動き始める物語
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いやいや、まさか、よりにもよって? 私も結局面食いだった?いやでも、顔を好きって訳ではないし、…でもどのみち良くない。相手にも迷惑だろうし。そもそも本当に好きなのかまだわかんないし。いやきっとただの思い上がりと勘違いだし。そうそう。ただの友情の発展系…
寝るにはまだ早いけど、なんだか他のことが手につかなくて悶々とする、ベッドの上。携帯が震えてビビり倒した。着信は知らない番号。出るか迷ったけど、もし幸村くんの緊急事態で、とかだったら困る。
「…もしもし。」
『おい、かもめ。お前、新聞部辞めたらしいな? アーン?』
恐る恐る受話器を取ると、耳元でつんざく聞き覚えのある声。俺様何様跡部様。
「…何で知ってんのよ。てゆか、名前くらい名乗ったらどうなの。知らない番号だったんですけど。」
『今年の夏に予定されている合同学園祭について相談したくてな、公式に立海新聞部にアポイントを取ろうとしたら、お前が除籍していると聞かされた。この連絡先は忍足に聞いた。…ったく、手間かけさせやがって。』
「ふーん、跡部くんもマトモにアポ取ろうなんて思うことがあるのね。」
『そんなことはいい。何故退部したんだ。』
「君に関係ある?」
『公式に仕事を依頼した関係があるだろう。』
「プライベートな関係は無いでしょう。」
『いいから答えろ。』
この、ワガママキング。ハッキリ答えるまでこの高圧的な問答を続けるつもりだ。
「…新聞部への入部を誘ってくれた子に、言われちゃったの。『あんたなんか居なきゃ良かった』って。」
平坦に話したつもりだけど、喉がくっとつかえる。あの子の声が今も耳に響くようで。以前に会った時に少しは話をしている。事情を知らない訳じゃない。彼は意外にもあっさりと引いた。
『…そうか。悪かったな。』
「ほんとに悪いと思ってる?」
『詫びついでに一度会いに来い。迎えは寄越す。』
「どうせ拒否権ないんでしょ、で、何なの。元・新聞部に相談ってのは。」
『次回、各校合同の学園祭が立案されていてな。プロモーションについてお前の意見が欲しい。』
「ふぅん、合同って、どことどこの?」
『詳しい話は会ってから話す。…しかし、退部しているとはな…お前は、もう少し自分の才能に責任を持ったらどうだ?』
「なに、この流れでお説教はじまるワケ?」
『そうじゃねぇよ。トップに立つものとして、燻ってる人間を見てらんねぇだけだ。』
「…才能なんて、別にないのに。」
『そういうのを無責任っつーんだよ。じゃあな。』
「ん…おやすみなさい。」
『ああ…おやすみ。』
荒立たしい電話が終わって、ふうと息をつく。…なんで彼があんなに人気があるのかわからない。悪い人じゃないけどね。彼もとても整った顔立ちだし、頭の先から靴の先まで全てピカピカに完璧だけど、彼にはドキドキしないんだよな。…なんて。
色々なことが頭を巡って、その日は中々寝付けなかった。
***