揃いも揃って愛を夢見る
今日は僕の誕生日と言われる日。でもそれを知るのはポートマフィアで森さんくらいなものだ。だからと言って自分からこの日が誕生日だなんて主張する事でもないし、したくもないから知られていなくても構わないけれど。
でも1人だけ。どうしても先輩には「おめでとう」の一言だって良いから言って欲しくてさっきから先輩の視界に入るように態と目の前をウロウロとしてしまっていた。
"ね、先輩。今日は僕の誕生日なんだ"
"勿論、祝ってくれるよね?
"
いつもの僕ならそんな調子で簡単に言ってしまえるのに、今日は何故か言葉が喉に詰まって出ては来なくてそれが悔しくて唇を噛み締める。
余りにも不合理で莫迦らしいことをしている自分に呆れ返り溜息を吐く。もういい、止めよう。不毛すぎる。
そう諦めて踵を返した時、
「太宰、待って」
背後から先輩に呼ばれる声がして足が止まる。
「声も掛けずに立ち去るなんて随分冷たいのね」
ゆっくりと振り返って見えた先輩は顔に苦笑を浮かべていた。気付いてたんだ、僕が居ることに。
「先輩だって、僕に目もくれなかったじゃない」
「だって、私の反応を窺ってる姿がなんだか可愛かったんだもの」
「またそうやって僕を子供扱いする」
「だって子供じゃない」
クスクスと笑う顔が面白くなくて顔を背けた僕の目の前に小さな箱が差し出された。
「誕生日おめでとう、太宰。これプレゼントよ」
「・・・知ってたの?なんで、」
「首領が教えてくださったの。貴方のことだから自分で言ってくると思ったのに今日まで何も無かったのは意外だったわ」
そう言ってもう1度はい、と差し出された小箱を固い動きで受け取る。シンプルな包装が施されたその小箱を今すぐ開けたい衝動に駆られたけれど、先輩がくれた物だからもう少しだけこのまま保存しておきたい気持ちにもなった。
小箱に向けていた視線を先輩に戻すとニコニコと楽しそうに笑っていて、そういう所が本当に狡い人だと思う。
「先輩、」
「なぁに?」
「その、ありがとう。・・・嬉しい」
チラチラと顔を見ながら言えば、先輩は驚いたように目を見開いた。
「どうしたの?」
「・・・太宰が、珍しく素直で驚いたのよ」
そう言って嬉しそうに微笑みながら先輩は僕の頭に手を乗せてそのまま優しい手つきで撫で始めた。いつもなら「子供扱いしないで」と払い除けるその手を、今日くらいは堪能しようと思った。
でも1人だけ。どうしても先輩には「おめでとう」の一言だって良いから言って欲しくてさっきから先輩の視界に入るように態と目の前をウロウロとしてしまっていた。
"ね、先輩。今日は僕の誕生日なんだ"
"勿論、祝ってくれるよね?
"
いつもの僕ならそんな調子で簡単に言ってしまえるのに、今日は何故か言葉が喉に詰まって出ては来なくてそれが悔しくて唇を噛み締める。
余りにも不合理で莫迦らしいことをしている自分に呆れ返り溜息を吐く。もういい、止めよう。不毛すぎる。
そう諦めて踵を返した時、
「太宰、待って」
背後から先輩に呼ばれる声がして足が止まる。
「声も掛けずに立ち去るなんて随分冷たいのね」
ゆっくりと振り返って見えた先輩は顔に苦笑を浮かべていた。気付いてたんだ、僕が居ることに。
「先輩だって、僕に目もくれなかったじゃない」
「だって、私の反応を窺ってる姿がなんだか可愛かったんだもの」
「またそうやって僕を子供扱いする」
「だって子供じゃない」
クスクスと笑う顔が面白くなくて顔を背けた僕の目の前に小さな箱が差し出された。
「誕生日おめでとう、太宰。これプレゼントよ」
「・・・知ってたの?なんで、」
「首領が教えてくださったの。貴方のことだから自分で言ってくると思ったのに今日まで何も無かったのは意外だったわ」
そう言ってもう1度はい、と差し出された小箱を固い動きで受け取る。シンプルな包装が施されたその小箱を今すぐ開けたい衝動に駆られたけれど、先輩がくれた物だからもう少しだけこのまま保存しておきたい気持ちにもなった。
小箱に向けていた視線を先輩に戻すとニコニコと楽しそうに笑っていて、そういう所が本当に狡い人だと思う。
「先輩、」
「なぁに?」
「その、ありがとう。・・・嬉しい」
チラチラと顔を見ながら言えば、先輩は驚いたように目を見開いた。
「どうしたの?」
「・・・太宰が、珍しく素直で驚いたのよ」
そう言って嬉しそうに微笑みながら先輩は僕の頭に手を乗せてそのまま優しい手つきで撫で始めた。いつもなら「子供扱いしないで」と払い除けるその手を、今日くらいは堪能しようと思った。