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短編 文スト

ただひたすら想っていた。
本気の言葉にする訳でもあからさまに態度に出すことも無く。ただただ近くで彼女のことを想っていた。

なんて殊勝なことだろう。彼女が幸せになる様を見ているだけで満たされるなんて、私らしくもない。
まるで恋慕に似たこの感情はいつかは愛に変わってしまうのだろうか。その時も私はただ見ているだけで十分だと言えるのか。

「太宰さん!」

背後から彼女の呼ぶ声が聞こえ振り返ればそこには満面の笑みを携えた彼女の姿。手を振る彼女に私も自然と笑みを浮かべて振り返した。彼女が今日も笑っている。だからこそ、この世界は美しい。
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