小さな不注意により互いの手が一瞬触れた。ただそれだけのことで私の世界は終わる。
見えたのは友人である人物の腕に抱かれた織田さんの姿。その顔に生気は無く、苦しそうに言葉を紡いでいた。
呼吸が荒くなる。冷や汗が止まらない。だって見えた織田さんは今目の前に居るそのままの姿で倒れていた。それが意味することはひとつ。そう遠くない内に織田さんは死ぬということ。
知りたくなかった。見たくなかった！こんなこと！

「どうかしたのか？顔色が悪いぞ」

心配そうに私の顔を覗き込む織田さんの優しい顔を見て目頭が熱くなり視界が滲む。それを悟られないように顔をブンブンと横に振った。

「いえ、何でもありません」
「そうか？ならいいが・・・お前はすぐに無理をする所があるからな。俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」
「ありがとう、ございます」

優しく笑うその顔が、慈愛が籠るその声が、もうすぐこの世から消えてしまう。
私には何も出来ない。異能力で最期を見ることは出来てもそれを変える術を持たない。今まで何度試みても全て無駄だった。私は、無力だ。

「・・・ごめんなさい」

聞こえないくらいの声で小さく呟く。
いつか告げられたら、と夢見たこの仄かな恋心は、貴方に届けることも無く儚く散った。