マジックアワー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お、噂をすれば。」
部活を終えた帰り道、校門の前、ばったり出くわしたのは噂の本人で。目と目がぱちりと合って、「おう」と言い掛けたその瞬間には、すぐさま両脇を参謀と部長が固めていた。
「ねぇ、さっき聞いたんだけど、塩谷、テニス部の先輩に告白されたことがあるって本当かい?」
「あー…」
振り向く視線に指を刺して隣の赤毛が元凶だと伝える。
「本当だけど、昔のことだし。向こうだって本気だったかどうか…」
「どんなふうに告白されたんだ?」
「いや、普通に…」
「普通とは?」
「うー…なんか、どこかの方言みたいなイントネーションで、こう…つきあわんね…って言われたよ。」
「…やはりな。」
赤也を除くテニス部レギュラー陣の脳裏には、同じサボり常習癖毛先輩の顔が浮かんだ。
「何回か見かけただけで、こう、会釈するだけの関係だったんだけど、ある日突然そんなふうに言われて…」
レギュラー陣全員で顔を見合わせる。ため息まで出てきそうだ。
「よく知らない人とはお付き合いできないです、って言ったら笑ってたから、向こうは冗談だったのかもしれないけど…あとから女子にオッケーしとけばよかったのにって散々言われて…自分から告白しなおしに行け、とか…」
モジモジと続ける塩谷は、当時本当に苦心したのだろう。
「…っていうか何なの? みんなだっていっつも女子から告白されたりしてるくせに!なんで私のたった一回にそんな詮索するの!私が告白されたってそんなに物珍しいですか⁈」
たまりかねた塩谷が声を上げて抗議した。
「いや、テニス部員と聞いたら確認せずにはいられなくてな…すまない。」
「ごめん…塩谷に悪い虫が付いてるんじゃないかと思ったら気が気じゃなくて…。」
「え?何何?かもめちゃん先輩告白されたんスか?」
「赤也、まぜっ返すな。」
塩谷は小さく鼻を鳴らして、小さな歩幅をせかせかと動かし、随分遠くに行ってしまった。