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短編 文スト

「えぇと次はカモミールと・・・レモングラスを入れてっと」

目の前に並べた色とりどりのハーブと作り方が書かれた本を見比べながら袋に少しずつ入れていく。
入れる量によって味が変わってしまうから骨が折れる作業だ。

「何をしているんだ?」

背後から聞こえた声に振り返れば鐵腸さんの姿があった。

「ハーブティーをブレンドしているんです。猟犬部隊の方々にプレゼントしようと思って」
「俺達に?」

そう、はみ出しもののように思われている彼らに少しでもリラックス出来るひと時を与えられたら、と思い立ったのだ。

「はい!ハーブには色々な効用がありますから。例えば条野さんのはカモミールをベースにしました。これにはストレス解消効果があるんですよ」
「条野はストレスが多いのか?」
「それは・・・まぁ、気疲れ多そうかなぁと・・・」

普段の条野さんの仕事風景を思い出すと苦笑が浮かぶ。
彼のストレスの何分の1かは鐵腸さんによるものなんだろうなぁ。

「こんなものにそんな効果があるとはな」
「凄いですよねぇ。こんな小さくて綺麗な植物に色んな力が込められているんですから。自然からの優しい贈り物ですね」

広げられているハーブを1つ手に取った鐵腸さんは何を思ったのかそのまま口に入れた。

「てっ、鐵腸さん!?なにしてるんですか!?」
「不味い」
「でしょうね!?なかなかそのままで食べませんから!ほら、これでも飲んでください!」

顔を酷く歪めた鐵腸さんに私が自分用に淹れたハーブティーを差し出す。
マローブルーを使ったそのハーブティーは鮮やかな紫色をしていて私のお気に入りだ。

「これは、美味いな」
「ふふ、でしょう?ハーブはこうした方が美味しいんですよ」

目を真ん丸くして手元のハーブティーを見つめる鐵腸さんに1つの瓶を差し出す。

「鐵腸さん用のハーブティーです。集中力向上効果のあるローズマリーをブレンドしておきました」
「ありがとう。だが俺にはそれを淹れるやり方が分からない」
「なら今度お教えしますよ!難しくないですからきっと出来るようになります!」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
「それと、鐵腸さんのには特別に私の愛情も一緒にブレンドしておきましたから!」
「そうか」

何を言ってるのか、と困った返しを期待して言った言葉なのに一言で素っ気なく返されてしまって鐵腸さんらしいけど少し脱力する。

「なら効果は何百倍にもなるな」

思わぬ言葉に顔を上げれば渡した瓶を愛しそうに撫でる鐵腸さんの姿。
私の視線に気づき柔らかく微笑んだ姿に惑わされたのは私の方。
あぁ、困った。気持ちを落ち着かせるハーブ、余裕あったかな。
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