炭治郎は優しい。だからどんなに私を好きだと思ってくれていてもその優しさを私だけには向けてくれないのだろう。でもそれがきっと正しいことだし、私もそんな炭治郎だから好きになったということは痛い程理解している。

今こうして一緒の布団に入り眠っている炭治郎の寝顔はまだあどけなくて可愛いらしい。けれどそんな顔とは正反対に繋がれた手はマメや傷だらけで、彼が今までどれだけの痛みを抱えてきたのか、そして努力してきたのかを示していてなんだか無性に泣き出したくなる。

私はそんな炭治郎の隣に相応しい人間であれているのだろうか。何度もそんな感情に支配され、本人に尋ねたこともあるけれど毎回「当たり前だろ」と優しく笑って抱き締めてくれるのだ。

優しい貴方の重荷にはなりたくない。それでもその心の近くにいつも私を置いていて欲しい。矛盾しきったこの感情はきっと彼の隣にいる限り消えはせず、ずっと抱えながら生きていくのだろうな、と覚悟は決めている。

朝日が昇りその光が襖から徐々に差し込み暗い部屋を照らし始める。今日は任務だと言っていたからもう少ししたら炭治郎は起きなければいけない。私も笑顔で送り出してあげないと。

私が居ない日には炭治郎はきっと起きて最初に妹である禰豆子ちゃんに挨拶をして身支度を整えるのだろう。傍にある事が多いのだなら仕方ないことだけれどやっぱり少しだけ羨ましい。
だからごめんね、禰豆子ちゃん。今日は許してね。

朝日に照らされたからか炭治郎の瞼が揺れ、赤みがかった瞳と目が合う。

「おはよう、炭治郎」

貴方と1番最初におはようを交わす、今日だけはそんな特権を私にください。