短編 文スト
呆気ない終わりだった。
壊さないよう優しく慎重を期して育ててきた淡い恋心はたった今、1度も人目に触れることも無く心の奥底にしまい込んだ。
自分ではない他の誰かと結ばれたのだと、形式上は俺の相棒と云われている人物に知らされた。なんて皮肉だろう。いや、もしかしたら太宰からの嫌がらせなのかもしれない。俺の彼女への想いを無駄に聡い奴には察せられていたのだから。
それならせめて・・・いやどうせなら本人から直接聞かされて跡形も残らない程に粉々に砕いてしまいたかった。そうすればこんなに胸が痛むことも無かったし未練だって消え失せたかもしれない。
パタパタと軽い弾むような足音が向かってくるのが聞こえてくる。態々姿を見なくたって誰かなんて分かる。分かってしまう。
「中也、太宰、あのね・・・!」
嬉しそうに話す声に俯きながらギリッと強く奥歯を噛み締める。そんな俺を隣に立つ太宰がしっかりしろとでも言うように肘で突いた。分かってんだよ、手前に促されてなくたって此処で言うべき台詞なんざ。
「おめでとさん」
無理矢理に作った笑顔と絞り出した言葉に、ピキピキと、蓋を閉めたばかりの愛が悲鳴にも似た鳴き声を洩らした。
壊さないよう優しく慎重を期して育ててきた淡い恋心はたった今、1度も人目に触れることも無く心の奥底にしまい込んだ。
自分ではない他の誰かと結ばれたのだと、形式上は俺の相棒と云われている人物に知らされた。なんて皮肉だろう。いや、もしかしたら太宰からの嫌がらせなのかもしれない。俺の彼女への想いを無駄に聡い奴には察せられていたのだから。
それならせめて・・・いやどうせなら本人から直接聞かされて跡形も残らない程に粉々に砕いてしまいたかった。そうすればこんなに胸が痛むことも無かったし未練だって消え失せたかもしれない。
パタパタと軽い弾むような足音が向かってくるのが聞こえてくる。態々姿を見なくたって誰かなんて分かる。分かってしまう。
「中也、太宰、あのね・・・!」
嬉しそうに話す声に俯きながらギリッと強く奥歯を噛み締める。そんな俺を隣に立つ太宰がしっかりしろとでも言うように肘で突いた。分かってんだよ、手前に促されてなくたって此処で言うべき台詞なんざ。
「おめでとさん」
無理矢理に作った笑顔と絞り出した言葉に、ピキピキと、蓋を閉めたばかりの愛が悲鳴にも似た鳴き声を洩らした。