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短編 文スト

私達を結んでいる赤い糸があるとするならば、それはきっと繋ぎ合わせた痕ばかりで酷く不格好な形をしているに違いない。
自ら望んで漸く結んだ筈のその糸が、ある日突然自分を縛り付ける固い鎖のように感じたなんて身勝手極まりない理由を付けて力づくで引きちぎった。1度だけじゃない。何度も何度もそんな愚行を繰り返した。
それなのに彼女は解れて見るも無惨な姿になった糸を見て軽く笑った後、優しく拾い上げて何度でも私と結んでくれた。

「どうせまたすぐに切れてしまうよ」
「切っても良いですよ。その度に結び直しますから。それに、切れる度に糸が短くなるから距離が近づいて良いじゃないですか」

そんなことを言いながらクスクスと笑う彼女の顔を見ると、目頭が熱くなって自分が本当にただの男であることを思い知る。
あぁ、そうか、そういうことか。
絡まって雁字搦めになった赤い糸は最早小指を通り越して私の心臓に結ばれてしまったらしい。強く強く、食い込む程の力で結ばれたこの糸は無理に外そうとすればそのまま私の心臓を潰すのだろう。
そうだね、そんな死に方も悪くない。それなら苦しまずに逝けそうだ。
そして変わらずに今日もまた、君に生かされている私が居る。
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