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短編 文スト

なんとなく家に居たくなくて夜になると家を抜け出すのが日課になっていた。公園のベンチに座り、外の少し冷たい空気に触れながら暗い空に浮かぶ月を見上げる。
そう、私はいつも居場所を探していた。
といっても自分だけが特別不幸だとは思っていない。世界を見渡せば私よりもずっと辛い状況に居る人は大勢いる。だけれどこの胸に広がる埋めようの無い虚無感は消えるどころかどんどんと強くなっていくばかりだ。
居場所が欲しい。
無条件に、ありのままの私を受け入れてくれる居場所が。

「その気持ち、分かります」

そう言ってくれたのは最近出会った敦くんという男の子。白い髪に宝石のような綺麗な瞳をした子だ。
ある夜に偶然此処で出会ってからというもの、時たま現れてはこうして言葉を交わすようになっていた。最初こそ素性も分からない相手に警戒したものだが、今ではこうして自分の思っていることを吐き出すまでの間柄になっていた。

「僕もそう思っていた時がありました。帰りたいって思えるような居場所・・・家が欲しいって」
「家・・・そうだね。私もそんな場所が欲しいのかもしれない」
「やっぱり僕と貴方は何処か似ているのかもしれませんね」

嬉しそうに笑う彼はきっと想像つかないくらい辛い思いをしてきたのだろうなって思う。時々見せる悲しそうな瞳が私にそう思わせた。

「敦くんにはそんな場所が出来たの?」
「えぇ、出来ました。僕を受け入れてくれる大切な仲間が居る温かい居場所が」
「そう、なんだ」
「はい。だから貴方さえ良ければ、」

彼は私とは違うんだと思い俯いた私の手をギュッと掴まれ反射的に顔を上げる。

「僕と来ませんか?」
「え・・・?」
「僕が、貴方の居場所になります」

月明かりに照らされた彼の真剣な顔にドクンと心臓が高鳴った。
私は貴方のその言葉を信じても、いいのだろうか。
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