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「塩谷。」
駅前まできた所で声をかけた。塩谷はぎょっと身をすくめてあたりを見回す。
「心配せんでも俺しかおらん。」
「…まだ何か聞きたいの?」
「色々聞いてすまんかった。」
塩谷は緩みかけた頬をぷっと膨らませて、少しわざとらしく鼻をつんと上に向けた。
「そうだよ。仁王ちっとも庇ってくんないし。」
駅前のガチャガチャコーナー。以前塩谷がお気に入りだと言っていた。数は多くないが、珍しい種類が時折入るようで、帰りに時々チェックするんだ、と笑っていた。見覚えのあるパッケージが並んでいたので指をさす。
「今朝のアレ、コレか?」
「うん。一回が普通のガチャよりちょっと高いんだよね。」
「確かに精巧なミニチュアじゃったしの。」
尻のポケットを探って財布を出す。小銭、100円玉がいち、にい、さん、よん…。足りないか、と探っていたら、上から一枚100円玉が降ってきた。
「あとで返して。」
「プリ」
「結局あの情報で誰だか特定できた訳?」
「まあ大体のぅ。三強が嫌っとるサボり先輩じゃろ。」
「へえ。…まあ誰でもいいけどね。」
「こんなに気になるもんなんじゃな、友達が告白された相手ってのは。」
「ふふ…すこしはみんなの気持ちが分かった?」
「お前さんは偉いのう」
カプセルを開けると、ギチギチに詰まっていたのだろう、飛び出すようによくわからないマスコットが出てきた。
「なんじゃこれ。」
「ソックモンキー?」
「ソック…何じゃ?」
「靴下で出来たサル。」
「意味がわからん。」
「まあね。でもかわいいよ。」
色褪せたベンチに並んで腰掛ける。
「私だって本当は気になるけど、でもみんながそんなよく知らない女の子と付き合うような人達じゃないって分かってるから。」
「そうじゃな。」
「仁王はそんなよく知らない先輩と私が付き合うと思うの?」
「いいや。お前さんはそういうヤツじゃない。」
「でしょ。」
「なんつーか、お前さんの魅力に先に気付かれてしまったショックって感じかの。」
「あはは。詐欺師。」
「割と冗談じゃないんじゃけど。」
「あ、電車来る。」
慌てて改札を通り抜けた。電車からはちらほらと降りる人。塩谷がぶつからないように、それとなく手を肩に添える。
「今度もしまた告白されるようなことがあったら、断り方変えるかのう。」
「ふうん、どんな風に?」
「好きなやつがおるからってな。」
「それ、十中八九好きな人って誰って話になるよ?」
「それは秘密じゃ。今はまだな。部活の士気に関わるからのう。」
「なんじゃそりゃ。」
「ほら、これをカバンに付けんしゃい。魔除けじゃ。」
「それさっきのソックモンキー。…要らないから押し付けようとしてない?かわいいからもらうけど。」
「魔除けじゃって。」
座席はそこそこ詰まっている。車両の隅の方に背中を預けて並んで立った。