「おかえりなさいませ。お嬢様、旦那様。」
「うわ～！すごい！柳生くん本当の執事さんみたい！」
「随分様になっとるのう。」
「ありがとうございます。席にご案内しますね。」

A組の執事喫茶はなかなかの出来栄えだ。部屋中に赤いビロードのカーテンを掛けて、教室であることを上手く誤魔化している。教室の中は紅茶のいい香りと、焼きたてのクッキーの香りでいっぱいだ。

「おススメは何ですか？」
「お勧めはこちらのセイロンティーですね。直々にお入れ致しますよ。」
「じゃ、それ２つ貰おうかの。」
「かしこまりました。」
「ふふ…楽しみだね。」

中々繁盛しているようだが、そこは流石のA組といったところか、上手く回転させているようだ。

「わ、あそこにいるの真田くんね。」
「…一瞬気が付かんかったのう。様になっとるもんじゃな。」
「今日の仁王もすごく様になってたよ。」
「何じゃ、イヤミか？」
「イヤミじゃなくて、すごく可愛かったのに。今日一日あのままでも良かったな。」

「セイロンティーをお持ちしました。」

柳生がティーセットを持ってきた。カップこそ使い捨ての出来る容器だが、淹れ方はかなり本格的。高い位置から注ぎ入れるアレだ。ちょっとしたどよめきが起こる。かもめはちいさくぱちぱちと拍手をした。

「お待たせ致しました。ごゆっくりどうぞ。」
「素敵。ありがとう柳生くん。」
「…なんか、役得じゃのう。」
「なによ、私はオタクくんの仁王も好きだってさっきから言ってるじゃん。」
「っっ…熱ッ…」

思わぬセリフに出されたばかりの紅茶を吹き出しかけた。