないから、様子を見に来たんスけど、中から、なんつーか、その…エッチな声がするんスよ。」
「はぁ?」
「いいから、ほら、丸井先輩も。」
言われるがままに耳を寄せてみると、たしかに。
『や、やだ。そこはダメだったら。』
『じゃ、こういうんはどうじゃ?』
『んぅ…あっ…それ、すごい…気持ちいい…』
「…マジじゃん。」
「でしょ?誰スかね相手の女!」
「学校の教室でなんて大胆不敵がすぎるだろぃ…」
いけないとは思いつつも、耳元で繰り広げられる甘いやり取りに、釘付けになってしまう。そう、俺たちは思春期。これがいわゆるデバガメ精神?夢中になってもっとよく聞けないかと耳をドアに押し付ける。背後に近づく靴音にも気付かずに。
「「「たるんどーーーーーーるッッッッ!!!」」」
大胆不敵だったのは自分たちもで、ガラ空きの背後から怒号で吹っ飛ばされた。
「げっ…真田」
「真田副部長…」
「なんだ二人してこんなところで油を売って!」
「い、委員会は。」
「とうに終わったわ!全くなっとらんな。…教室に用があるのか?」
「用っていうか…その」
視線の先には甘い声の盛れる2Bの教室。ここから繰り広げられるであろう大修羅場に背筋が凍った。お決まりの気合い声で真田がドアを勢いよく開ける。
…と、塩谷と、塩谷の肩を揉む仁王の図。
「…あ。」
察するに、部活に遅れてきた仁王のを制裁しにきた真田、と見たのだろう。塩谷が慌てて声を上げる。
「ち、違うの真田くん。私の肩こりがあまりに酷くて!もはや肩が危篤で!たまたまそこに仁王くんが居たから!肩揉みで助けてもらったの!引き止めちゃってごめんなさい!」
「うむ…?あぁ…うん…」
流石の真田も肩透かしを食らったようにポカンとしている。咳払いをして真田は続けた。
「まったく、全員弛んどるぞ。今日のトレーニングはいつもの2倍だ!」
「ええ!そりゃ無いっすよ真田副部長〜」
「…プピーナ。じゃあの塩谷。肩お大事に。」
「うん…ありがとう。」
「しっかし、びっくりしたッスよ、さっきのアレ。」
「アレって何じゃ。」
「塩谷先輩の。肩揉みの声には聞こえなかったっスよ〜」
「なんじゃ赤也。盗み聞きしとったんか? 趣味が悪いのぅ。」
「盗み聞きっていうか偶然ですって!仁王先輩の戻りが遅いから気になって!」
「たしかにありゃ…すごかったな。…ん、仁王、肩に何か付いてるぜ。」
「ん、なんじゃ。」
仁王の片口に乗っていたのは、黄色い値段シール。
「ほら、360円。」
ー終ー