少しだけ昔の話
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人の噂話は苦手だけど、どうしても彼女のことを知りたくて。あの口ぶりからでは、どうやっても当人から聞き出せない気がして、仲間を頼った。
場所は部室。我立海テニス部の情報通といえば、柳蓮二。こんな世俗の話題に精通しているかは怪しかったけど、尋ねてみれば辻褄の合う答えが返って来た。主には部活のこと。なるほど才能のあるもの同士のぶつかり合いはお互いを高めることに繋がるが、そうでない場合は一人足を掛けられ転ばされる事態になるだろう。自分が仲間に恵まれていることを思い出す。
「…加えて彼女は外部からの入学だ。頼れる相手や理解してくれる友人も居ないのだろう。」
「補足説明ありがとう。…随分詳しいんだね。」
「彼女、図書委員でな。たまに図書館で会うんだ。柳生も顔見知りだ。」
着替えている柳生に視線を向けると、眼鏡を直しながら彼も答えた。
「ええ。彼女はとてもいい子ですよ。好奇心も旺盛ですし、話して楽しい子です。…図書館でしか話せませんけどね。」
「それ、どういう意味だい?」
「恐らく自分が誰かと親しくすることで、相手に迷惑が掛かると思っているのだろう。人目の無いところでは無邪気で柔和だが、人がいる所では会話したがらない。」
「噂を聞いてから、私も何かしてあげられればとは思っているのですが、こういう時、我々男子は非力なものですね…。」
「ふむ…。」
顎に手を当てて逡巡する。
「…彼女を立海テニス部のマネージャーにするのはどうかな?」
「!!」
「幸村くん、それはいくら何でも公私混同というものでは…。」
「そうだぞ清市、土台彼女がマネージャーに興味があるとは思えない。」
「だけど、彼女がマネージャーになってくれれば、俺たちだって正当に彼女を護れる。」
「彼女の意思を無視してはいけませんよ。」
「俺たちも何かできないか模索してみるから。」
二人に嗜められて、俺の企みは頓挫した。
「あ、そうだ。来週からまたしばらく来れなくなるんだ。検査があってね。よろしく頼むよ、テニス部のことと、彼女と。」
二人は困ったように少し呆れたように笑って、顔を見合わせた。
「部活のことは勿論だ。…彼女のことも、それとなく、気にかけてみよう。」
「ああ…苦労をかける。」
***