孤独な鳳仙花
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変人や訳ありの人間ばかりの殺伐としたポートマフィアでも、私の待遇は良い方だ。本来であればロクな戦闘能力も優れた頭脳も持たない私が首領の秘書なんて高い立場に就ける訳がない。全ては私の境遇や異能力の特性を考慮した判断をしてくれた首領の善意によるものだ。だからこそ私はその恩に報いる為に必死になって仕事を覚えた。「なんであんな女が」と揶揄する声も多かったが、努力の甲斐もあり最近では首領の秘書として少しずつではあるけれど認めて貰えてきている。
それなのに、
「悪くない提案だと思うのだけど?」
「お断りします」
私の返答に執務机にいる男・・・太宰幹部はえー!と大袈裟に声をあげた。
首領の指示で執務室を訪れた私に太宰幹部は唐突にある提案を持ち掛けてきた。それは【太宰幹部の部下にならないか】という内容だった。
私は出会った頃からこの人が苦手だ。いつも何処か暗い色を含む瞳に見つめられると心の内すら見透かされるようで恐ろしくなる。それに加えて太宰幹部はポートマフィア内で唯一、私に異能力を積極的に使わせようとしてくる人物だ。
なるべくなら関わりたくないと願いつつもこの人を頼らざるを得ない時がある。その訳は太宰幹部の持つ異能力【人間失格】だ。無効化の力を持つその異能力は、私のような常時発動型の異能持ちにはある種の救いであり、心の拠り所にもなるものだ。以前にも暴走する寸前だったところを助けて貰った。
異能力発動が怖くて人に触れることが出来ない私にとって、彼は唯一触れられる存在でもある。
「君の異能力は使い方によっては戦局を変えることの出来る利便性が高いものだ。例えば作戦前にある構成員に向けて異能力を発動させ最期を見る。そして見えた今際の時の風景や状態で作戦がどうなるかある程度読める余地がある。反対に全く違う情景が浮かべばその作戦ではその構成員は死なないという証明になり、作戦は成功する可能性が高いということだって分かるだろう?」
「私の異能力で見えるのは精々5秒程度です。見える情景だって対象の人物の居る空間が少し見えるだけ。そんな条件でそこまで把握するのは不可能です」
「その判断をするのは君じゃない、私だ。君が見た光景を私にそのまま伝えるんだ。君には分からなくても私なら有用に使える」
「・・・1人にだけ、使う訳ではないのでしょう?」
「勿論。必要とあれば何人でも何十人でも使ってもらうよ」
「そんな簡単に・・・言わないでください!人の最期を見ることがどれだけのことか・・!」
「それは考慮が必要なこと?まさか君は組織の繁栄や成功よりも自分の感情を優先してほしいとでも言うつもり?」
「そ、れは」
「君が多少辛酸を嘗めるだけで犠牲が最小限になるのなら願ったり叶ったりじゃないか」
光の無い冷たい瞳が私を見つめる。この人は、どうしてこんなにも慈悲のないことを言えるのだろう。
恐ろしくなり思わず後退りすれば太宰幹部は椅子から立ち上がり近付いてきた。その顔は先程の冷たい顔とは違い穏やかな物になっていた。それが尚更恐怖を駆り立てる。
「まだ提案を呑む気にはなれないかい?」
「恐ろしい、人」
「心外だね。優しいじゃないか。だって君に選択肢を与えてあげているのだから。私ならやろうと思えば君の意思なんて関係なく無理やり実現させることだって出来るのだよ?森さんだって組織の為なら了承してくれるだろうからね」
「首領は、そんなことしません!首領は私の意思を汲んでくれます!」
「私は事実を言っているだけだ。・・・まぁ、君が森さんをどう思おうと自由だけれど、あまり夢は見ない方がいいと思うよ。これ以上傷つきたくないのならね」
この人は何が言いたいのだろう?戸惑う私の反応を楽しんでいるかのような含みのある笑みを浮かべている。
「それで?返答は?」
「お、断り、します!」
「・・・そう。それは残念」
声を震わせながらもハッキリ拒否すれば態とらしく大きな溜息を吐いた。その姿は言葉とは裏腹に少しも残念がっているようには見えない。
「だけどこれだけは理解しておき給え」
伸ばされた手が私の頬に触れ目線を無理矢理合わせられる。
「君を本当の意味で救ってあげられるのは、森さんでも中也でもない。・・・私だよ」
頬に触れている手が撫でるように上下する。優しい手つきの筈なのにその温度は冷たく、いつもより低い声は私を震わせた。
それなのに、
「悪くない提案だと思うのだけど?」
「お断りします」
私の返答に執務机にいる男・・・太宰幹部はえー!と大袈裟に声をあげた。
首領の指示で執務室を訪れた私に太宰幹部は唐突にある提案を持ち掛けてきた。それは【太宰幹部の部下にならないか】という内容だった。
私は出会った頃からこの人が苦手だ。いつも何処か暗い色を含む瞳に見つめられると心の内すら見透かされるようで恐ろしくなる。それに加えて太宰幹部はポートマフィア内で唯一、私に異能力を積極的に使わせようとしてくる人物だ。
なるべくなら関わりたくないと願いつつもこの人を頼らざるを得ない時がある。その訳は太宰幹部の持つ異能力【人間失格】だ。無効化の力を持つその異能力は、私のような常時発動型の異能持ちにはある種の救いであり、心の拠り所にもなるものだ。以前にも暴走する寸前だったところを助けて貰った。
異能力発動が怖くて人に触れることが出来ない私にとって、彼は唯一触れられる存在でもある。
「君の異能力は使い方によっては戦局を変えることの出来る利便性が高いものだ。例えば作戦前にある構成員に向けて異能力を発動させ最期を見る。そして見えた今際の時の風景や状態で作戦がどうなるかある程度読める余地がある。反対に全く違う情景が浮かべばその作戦ではその構成員は死なないという証明になり、作戦は成功する可能性が高いということだって分かるだろう?」
「私の異能力で見えるのは精々5秒程度です。見える情景だって対象の人物の居る空間が少し見えるだけ。そんな条件でそこまで把握するのは不可能です」
「その判断をするのは君じゃない、私だ。君が見た光景を私にそのまま伝えるんだ。君には分からなくても私なら有用に使える」
「・・・1人にだけ、使う訳ではないのでしょう?」
「勿論。必要とあれば何人でも何十人でも使ってもらうよ」
「そんな簡単に・・・言わないでください!人の最期を見ることがどれだけのことか・・!」
「それは考慮が必要なこと?まさか君は組織の繁栄や成功よりも自分の感情を優先してほしいとでも言うつもり?」
「そ、れは」
「君が多少辛酸を嘗めるだけで犠牲が最小限になるのなら願ったり叶ったりじゃないか」
光の無い冷たい瞳が私を見つめる。この人は、どうしてこんなにも慈悲のないことを言えるのだろう。
恐ろしくなり思わず後退りすれば太宰幹部は椅子から立ち上がり近付いてきた。その顔は先程の冷たい顔とは違い穏やかな物になっていた。それが尚更恐怖を駆り立てる。
「まだ提案を呑む気にはなれないかい?」
「恐ろしい、人」
「心外だね。優しいじゃないか。だって君に選択肢を与えてあげているのだから。私ならやろうと思えば君の意思なんて関係なく無理やり実現させることだって出来るのだよ?森さんだって組織の為なら了承してくれるだろうからね」
「首領は、そんなことしません!首領は私の意思を汲んでくれます!」
「私は事実を言っているだけだ。・・・まぁ、君が森さんをどう思おうと自由だけれど、あまり夢は見ない方がいいと思うよ。これ以上傷つきたくないのならね」
この人は何が言いたいのだろう?戸惑う私の反応を楽しんでいるかのような含みのある笑みを浮かべている。
「それで?返答は?」
「お、断り、します!」
「・・・そう。それは残念」
声を震わせながらもハッキリ拒否すれば態とらしく大きな溜息を吐いた。その姿は言葉とは裏腹に少しも残念がっているようには見えない。
「だけどこれだけは理解しておき給え」
伸ばされた手が私の頬に触れ目線を無理矢理合わせられる。
「君を本当の意味で救ってあげられるのは、森さんでも中也でもない。・・・私だよ」
頬に触れている手が撫でるように上下する。優しい手つきの筈なのにその温度は冷たく、いつもより低い声は私を震わせた。