動き始める物語
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入院中の幸村くんに近況を話すため、以前から、立海テニス部のメンバーを覚えて、時々は観察していた。テニス部の面々はやっぱり全体的に女子の人気がすごい。一度ビンタを食らった身としては少々トラウマを刺激した。みんなそれぞれ個性的で、基本的にはマジメで、一生懸命だ。同年代として尊敬も湧いてくる。親しみもそれなりに。
真田くんは第一印象と相違ないマジメな堅物だ。…時々奇声を上げるけど。
柳くんはすごく頭がいい。時々会話についていけない。
柳生くんは意外と冗談がわかる。時々ちょっと変だけど。
桑原くんはいつも気苦労が耐えなさそうだ。
丸井くんは、男女ともに人気。陽の人!って感じ。いつもグリーンアップルのガムを噛んでる。
そして、仁王くんは、よく分からない子だ。
初めは遊び人っぽい印象だったけど、中庭で日向ぼっこしたり、学校に住み着いている猫に餌をあげたり、居眠りしていたり、誰かにイタズラしていたり。廊下で口笛を吹いていたり。
かと思えば、練習にはマジメだったりして。あんな環境でマイペースを貫けるのは、素直にうらやましい。思えばこんな感想を抱く時点でちょっと危なかった。
仁王くんと昼休みを共にし始めたのはちょっとした偶然だった。
以前から天気のいい日は時々屋上に忍び込んで、昼ごはんを食べたり、遮るもののない空にシャボン玉を飛ばして気晴らししたりしていた。時折屋上には男女の告白の呼び出しや、カップルの逢引きなどに使われて、肝を冷やす時もしばしばだったけども。
ある時、入り口の側に、日に焼けた三角コーンと警戒色のポールが立てかけられていることに気がついた。足元にコンクリートのひび割れを埋めた跡があることから、少し前に使われていたものだろうと察する。
私はひらめいて、それを入り口のドアの前に設置した。ーーこれで屋上は私だけのものになった。はずだった。
そんな私の鉄壁を破って、彼はふらりと現れた。
2、3言葉を交わして、気まずくなった所で、気紛らわせに吹いたシャボンに、彼も答えて吐息を泡にした。そのしてやったり、みたいな顔がかわいくて。言葉以上の何かを交わした気がして、どうも、どうやら、認めたくないけど、その瞬間から、たぶん恐らく、絶対に認めたくないけど、
ーーー彼を好きになってしまった、みたいだ。
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