2人の幸福論
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高専内に設置されたベンチに座り、風にサラサラと揺らされている木の葉をぼんやりと眺める。今日は本当にいい天気で、空は清々しい程に青い。
私は・・・呪術師を続ける選択をした。
その選択を伝える為に同級生達には告げず、数日間高専を離れ実家に帰っていた。高専を卒業したら地元に戻り何ら変わりのない一般人として生きることを願っていた家族からしたら私のこの選択は到底受け入れ難いことで。案の定、父親には思い切り殴られ母親には泣かれで悲惨な有様だった。それでも考えを変えない私に両親から突き付けられたのは勘当だった。そうなることは何となく予測していたのもあって二つ返事で受け入れた。とは言ってもやはり唯一の肉親に別れを告げられるのは胸に一抹の痛みを感じたけれどこれでいいと言い聞かせた。私の身勝手な選択に家族まで巻き込むつもりは毛頭ない。
私は他でも無い自分の為に、自分の意思でこの道を選んだのだから。
「澪!!」
揺れる葉の音も掻き消す程の大きな私を呼ぶ声の方がして視線を向ければ、そこには息を切らしながら立つ悟がいた。もしかして私を探し回っていたのだろうか。黙って高専から居なくなっていたから心配させてしまったかな?悟との最後の会話が会話だっただけに少しだけ気まずい。
ベンチから立ち上がり、おずおずと顔色を窺えば悟の視線は真っ直ぐ私に・・・いや、私の殴られて腫れた左頬へ向けられていた。悟の顔が歪む。
「お前、その顔・・・」
「あぁ、これ?思いっきり殴られたの、父親に。冷やしたんだけどね、なかなか腫れが引かなくて困っちゃった。不格好で笑えるでしょ?」
「っ・・・馬鹿っ!笑えるわけ、ねぇだろっ!・・・呪術師続けるって、本気なのかよ」
「本気だよ」
即答した私の言葉に悟の瞳が揺れる。腫れた顔の私なんかよりずっと泣きそうな顔だ。好きにしろって言ったのは自分のくせに。本当に、悟は強いようで弱いなぁとクスリと笑みが零れた。
「ねぇ、悟」
「・・・・なん、だよ」
「私、約束通り不幸になってあげたよ」
悟の揺れていた瞳が今度は大きく見開かれる。それは恋人になった時に誓った言葉だ。自分が撒いた種にしろ、家族からは勘当され、一般人として穏やかに生きる道を捨てて決して真っ当とは言えない呪術師としての生を選んだのだから不幸になったと言っても過言じゃないだろう。
「な、んだよ、それ・・・ほんと勝手な奴だなお前は・・・俺に何も相談しねぇで・・・」
「ごめん。でも、これが私の選んだ道だから」
「・・・なら、」
悟は1つ大きく深呼吸してからその青い瞳を真っ直ぐ向けてきた。想いを告げられたあの時と同じように私の心臓がドクン、と高鳴る。今なら、そうなる理由も分かる気がする。
「なら、俺も約束通りお前を幸せにしてやる」
まるでプロポーズのようだと嘗て仲間であった人物に言われた台詞。最初に言われた時は何とも思わずに笑って流したけれど、今は違う。胸に広がる確かな温かさが私が悟へ抱いている感情の名前を告げている。何だか悔しい。
「だから、後悔したって知らねぇからな」
「・・・あれ?悟、まさか私に後悔させるつもりなの?」
「・・・させねぇ。この道を、俺を選んで良かったって言わせてみせるから、だから、傍に、いて欲しい、」
「・・・うん、いるよ。その為に此処に戻ってきたんだから」
結局私も夏油と変わらないのかな。
自分の目的の為に今まで培ってきたものを簡単に切り捨てた。本当に自分本位で、我儘で、浅はか過ぎる選択。いつか罰せられる日が来るのかもしれない。
私を離さないと言うように強く抱き締める悟の腕は震えていた。私も離れないと伝える為に悟の背中に手を回す。きっと私にはどう足掻いたとしてもこの強く弱い人を置いていく選択肢を選ぶことは出来ないんだろう。そう、例えこの先どんな未来が訪れようとも、私が悟の傍に居たいと望んだ、それだけは揺るぎない事実なんだ。
私は・・・呪術師を続ける選択をした。
その選択を伝える為に同級生達には告げず、数日間高専を離れ実家に帰っていた。高専を卒業したら地元に戻り何ら変わりのない一般人として生きることを願っていた家族からしたら私のこの選択は到底受け入れ難いことで。案の定、父親には思い切り殴られ母親には泣かれで悲惨な有様だった。それでも考えを変えない私に両親から突き付けられたのは勘当だった。そうなることは何となく予測していたのもあって二つ返事で受け入れた。とは言ってもやはり唯一の肉親に別れを告げられるのは胸に一抹の痛みを感じたけれどこれでいいと言い聞かせた。私の身勝手な選択に家族まで巻き込むつもりは毛頭ない。
私は他でも無い自分の為に、自分の意思でこの道を選んだのだから。
「澪!!」
揺れる葉の音も掻き消す程の大きな私を呼ぶ声の方がして視線を向ければ、そこには息を切らしながら立つ悟がいた。もしかして私を探し回っていたのだろうか。黙って高専から居なくなっていたから心配させてしまったかな?悟との最後の会話が会話だっただけに少しだけ気まずい。
ベンチから立ち上がり、おずおずと顔色を窺えば悟の視線は真っ直ぐ私に・・・いや、私の殴られて腫れた左頬へ向けられていた。悟の顔が歪む。
「お前、その顔・・・」
「あぁ、これ?思いっきり殴られたの、父親に。冷やしたんだけどね、なかなか腫れが引かなくて困っちゃった。不格好で笑えるでしょ?」
「っ・・・馬鹿っ!笑えるわけ、ねぇだろっ!・・・呪術師続けるって、本気なのかよ」
「本気だよ」
即答した私の言葉に悟の瞳が揺れる。腫れた顔の私なんかよりずっと泣きそうな顔だ。好きにしろって言ったのは自分のくせに。本当に、悟は強いようで弱いなぁとクスリと笑みが零れた。
「ねぇ、悟」
「・・・・なん、だよ」
「私、約束通り不幸になってあげたよ」
悟の揺れていた瞳が今度は大きく見開かれる。それは恋人になった時に誓った言葉だ。自分が撒いた種にしろ、家族からは勘当され、一般人として穏やかに生きる道を捨てて決して真っ当とは言えない呪術師としての生を選んだのだから不幸になったと言っても過言じゃないだろう。
「な、んだよ、それ・・・ほんと勝手な奴だなお前は・・・俺に何も相談しねぇで・・・」
「ごめん。でも、これが私の選んだ道だから」
「・・・なら、」
悟は1つ大きく深呼吸してからその青い瞳を真っ直ぐ向けてきた。想いを告げられたあの時と同じように私の心臓がドクン、と高鳴る。今なら、そうなる理由も分かる気がする。
「なら、俺も約束通りお前を幸せにしてやる」
まるでプロポーズのようだと嘗て仲間であった人物に言われた台詞。最初に言われた時は何とも思わずに笑って流したけれど、今は違う。胸に広がる確かな温かさが私が悟へ抱いている感情の名前を告げている。何だか悔しい。
「だから、後悔したって知らねぇからな」
「・・・あれ?悟、まさか私に後悔させるつもりなの?」
「・・・させねぇ。この道を、俺を選んで良かったって言わせてみせるから、だから、傍に、いて欲しい、」
「・・・うん、いるよ。その為に此処に戻ってきたんだから」
結局私も夏油と変わらないのかな。
自分の目的の為に今まで培ってきたものを簡単に切り捨てた。本当に自分本位で、我儘で、浅はか過ぎる選択。いつか罰せられる日が来るのかもしれない。
私を離さないと言うように強く抱き締める悟の腕は震えていた。私も離れないと伝える為に悟の背中に手を回す。きっと私にはどう足掻いたとしてもこの強く弱い人を置いていく選択肢を選ぶことは出来ないんだろう。そう、例えこの先どんな未来が訪れようとも、私が悟の傍に居たいと望んだ、それだけは揺るぎない事実なんだ。