2人の幸福論
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「五条と付き合いだしたんだって?」
任務明けの朝、寮の廊下で会った硝子は挨拶も無くニヤニヤと笑いながらそう言った。
「そうだけど。なんで知ってるの?」
「五条が浮かれて騒いでたよ。もう高専の殆どの人間が知ってるだろうね」
「マジで?何してくれてるのアイツ」
はぁ〜と大きく溜息を吐く。別に隠すつもりは無かったけれど、こんな短時間で知れ渡ることになるとは予想外だ。対処が面倒だなぁ。
「にしてもなんで?」
「何が?」
「五条のこと好きだったっけ?」
「いや、全然。そんな風に見たことない」
「即答じゃん。じゃあなんでOKしたわけ?」
「んーなんだろ、最初は断るつもりだったんだけど気付いたらOKしてた感じ。庇護欲ってやつ?それか母性本能?」
「ハハ、意味わかんねー。あのクズの何処にそんな可愛げあんだよ」
「ふ、確かに」
「それともまさかだけど五条となら幸せになれると思ったとか?」
「いや寧ろ逆。不幸になってもいいよって言った」
「更に意味わかんねー。幸せになりたいってずっと言ってたのに態々自分から不幸になる道選ぶとかなにやってんの?」
「私にもよく分かんないだからしょーがないじゃん」
図星を突く硝子の言葉がグサリと胸に刺さる。本当にその通りだから言い返す良い言葉が全く見付からない。今でも幸せになりたいという考えに変わりはないのだけどね。
「まぁでもさ、なんかよく分かんないけど楽しいんだ、私。毎日くだらないことでメールしたり電話するようなこの関係が」
「へぇ、」
「だから悟が飽きるまではこの関係を続けてみようと思ってる」
「いいんじゃない?それが転じることだってあるかもしれないし。あ、けど五条に何かされたらすぐ言いなよ?」
「あれ、硝子、もしかして心配してくれてるの?」
「心配4割面白そう6割かな」
「ははっ!面白そうな方が多いんだ?硝子らしいけど」
「まぁね。ま、とりあえずはおめでとうって言っとく」
相変わらず楽しそうにニヤニヤと笑いながら言われた祝福に苦笑しながらもありがとうと返した。
************
その日の夜、任務で外出中の悟と電話して今日の硝子との会話を報告した。
「完璧に面白がってんな、硝子のやつ」
「やっぱりそう思う?でもおめでとうとも言って貰えたよ」
「んなのいつまで続くか楽しんで見てるって意味に決まってんだろ!騙されんな!」
「はいはい、それくらい私だって分かってるよ」
突然の大声に反射的に携帯を耳から遠ざける。なにもそんなムキになることないのに。
「あのさ、」
「なに?」
一瞬、間があったと思ったら静かな声で呼び掛ける声が聞こえた。続きを促してもすぐには答えが来ず、ゴニョニョと何かを言っているのが聞こえた。
「俺、」
「うん」
「俺、お前のこと本気だから。本気で大事にしたいって思ってる、から。それだけは、信じて欲しい」
真面目なトーンで言われた誓いにも似た言葉に一瞬ポカンとした後、笑いが込み上げてきた。そんな私の声に携帯の向こうの悟は「んで笑うんだよ!」と怒声をあげたけれど私はそんなこと構わずに、寧ろそれがまた可笑しくて笑った。
やっぱり今も悟と恋人になって生きることが私の幸せに繋がるとは到底思えない。その考えに変わりはない。それでも不器用な言葉で必死に想いを伝えようと必死になっているそんな悟のことを可愛いと、いや少しだけ愛しいと思ってしまった私もいた。
「うん、いいよ、信じてあげる」
私の返答に「おう、」と萎んだような悟の声が聞こえた。
任務明けの朝、寮の廊下で会った硝子は挨拶も無くニヤニヤと笑いながらそう言った。
「そうだけど。なんで知ってるの?」
「五条が浮かれて騒いでたよ。もう高専の殆どの人間が知ってるだろうね」
「マジで?何してくれてるのアイツ」
はぁ〜と大きく溜息を吐く。別に隠すつもりは無かったけれど、こんな短時間で知れ渡ることになるとは予想外だ。対処が面倒だなぁ。
「にしてもなんで?」
「何が?」
「五条のこと好きだったっけ?」
「いや、全然。そんな風に見たことない」
「即答じゃん。じゃあなんでOKしたわけ?」
「んーなんだろ、最初は断るつもりだったんだけど気付いたらOKしてた感じ。庇護欲ってやつ?それか母性本能?」
「ハハ、意味わかんねー。あのクズの何処にそんな可愛げあんだよ」
「ふ、確かに」
「それともまさかだけど五条となら幸せになれると思ったとか?」
「いや寧ろ逆。不幸になってもいいよって言った」
「更に意味わかんねー。幸せになりたいってずっと言ってたのに態々自分から不幸になる道選ぶとかなにやってんの?」
「私にもよく分かんないだからしょーがないじゃん」
図星を突く硝子の言葉がグサリと胸に刺さる。本当にその通りだから言い返す良い言葉が全く見付からない。今でも幸せになりたいという考えに変わりはないのだけどね。
「まぁでもさ、なんかよく分かんないけど楽しいんだ、私。毎日くだらないことでメールしたり電話するようなこの関係が」
「へぇ、」
「だから悟が飽きるまではこの関係を続けてみようと思ってる」
「いいんじゃない?それが転じることだってあるかもしれないし。あ、けど五条に何かされたらすぐ言いなよ?」
「あれ、硝子、もしかして心配してくれてるの?」
「心配4割面白そう6割かな」
「ははっ!面白そうな方が多いんだ?硝子らしいけど」
「まぁね。ま、とりあえずはおめでとうって言っとく」
相変わらず楽しそうにニヤニヤと笑いながら言われた祝福に苦笑しながらもありがとうと返した。
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その日の夜、任務で外出中の悟と電話して今日の硝子との会話を報告した。
「完璧に面白がってんな、硝子のやつ」
「やっぱりそう思う?でもおめでとうとも言って貰えたよ」
「んなのいつまで続くか楽しんで見てるって意味に決まってんだろ!騙されんな!」
「はいはい、それくらい私だって分かってるよ」
突然の大声に反射的に携帯を耳から遠ざける。なにもそんなムキになることないのに。
「あのさ、」
「なに?」
一瞬、間があったと思ったら静かな声で呼び掛ける声が聞こえた。続きを促してもすぐには答えが来ず、ゴニョニョと何かを言っているのが聞こえた。
「俺、」
「うん」
「俺、お前のこと本気だから。本気で大事にしたいって思ってる、から。それだけは、信じて欲しい」
真面目なトーンで言われた誓いにも似た言葉に一瞬ポカンとした後、笑いが込み上げてきた。そんな私の声に携帯の向こうの悟は「んで笑うんだよ!」と怒声をあげたけれど私はそんなこと構わずに、寧ろそれがまた可笑しくて笑った。
やっぱり今も悟と恋人になって生きることが私の幸せに繋がるとは到底思えない。その考えに変わりはない。それでも不器用な言葉で必死に想いを伝えようと必死になっているそんな悟のことを可愛いと、いや少しだけ愛しいと思ってしまった私もいた。
「うん、いいよ、信じてあげる」
私の返答に「おう、」と萎んだような悟の声が聞こえた。