「心臓は、英語で言ったらheartじゃろう？」

エイチ、イー、エー、アール、ティー…。

「ああ、なるほどear…耳じゃねぇの？って」

それはどこの泣きぼくろ野郎のセリフなんじゃ。　耳の模型を壺に入れると足元にある穴が点灯して浮かび上がった。

「これ…しゃがんで進むの？」
「そうする他なさそうだな…。」
「先頭は行くぜよ…ジャッカルが。」
「俺かよ！」

ジャッカルは渋々這って先頭に進んだ。かもめに先を促すが、スカートの裾を押さえてぶんぶんと首を振るので仕方なく先に進む。

「…文化祭なのに凝りすぎじゃ。」
「うわ…なんか、何これスライム？」
「このトンネル長すぎるぜ…」
「ちょ、ちょっと待って、後ろから何か追いかけて来る…！」
「はぁ？！」
「うわっ足っ　足引っ張られてる！助けて！」

やっとトンネルから出てジャッカルと2人でかもめを引っ張り出す。かもめは流石に涙目だ。乱れた映像が流れ続けるテレビや、いきなり揺れ始める戸棚におっかなびっくりしながら通路を抜けた。

「あはは、結構怖かっただろう？」

出口では、顔は笑っているーーが、目が笑っていない幸村が出迎えた。

「…ピヨ…」
「もう！かなりびっくりしたよ～」
「ああ…クオリティ高すぎるぜ全く…」
「特にトンネルの中さ、冷たい手で足首掴まれて…」
「え？」

訪れる一瞬の沈黙。

「…そんな演出、無かったけど。」