共謀の終わりと友達のはじまり
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屋上から見下ろせば、生徒も教師もみんな平等に豆粒のようで、こんな小さな世界で、嫌ったり嫌われたり、好かれたり好きになったりしていることが不思議に思えてくる。しゃがみこんで掃除に右往左往するつぶつぶを二人で眺める。蟻の観察みたいだ。
「ねぇ、長いこと雨続きだったし、こうやって話すの、ちょっと久しぶり?」
「そうじゃの。教室では毎日顔合わせとるはずじゃが。…屋上にいるときのお前さんとは、全然別の人間みたいじゃ。」
「どういう風に見える?」
「懐かない野良猫。」
「…っふ、何それ。」
「人間にイジワルでもされたんかの、近づこうとするとすぐ何処かに逃げよる。」
「…私もね、教室に居ると、君が手の届かないくらい遠くに見えるよ。」
「そうか?」
「そうだよ。お互い、屋上で出会わなかったらこうして会話することもなかっただろうね。」
空の上の方では風が強いのか、重たげな雲が足早に去っていく。束の間、晴れ間が覗いた。どこからか気の早い蝉の声が僅かに聞こえる。
「…もうだんだん日差しが暑くなってくるね、屋上で過ごせるのは今日が最期かな。」
塩谷は立ち上がって伸びをした。スカートが風に、ふわり。
「ありがと、一緒に過ごせて楽しかった。」
「なんじゃ、明日死ぬみたいに。」
「死ぬわけじゃないけど…共犯関係はもう終わりよ。夏の日差しでさようなら。」
太陽を指差して答える。今日はやけに無理して笑っていると思ったら、そういうことだったのか。
「…なぁ、しんみりしとるとこ悪いが、風で下着が見えとる。」
「ひえっ?!」
「嘘じゃ。」
「な、何なの!ばか!」
「嫌じゃ。」
「…な、なにが。」
「共犯関係。これで終わりは嫌じゃ。」
「…わ、私…」
塩谷が何か言いかけたところで5限目の予鈴が鳴り響いた。
「やばっ…」
ばたばたと屋上を後にする。
***