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短編 文スト

「ねぇ、貴方も抱いてあげて」

そう言って彼女から差し出された小さな命を、戸惑いながらも受け取り自分の腕の中に抱く。
まだ自我も芽生えない幼い命は、僕の汚れた腕の中でも関係なく穏やかな寝息を立てている。

「....軽いですね。そして柔らかい」

まるで羽根が生えている様だと思った。
少し力を強めればすぐに壊せてしまいそうなほど脆く、か細い命。

「僕が父親で、本当にいいんでしょうか」
「え...?」
「僕は綺麗な人間ではありません。たくさんの命を奪ってきました。そんな人間が父親で、この子を幸せにしてあげられるのか...」
「大丈夫よ」

僕の腕に抱かれた赤ん坊の頬を撫でながら彼女は言った。

「だって貴方と生きることを選んだ私がこんなにも幸せなんだもの。貴方が私を愛してくれたようにこの子を愛してくれるのなら、きっとこの子も幸せになれるわ」

そう笑った彼女の顔はもうすっかり母の顔をしている。
愛してくれるなら...
愛すに決まっている。
誰よりも愛しく、かけがえのない人が産んでくれた子供を、愛さない訳がない。

「ありがとう、ございます」

僕を選んでくれたことに。
この子をこの世に生み出してくれたことに。
もっと確かに伝えたいのに、言葉がつっかえて出てきてはくれない。
本当に、柄にも無く泣きそうになった自分がいたのだ。

「幸せです、とても」
「えぇ、私もよ」
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