2人の幸福論
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あぁ、面倒くさい。私はその感情の矛先である恋人に聞こえるように大きく溜息を吐いた。連絡も無くいきなり家に押し掛けてきたかと思えば咎める私の声も意に介さずソファーに座っていた私の隣にドカッと座ったまま目隠ししてても分かるくらい不機嫌な顔で脚を組んだ。いっそこのまま放っておいてやろうかとも思ったけれど悟の性格上それはそれで面倒なことになりそうだと思い仕方なく声を掛けることにした。
「悟、どうし」
「納得いかないんだけど」
「はぁ?なにが?」
「硝子に言えて僕に言えないってどういうことだよ」
私に声を掛けられるのを待ってましたとばかりに口を開いた悟の話し方はまるで高専時代に戻ったかのように崩れていて威圧的で、明らかに私に対して怒っているのだとすぐに察した。
「一体なんのこと?」
「硝子に言ったんだろ?僕のこと好きだって。僕には1回だって直接言ってくれたことないのに」
・・・言った。先日硝子と2人で飲んだ時に酒が入った勢いで確かに私は悟のことが好きだと何度も繰り返し言った。硝子の馬鹿。なんでよりによって本人に言っちゃうかな。
「あー・・・あれは飲みの席での勢いっていうか、」
「じゃあ僕のこと本当は好きじゃないんだ?」
「はぁ?何でそうなる訳?そうとは言ってないじゃん」
「ならちゃんと言葉にして証明してよ。今、ここで」
そう言って私の方に体を向けた悟にせがまれ私はグッと言い淀んだ。別に言うのが嫌な訳じゃない。ただどうしようも無く気恥しさが湧くだけで。硝子に言うのとは訳が違う。
「悟、・・・・・・すき、だよ」
「聞こえない。もっとハッキリ」
「あ〜〜もう!!・・・好き。好きだよ、悟。わっ!?」
顔がカーッと熱くなるのを感じながら目を閉じ言い捨てるように言えば、急に体が浮遊感に襲われた。そして気付けば目の前には悟の顔。つまり悟の膝の上に乗せられたのだと分かった。さっきまで不機嫌そうにへの字に曲がっていた口も今は楽しげに弧を描いている。
「いきなり何すんの!?降ろしてよ!」
「やだ。ねぇ、もう1回、今度は僕の目を見ながら言ってよ」
「馬鹿じゃないの!?調子に乗りすぎ!」
「言ってよ。やっと聞けたんだからいっぱい聞きたい」
悟が指で目隠しを首まで下げれば腹が立つ程綺麗な顔が露になる。宝石みたいにキラキラと輝く青い瞳に真っ直ぐ見つめられると告白された時のことを昨日のことのように思い出す。今思えばこの瞳に見惚れたのが運の尽きだったのかもしれない。そうは思ってもやっぱり・・・綺麗だなぁ。悟の顔を両手で包むように掴んでそのまま吸い込まれるように右瞼に口付けた。気付けば気恥しさは消えていた。
「好きだよ、ほんとムカつくくらい」
「・・・・・・お前ってさぁ・・・・・・はぁ〜〜」
「悟?」
「黙って」
一瞬固まった後大きく息を吐いた悟は私の後頭部に右手を回し、反対の手は私が逃げられないようにする為か腰に当てられそのまま噛み付くようなキスをしてきた。反射的に逃げようとしても力で適うはずもない。
「僕もお前が好きだよ、恋人になった時から何も変わらない。寧ろもっとお前を好きになってる」
唇が離れると同時に告げられた愛の言葉と熱を孕んだ悟の視線が真っ直ぐ私に向けられていて身震いした。
「お前のその素直じゃない天邪鬼なところも全部愛しくて仕方ないし、僕を理解してくれている所とか、こうして呪術師で居ることを選んで僕の傍にいてくれていることだって、ずっと感謝してるんだ。だから、」
悟の手が私の左手を掴み、そのまま薬指にするりと銀色の指輪が嵌められた。"心臓に直接繋がる"とされるその指に指輪を恋人から嵌められる意味なんて考えなくたって分かる。
「悟、これって・・・」
「前に言っただろ?お前が素直になったらちゃんと言ってあげるって。・・・結婚しよう。家の面倒くさいしきたりとかそんなモノなんてお前は一切背負わなくていいから、ただ僕をずっと好きでいてよ」
涙が出た。だってこんな、噎せ返るくらいの深くて強い愛情なんか私をこの世に産み落とした親にも貰ったことがない。胸が詰まって苦しいくらいなのにほんの少しだって吐き出したくない。
「私でいいの?ほんとに?」
「良いに決まってんでしょ。あのさぁ、その指輪見て察せないの?」
今日何度目かの大きく心底呆れたと言いたげに吐かれた溜息に指に嵌められた指輪を見ると、シンプルな作りをしたその指輪は光を反射してキラキラと輝いている。
「綺麗だね。いつ用意したの」
「随分前だよ。その当時は最新デザインだったのにお陰ですっかり古くなっちゃったくらい」
「え、そんなに前から?」
「そうだけど?・・・忙しいこの僕がだよ?いつ渡す時が来ても良いようにせっせとピカピカに指輪磨いてたんだよ?その意味分かる?それくらいお前のこと好きで仕方ないってこと。お前はいい加減その自覚持ってくんない?」
「な、にそれ・・・私の事好きすぎでしょ」
「今更気づいた?だからさ、お前のそのひねくれた幸福論も全部ぶっ壊すくらい幸せにしてみせるから、また僕を選んでよ」
強がりで言った言葉に対する返答を聞いてまた涙が溢れ出る。胸がポカポカと温かい。あぁ、そっか。やっと分かった。これが私がずっと求めてた"幸せ"って感情なんだね。
「いいよ、幸せになってあげる。・・・一緒にね」
「ほんっと、生意気」
告白された時の返事と同じ言い方で、それでもその時とは正反対の言葉を紡ぐ。悟も言葉とは裏腹に喜びを隠しきれないといった顔で笑った。そうしてまたひとつ、誓いを交わすようにどちらかも無くキスを落とした。
「悟、どうし」
「納得いかないんだけど」
「はぁ?なにが?」
「硝子に言えて僕に言えないってどういうことだよ」
私に声を掛けられるのを待ってましたとばかりに口を開いた悟の話し方はまるで高専時代に戻ったかのように崩れていて威圧的で、明らかに私に対して怒っているのだとすぐに察した。
「一体なんのこと?」
「硝子に言ったんだろ?僕のこと好きだって。僕には1回だって直接言ってくれたことないのに」
・・・言った。先日硝子と2人で飲んだ時に酒が入った勢いで確かに私は悟のことが好きだと何度も繰り返し言った。硝子の馬鹿。なんでよりによって本人に言っちゃうかな。
「あー・・・あれは飲みの席での勢いっていうか、」
「じゃあ僕のこと本当は好きじゃないんだ?」
「はぁ?何でそうなる訳?そうとは言ってないじゃん」
「ならちゃんと言葉にして証明してよ。今、ここで」
そう言って私の方に体を向けた悟にせがまれ私はグッと言い淀んだ。別に言うのが嫌な訳じゃない。ただどうしようも無く気恥しさが湧くだけで。硝子に言うのとは訳が違う。
「悟、・・・・・・すき、だよ」
「聞こえない。もっとハッキリ」
「あ〜〜もう!!・・・好き。好きだよ、悟。わっ!?」
顔がカーッと熱くなるのを感じながら目を閉じ言い捨てるように言えば、急に体が浮遊感に襲われた。そして気付けば目の前には悟の顔。つまり悟の膝の上に乗せられたのだと分かった。さっきまで不機嫌そうにへの字に曲がっていた口も今は楽しげに弧を描いている。
「いきなり何すんの!?降ろしてよ!」
「やだ。ねぇ、もう1回、今度は僕の目を見ながら言ってよ」
「馬鹿じゃないの!?調子に乗りすぎ!」
「言ってよ。やっと聞けたんだからいっぱい聞きたい」
悟が指で目隠しを首まで下げれば腹が立つ程綺麗な顔が露になる。宝石みたいにキラキラと輝く青い瞳に真っ直ぐ見つめられると告白された時のことを昨日のことのように思い出す。今思えばこの瞳に見惚れたのが運の尽きだったのかもしれない。そうは思ってもやっぱり・・・綺麗だなぁ。悟の顔を両手で包むように掴んでそのまま吸い込まれるように右瞼に口付けた。気付けば気恥しさは消えていた。
「好きだよ、ほんとムカつくくらい」
「・・・・・・お前ってさぁ・・・・・・はぁ〜〜」
「悟?」
「黙って」
一瞬固まった後大きく息を吐いた悟は私の後頭部に右手を回し、反対の手は私が逃げられないようにする為か腰に当てられそのまま噛み付くようなキスをしてきた。反射的に逃げようとしても力で適うはずもない。
「僕もお前が好きだよ、恋人になった時から何も変わらない。寧ろもっとお前を好きになってる」
唇が離れると同時に告げられた愛の言葉と熱を孕んだ悟の視線が真っ直ぐ私に向けられていて身震いした。
「お前のその素直じゃない天邪鬼なところも全部愛しくて仕方ないし、僕を理解してくれている所とか、こうして呪術師で居ることを選んで僕の傍にいてくれていることだって、ずっと感謝してるんだ。だから、」
悟の手が私の左手を掴み、そのまま薬指にするりと銀色の指輪が嵌められた。"心臓に直接繋がる"とされるその指に指輪を恋人から嵌められる意味なんて考えなくたって分かる。
「悟、これって・・・」
「前に言っただろ?お前が素直になったらちゃんと言ってあげるって。・・・結婚しよう。家の面倒くさいしきたりとかそんなモノなんてお前は一切背負わなくていいから、ただ僕をずっと好きでいてよ」
涙が出た。だってこんな、噎せ返るくらいの深くて強い愛情なんか私をこの世に産み落とした親にも貰ったことがない。胸が詰まって苦しいくらいなのにほんの少しだって吐き出したくない。
「私でいいの?ほんとに?」
「良いに決まってんでしょ。あのさぁ、その指輪見て察せないの?」
今日何度目かの大きく心底呆れたと言いたげに吐かれた溜息に指に嵌められた指輪を見ると、シンプルな作りをしたその指輪は光を反射してキラキラと輝いている。
「綺麗だね。いつ用意したの」
「随分前だよ。その当時は最新デザインだったのにお陰ですっかり古くなっちゃったくらい」
「え、そんなに前から?」
「そうだけど?・・・忙しいこの僕がだよ?いつ渡す時が来ても良いようにせっせとピカピカに指輪磨いてたんだよ?その意味分かる?それくらいお前のこと好きで仕方ないってこと。お前はいい加減その自覚持ってくんない?」
「な、にそれ・・・私の事好きすぎでしょ」
「今更気づいた?だからさ、お前のそのひねくれた幸福論も全部ぶっ壊すくらい幸せにしてみせるから、また僕を選んでよ」
強がりで言った言葉に対する返答を聞いてまた涙が溢れ出る。胸がポカポカと温かい。あぁ、そっか。やっと分かった。これが私がずっと求めてた"幸せ"って感情なんだね。
「いいよ、幸せになってあげる。・・・一緒にね」
「ほんっと、生意気」
告白された時の返事と同じ言い方で、それでもその時とは正反対の言葉を紡ぐ。悟も言葉とは裏腹に喜びを隠しきれないといった顔で笑った。そうしてまたひとつ、誓いを交わすようにどちらかも無くキスを落とした。