揃いも揃って愛を夢見る
「なぁ、アンタ明日空いてるか?」
「明日?えぇ。空いているけれど」
「なら、少し俺に付き合ってくれねぇか?帽子とか服を見に行きたいんだが、良い店知らねぇし」
「えぇ、いいわよ」
「助かる。じゃあ明日部屋まで迎えに行くから」
「わざわざ迎えになんて来なくても大丈夫よ?どこかで待ち合わせしたほうが・・・」
「いや、俺の買い物に付き合ってもらうんだ。それくらいして当然だろ」
「あら。ふふ、じゃあお言葉に甘えておくわ。また明日ね」
******
「気に入る物が見つかって良かったわね」
「あぁ。アンタのお陰だ。良い店を教えてくれてありがとな」
「どういたしまして。中也の力になれて嬉しいわ」
「あれ、先輩・・・?」
「あら、太宰」
「ゲッ・・・よりによって手前に会うとは...」
「うわ、中也。なんで君が先輩と一緒にいるのさ」
「俺が誰といようと手前には関係ねぇだろ」
「あるね!まして先輩が相手なら尚更だ。先輩を独り占めなんていい度胸してるじゃないか」
「ただ買い物に付き合って貰っただけだ。服なんかを買い足す為のな」
「なにそれ。まるでデートでもしているかの様じゃないか!中也のクセに、身の程は弁えたら?」
「あぁ!?ふざけんな!・・・デートなんて、コイツに失礼だろうが」
「あら、私はデートだと思っていたけれど?」
「「はぁ!?」」
「アンタ、何言って・・・!」
「年頃の男女が2人で出掛けることをデート以外になんて呼ぶのかしら?」
「〜〜!でも、先輩!相手は中也だよ?こんなお子様と先輩がデートなんて・・・!!」
「随分な物言いね、太宰。私が中也と出掛けたいと思ったから出掛けた。それの何が悪いというの?」
「悪くは、ないけど・・・」
「それに、今日は中也が勇気を出して誘ってくれたのよ?悪態をついて邪魔するなんて野暮じゃないかしら?太宰」
「あーもう・・・分かったよ。先輩に免じて今回は引いてあげる」
「えぇ。いい子ね」
「でもっ、次は僕とデートしてよ。中也が良くて僕が駄目なわけないよね?」
「ふふ、そうねぇ。そんな拗ねた子供みたいな言い方じゃなくて、男らしくスマートに誘ってくれたら私も行く気になるかもしれないわよ?」
「僕ならそれくらい簡単だよ。中也なんかよりずっと楽しいデートにしてあげるから、楽しみにしててよね」
「えぇ、もちろん。楽しみにしているわ」
「じゃあ癪だけど今回は中也に譲ってあげる。あ、言っておくけど先輩に変な真似したら許さないから」
「はぁ!?するわけねぇだろ!!変なこと言ってんじゃねぇ!」
「ふふ、またね、太宰」
「・・・悪かったな」
「どうして中也が謝るの?」
「アンタに気を遣わせた。デートなんて、そんなモンじゃねぇのに」
「あら、もしかして中也は私が太宰をあしらう為にそう言ったと思ってる?」
「・・・それ以外ねぇだろ」
「莫迦ね」
「あぁ!?」
「太宰を帰らせる方法なんて他にいくらでもあったわ。わざわざデートなんて嘘つかなくてもね」
「じゃあ、なんであんなこと」
「決まってるじゃない。本気で思ってたからよ」
「!」
「嬉しかったのよ?中也が私を誘ってくれたこと。私は今日を凄く楽しみにしていたのに、中也は違ったのかしら?」
「・・・んなことねぇよ。俺だって、アンタと出掛けたいと思ったから誘ったんだ。買い物なんて口実使ってな」
「ふふ、良かった。私の独りよがりかと思って不安になってしまったわ」
「そんなの、お互い様だ・・・」
「中也?」
「なんでもねぇよ!それよりほら、今日はデートなんだろ?今からでも俺にエスコートさせてくれよ」
「ふふ、マセちゃって。えぇ、お願いするわ。カッコよくお願いね?」
「任せろ。最高のデートにしてやるよ」
*****
「なぁ、これやるよ」
「なぁに?これ」
「いいから、空けてみろよ」
「えぇ。・・・これは、ペンダント?」
「あぁ。今日付き合ってくれた礼だ。大したものじゃなくて悪いが」
「そんなの良かったのに。でも凄く綺麗ね。月がモチーフかしら」
「似合うと思ったんだ。アンタは俺にとって月みたいだからな」
「私が?」
「あぁ。いつだって優しく微笑んで見守ってくれてるだろ?たまに鬱陶しくなるくらいにな」
「ふふ、それは褒めすぎじゃない?」
「んなことねぇよ。・・・そんなアンタが、俺は好きなんだ」
「・・・え?」
「もし気に入ってくれたなら付けてくれると嬉しい」
「え、えぇ。それはもちろん。ありがとう、大事にするわ」
「そいつは良かった」
「・・・さっきの、無自覚かしら」
「ん?なんか言ったか?」
「・・・中也のそういうところ、ズルいと思うわ」
「?」