少しだけ昔の話
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幸村くんが学校に来なくなった。
庭の花を見せてもらった時に殆ど強引に交換させられた連絡先でメッセージを送ってみると、『ちょっと、検査で。』とのことだ。
先日の絵が知らない間に大会に出されて、知らない間に受賞したらしい。美術の先生に呼び出されて、部活中の美術室に足を運んだ。私が描いた幸村くんがポスターになっている。すごく変な感じ。印刷だとやっぱり色がイマイチだな、と、ぼんやりしていると、不意に女の子が仁王立ちで私の視界を遮った。
「あんたさ、どういうつもり?」
「…?」
「幸村君のことよ。」
彼女の剣幕に教室中の注目が集まる。
「どうって…?」
「有紗が幸村君のこと好きなの知ってんだろ?」
別の派手な感じの女子が答える。気がつくと四方八方を知らない女の子たちに囲まれていた。嫌な感じの汗が溢れる。
「知らなかった。」
正直に答えると、目の前の女子ーー推定有紗から平手が飛んできた。
「ーー泥棒猫。」
あまりに昼ドラ的な展開に、色々を通り越して笑ってしまう。
「泥棒も何も、君のなの?…別に私のものでもないよ。安心して。」
そう告げた瞬間、美術室の扉が開いた。立っていた数人が何事もなかったように席に戻る。
「いやーすまんすまん。職員会議が長引いちゃって…」
どこか抜けている美術の先生だ。賞品としての諸々を手渡された。顎の下が痛くてそれどころじゃない。あの有紗って女子、見えないように顎の下目がけて平手を撃った。未経験者じゃなさそうだ。
「…で、どう?塩谷さん。せっかくだから美術部に入らない?」
「遠慮します。」
私の回答はシンプルだった。部室を出ると、携帯が震える。着信は幸村くんからだった。
***