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短編 文スト

「ふたつにひとつだ」

そう言った彼は笑っていた。

「全てを諦めて変わらずに私の傍に居るか」

ツカツカと歩み寄って来た彼は私の両手を掴み、自らの首に当てた。
驚いて振りほどこうと力を入れるもピクリともしない。

「君のその手で、私を殺してでも自由を得るか」

光の無い暗い瞳は真っ直ぐに私を見据えている。

「君は、どちらを選ぶのかな・・・?」

恐ろしい人。
この人の傍に居たら、永遠に私に自由は無い。
心までも絡め取られて、ただ堕ちていくだけだ。
彼から解放されるには・・・

「・・・・ごめんなさい」

彼の首にある自分の両手にグッと力を込める。

「・・・それが、君の答えか」

首を締められているのだ、苦しい筈なのに彼は恍惚の表情を浮かべている。
その顔にゾクリとして思わず力を緩めた瞬間、彼の両腕が伸ばされ力ずくで彼の腕の中に閉じ込められる。

「嫌っ!離してっ!」
「駄目だ、離さない」

胸をドンドンと叩く私の頭に手を添えて無理矢理キスをされた。
離したと思ったら息をする間もなくまた唇を塞がれる。

「愛してる。・・・・離れるなんて許さない」

あぁ、最初から逃がす気なんてなかったのだ。
瞳から零れた涙は落ちることなく彼の舌に舐め取られた。
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