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*レムナン恋愛イベント後のループ軸。
*繰り返すループに疲れ気味主
********
もう何度経験したか分からない議論の時間。メインコンソールに入った私は軽く目を閉じ、まだ幸せな余韻に浸ったままの頭を切り替える。今回の私の役割は乗員。その事実に内心ホッとした自分がいた。もし私がグノーシアだったらこの手でレムナンを消さなければいけなくなったかもしれないから。勿論、繰り返すループの中で何度もグノーシアとしてレムナンを消して来たけれど、前回のループでのことを考えるとまたそうするには少しだけ時間が欲しかった。終わりのないループに心が擦り切れながらも共有者であるセツ以外にそう思えたことに僅かな救いも感じていたのかもしれない。
「まがい物を割り出して処分すれば良いンだろう?はっ、馬鹿馬鹿しいほど簡単だね。とっとと始めようじゃないか」
もう聞き飽きたラキオの台詞がメインコンソール内に響き緊迫とした雰囲気が流れる。今回の乗員数は13人。グノーシア3人、バグ以外の役職有りの状況らしい。何の役職も無い乗員である私は役職騙りをする乗員達の真偽や言葉の裏を見定めなければいけない不利な状況に置かれている。
周囲を見渡した時、オドオドと怯えた顔をしたレムナンが目に入る。レムナンの役職はなんだろうか。今まで経験してきたループ通りエンジニア騙りや留守番の名乗り出等が続く議論の最中、私の視線に気付いたのか顔を上げたレムナンはゆっくりと口を開いた。
「ヨミさん・・・・です。僕が、変だな、と思うのは」
「・・・・・・・え?」
一斉に全員の視線が私に向き背中に嫌な汗が流れる。なんで、どうして?そんな言葉がグルグルと頭を巡る。あぁ、どうしよう、反論する?レムナンの方が怪しいって。それとも悲しんで見せて同情を誘ってみる?いや駄目だ。何かアクションを取るには余りにもタイミングが遅すぎた。現にレムナンの言葉に同調する乗員も出てきている。冷や汗を流して何も言えない私を乗員の中に潜んでいるグノーシアがしめたと笑っているのだろう。いくら発言の影響力の低いレムナンの言葉だと言っても私がこんな反応を示したら不審がられるのも当然だ。
「ヨミ?」
私がこんな反応をしたのが初めてだったからだろう。隣に立っているセツが心配してか名前を呼んだ。その声にハッとするも既に私への疑念は蔓延してしまったようで視線が痛い。でもその周りの視線よりもレムナンに疑われた事実の方がずっと痛かった。ループの記憶の無いレムナンからしてみれば私を疑っても何ら不思議ではないのだけど、前のループがループだっただけに心が抉られた。
1度想いを通わせられた人物からの疑いの言葉と視線に無性に泣き出したい気分になり俯くと、それが図らずも疑われたことを悲しんでいるようにとってくれたようで、数人の乗員が私を庇う発言をしてくれた。
そのお陰かこの日の議論で私がコールドスリープされることは無かった。とは言ってもやはり完全に疑いが晴れた訳では無く私にも数票入れられていた。その中には当然、レムナンからの1票もあった。
その結果を俯瞰で見て終わったな、と思った。遅かれ早かれ私はコールドスリープされる。1度深く刻まれてしまった疑念は簡単には拭えない。これで次の議論の時にエンジニアに扮したグノーシアが調べた結果私がグノーシアだったと報告したものならその疑念は更に深まる。同じように本物のエンジニアも私を調べて乗員と判定してくれれば少しは状況も好転する可能性はあるけれどあまり期待は出来ないだろう。本物のエンジニアが偽物に負けることだって大いに有り得るのだから。
覚束無い足取りでメインコンソールを出て自室へと向かう。いつものループならこのタイミングで特記事項を集める為に他の乗員に会いに行ったりしていたけれど今日はとてもそんなことをする気分にはなれなかった。
********
自室に入り倒れ込むようにベッドに横になる。まだ1日目なのにどっと疲れてしまった。体が鉛のように重く苦しい。頭に過ぎるのは先程のレムナンの姿。散々聞き慣れた筈の自分への疑いの台詞にここまでダメージを負うなんて思わなかった。あんな言葉1つなのに。胸に渦巻くモヤのような物を吐き出したくてふぅーと深く息を吐く。
レムナンはグノーシアなのだろうか?それとも単にこのループでは私のことを嫌っているから疑いを向けた?どちらにせよ今日はまだ1日目。情報の少ない今の段階では判断が出来ない。
もしグノーシアだったら仲間達と協力して私をコールドスリープに追い込むかもしれない。今日の議論で私への疑念の種はもう蒔かれているのだからそう難しいことではないし。
それならそれでいいか、と思った。こんなにも乱れた心ではどうせ最後まで残ることは難しいのだ。
*******
投げやりになったことが吉と出たのかは分からないけれど、それから数日間私がコールドスリープされることもグノーシアに消されることも無かった。日毎に減っていく乗員達と過去の投票や議論での発言を振り返って分かったことは、レムナンはやはりグノーシアの可能性が高いということ。私以外の乗員もそう思ったようで自然とレムナンを疑う発言をするようになっていた。まだこの中にグノーシアの仲間がいるのかもしれないけれど、この状況で態々自分の身を危険に晒す真似はしないだろうから、このまま進めば今日のコールドスリープはレムナンに決まるのだろう。
・・・そして私はつくづく、自分は弱いのだと思い知る。
気付いた時にはレムナンを庇う発言をしていた。それによりレムナンが疑われたことで晴れかけていた私への疑いがまた蔓延する。最初よりも更に強く。こんなことをしたところでレムナンの疑いは晴れないし寧ろ強めてしまう可能性の方がずっと高いのに。乗員でありながらグノーシアを庇うなんてまるでAC主義者みたいだと自嘲の笑みが零れた。本当に何をしてるんだろう、馬鹿だな私は。
レムナンはというと信じられないと言うように目を大きく見開いて私を見つめていた。その体は少し震えているように見える。案の定と言うべきか、私のレムナンを庇う発言に異を唱える声が相次ぐ。ごめんねレムナン。やっぱり私には貴方を救えなかったみたい。
───そうして私のコールドスリープが決まった。
******
コールドスリープ室へ向かう足取りは不思議と軽かった。終わりに出来るという安心感があったからかもしれない。そして意外にも私のコールドスリープを見送りに来たのはレムナンだった。
「どうして・・・ですか?」
この問いかけをされるのは2度目だ。と言ってもそれは前のループでのことだからレムナンにとってはこれが初めてなのだけど。
「ヨミさんだって・・・僕がグノーシアだと思ってた筈なのに・・・どうして僕を、庇ったりなんて・・・それに、こんなことしたって、意味がないんです・・・!明日には・・・僕達の勝ちが決まる。貴方が僕を庇わなければ、ヨミさん達乗員が、勝てたかもしれなかった、のに・・・」
あぁ、なんだ。他にもグノーシアが残っていたんだ。乗員である私がコールドスリープされ、夜にグノーシアが乗員を消せばグノーシアの人数が上回り勝利。それがこのループが辿る結末かな。
それにしても驚いた。今までのループで見てきたグノーシアのレムナンは勝った時に私に謝るように強要してくるくらい強気になっていたのに、今目の前にいるレムナンは悲痛な面持ちでいつも以上にオドオドして見える。少し震えてもいるみたい。
「どうして、僕なんかを・・・」
「・・・レムナンが、好きだからだよ」
零れ出た2度目の告白。だってやっぱり庇った理由なんてそれしか思いつかなかった。何も知らない今のレムナンには到底理解して貰えないだろうけど。
「やめてください!どうして・・・どうしてこの状況でそんなことが言えるんですか・・・!」
この返事も2度目。拒絶されて傷付いたあの時とはまるで状況が違うけれど。
「・・・ごめんね」
何に対する謝罪なのか自分でも分からない。プシューと空気の抜けるような音がしてコールドスリープする為のポットが開き、私はポットに入りやすいように上着を1枚脱ぐ。
「・・・っ・・・ヨミ、さん・・・」
「来てくれてありがとうね、レムナン。ほら、転移の時間も近いしもう行かないと」
レムナンはそれでも動かない。ただ顔を悲しそうに歪めているだけ。そんな顔は見たくなかったなぁ。
「・・・おやすみ、レムナン」
レムナンからの返事は無かった。それでも最後のその瞬間、このループで初めてレムナンと目が合った。困惑と恐れが入り交じったようなその瞳に私はただ微笑みかけた。
********
暗く静かなポットの中。コールドスリープが始まるのを待つ。これだって何度目か分からないくらい経験しているからコールドスリープされることへの恐怖は無い。
ただ胸だけがズキズキと痛む。緊張が解けたのか今になって零れた涙が頬に流れて熱い。その涙がヒヤリと冷たく感じたことでコールドスリープが始まったことが分かった。
丁度いい。レムナンへのこの想いもここに一緒に凍らせてしまおう。もう2度とこんなことにはならないように。私はセツと一緒にこのループを終わらせる。私の理解者も共有者もセツだ。レムナンじゃない。
私の知らないナニカに怯えて1人苦しんでいたレムナンを救いたかった。その為だけに本来の目的とは別の理由で乗員をコールドスリープに追い込んだりもした。それでも手に入れたのは特記事項だけ。レムナンの記憶には何も残らない。想いが募れば募るほど苦しくて堪らなかった。
でもそれも此処で終わり。ギュッと強く閉じた瞼の裏に浮かんだのはレムナンの無邪気な笑顔。そう、私の記憶に残すのはそれだけで十分だ。
*繰り返すループに疲れ気味主
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もう何度経験したか分からない議論の時間。メインコンソールに入った私は軽く目を閉じ、まだ幸せな余韻に浸ったままの頭を切り替える。今回の私の役割は乗員。その事実に内心ホッとした自分がいた。もし私がグノーシアだったらこの手でレムナンを消さなければいけなくなったかもしれないから。勿論、繰り返すループの中で何度もグノーシアとしてレムナンを消して来たけれど、前回のループでのことを考えるとまたそうするには少しだけ時間が欲しかった。終わりのないループに心が擦り切れながらも共有者であるセツ以外にそう思えたことに僅かな救いも感じていたのかもしれない。
「まがい物を割り出して処分すれば良いンだろう?はっ、馬鹿馬鹿しいほど簡単だね。とっとと始めようじゃないか」
もう聞き飽きたラキオの台詞がメインコンソール内に響き緊迫とした雰囲気が流れる。今回の乗員数は13人。グノーシア3人、バグ以外の役職有りの状況らしい。何の役職も無い乗員である私は役職騙りをする乗員達の真偽や言葉の裏を見定めなければいけない不利な状況に置かれている。
周囲を見渡した時、オドオドと怯えた顔をしたレムナンが目に入る。レムナンの役職はなんだろうか。今まで経験してきたループ通りエンジニア騙りや留守番の名乗り出等が続く議論の最中、私の視線に気付いたのか顔を上げたレムナンはゆっくりと口を開いた。
「ヨミさん・・・・です。僕が、変だな、と思うのは」
「・・・・・・・え?」
一斉に全員の視線が私に向き背中に嫌な汗が流れる。なんで、どうして?そんな言葉がグルグルと頭を巡る。あぁ、どうしよう、反論する?レムナンの方が怪しいって。それとも悲しんで見せて同情を誘ってみる?いや駄目だ。何かアクションを取るには余りにもタイミングが遅すぎた。現にレムナンの言葉に同調する乗員も出てきている。冷や汗を流して何も言えない私を乗員の中に潜んでいるグノーシアがしめたと笑っているのだろう。いくら発言の影響力の低いレムナンの言葉だと言っても私がこんな反応を示したら不審がられるのも当然だ。
「ヨミ?」
私がこんな反応をしたのが初めてだったからだろう。隣に立っているセツが心配してか名前を呼んだ。その声にハッとするも既に私への疑念は蔓延してしまったようで視線が痛い。でもその周りの視線よりもレムナンに疑われた事実の方がずっと痛かった。ループの記憶の無いレムナンからしてみれば私を疑っても何ら不思議ではないのだけど、前のループがループだっただけに心が抉られた。
1度想いを通わせられた人物からの疑いの言葉と視線に無性に泣き出したい気分になり俯くと、それが図らずも疑われたことを悲しんでいるようにとってくれたようで、数人の乗員が私を庇う発言をしてくれた。
そのお陰かこの日の議論で私がコールドスリープされることは無かった。とは言ってもやはり完全に疑いが晴れた訳では無く私にも数票入れられていた。その中には当然、レムナンからの1票もあった。
その結果を俯瞰で見て終わったな、と思った。遅かれ早かれ私はコールドスリープされる。1度深く刻まれてしまった疑念は簡単には拭えない。これで次の議論の時にエンジニアに扮したグノーシアが調べた結果私がグノーシアだったと報告したものならその疑念は更に深まる。同じように本物のエンジニアも私を調べて乗員と判定してくれれば少しは状況も好転する可能性はあるけれどあまり期待は出来ないだろう。本物のエンジニアが偽物に負けることだって大いに有り得るのだから。
覚束無い足取りでメインコンソールを出て自室へと向かう。いつものループならこのタイミングで特記事項を集める為に他の乗員に会いに行ったりしていたけれど今日はとてもそんなことをする気分にはなれなかった。
********
自室に入り倒れ込むようにベッドに横になる。まだ1日目なのにどっと疲れてしまった。体が鉛のように重く苦しい。頭に過ぎるのは先程のレムナンの姿。散々聞き慣れた筈の自分への疑いの台詞にここまでダメージを負うなんて思わなかった。あんな言葉1つなのに。胸に渦巻くモヤのような物を吐き出したくてふぅーと深く息を吐く。
レムナンはグノーシアなのだろうか?それとも単にこのループでは私のことを嫌っているから疑いを向けた?どちらにせよ今日はまだ1日目。情報の少ない今の段階では判断が出来ない。
もしグノーシアだったら仲間達と協力して私をコールドスリープに追い込むかもしれない。今日の議論で私への疑念の種はもう蒔かれているのだからそう難しいことではないし。
それならそれでいいか、と思った。こんなにも乱れた心ではどうせ最後まで残ることは難しいのだ。
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投げやりになったことが吉と出たのかは分からないけれど、それから数日間私がコールドスリープされることもグノーシアに消されることも無かった。日毎に減っていく乗員達と過去の投票や議論での発言を振り返って分かったことは、レムナンはやはりグノーシアの可能性が高いということ。私以外の乗員もそう思ったようで自然とレムナンを疑う発言をするようになっていた。まだこの中にグノーシアの仲間がいるのかもしれないけれど、この状況で態々自分の身を危険に晒す真似はしないだろうから、このまま進めば今日のコールドスリープはレムナンに決まるのだろう。
・・・そして私はつくづく、自分は弱いのだと思い知る。
気付いた時にはレムナンを庇う発言をしていた。それによりレムナンが疑われたことで晴れかけていた私への疑いがまた蔓延する。最初よりも更に強く。こんなことをしたところでレムナンの疑いは晴れないし寧ろ強めてしまう可能性の方がずっと高いのに。乗員でありながらグノーシアを庇うなんてまるでAC主義者みたいだと自嘲の笑みが零れた。本当に何をしてるんだろう、馬鹿だな私は。
レムナンはというと信じられないと言うように目を大きく見開いて私を見つめていた。その体は少し震えているように見える。案の定と言うべきか、私のレムナンを庇う発言に異を唱える声が相次ぐ。ごめんねレムナン。やっぱり私には貴方を救えなかったみたい。
───そうして私のコールドスリープが決まった。
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コールドスリープ室へ向かう足取りは不思議と軽かった。終わりに出来るという安心感があったからかもしれない。そして意外にも私のコールドスリープを見送りに来たのはレムナンだった。
「どうして・・・ですか?」
この問いかけをされるのは2度目だ。と言ってもそれは前のループでのことだからレムナンにとってはこれが初めてなのだけど。
「ヨミさんだって・・・僕がグノーシアだと思ってた筈なのに・・・どうして僕を、庇ったりなんて・・・それに、こんなことしたって、意味がないんです・・・!明日には・・・僕達の勝ちが決まる。貴方が僕を庇わなければ、ヨミさん達乗員が、勝てたかもしれなかった、のに・・・」
あぁ、なんだ。他にもグノーシアが残っていたんだ。乗員である私がコールドスリープされ、夜にグノーシアが乗員を消せばグノーシアの人数が上回り勝利。それがこのループが辿る結末かな。
それにしても驚いた。今までのループで見てきたグノーシアのレムナンは勝った時に私に謝るように強要してくるくらい強気になっていたのに、今目の前にいるレムナンは悲痛な面持ちでいつも以上にオドオドして見える。少し震えてもいるみたい。
「どうして、僕なんかを・・・」
「・・・レムナンが、好きだからだよ」
零れ出た2度目の告白。だってやっぱり庇った理由なんてそれしか思いつかなかった。何も知らない今のレムナンには到底理解して貰えないだろうけど。
「やめてください!どうして・・・どうしてこの状況でそんなことが言えるんですか・・・!」
この返事も2度目。拒絶されて傷付いたあの時とはまるで状況が違うけれど。
「・・・ごめんね」
何に対する謝罪なのか自分でも分からない。プシューと空気の抜けるような音がしてコールドスリープする為のポットが開き、私はポットに入りやすいように上着を1枚脱ぐ。
「・・・っ・・・ヨミ、さん・・・」
「来てくれてありがとうね、レムナン。ほら、転移の時間も近いしもう行かないと」
レムナンはそれでも動かない。ただ顔を悲しそうに歪めているだけ。そんな顔は見たくなかったなぁ。
「・・・おやすみ、レムナン」
レムナンからの返事は無かった。それでも最後のその瞬間、このループで初めてレムナンと目が合った。困惑と恐れが入り交じったようなその瞳に私はただ微笑みかけた。
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暗く静かなポットの中。コールドスリープが始まるのを待つ。これだって何度目か分からないくらい経験しているからコールドスリープされることへの恐怖は無い。
ただ胸だけがズキズキと痛む。緊張が解けたのか今になって零れた涙が頬に流れて熱い。その涙がヒヤリと冷たく感じたことでコールドスリープが始まったことが分かった。
丁度いい。レムナンへのこの想いもここに一緒に凍らせてしまおう。もう2度とこんなことにはならないように。私はセツと一緒にこのループを終わらせる。私の理解者も共有者もセツだ。レムナンじゃない。
私の知らないナニカに怯えて1人苦しんでいたレムナンを救いたかった。その為だけに本来の目的とは別の理由で乗員をコールドスリープに追い込んだりもした。それでも手に入れたのは特記事項だけ。レムナンの記憶には何も残らない。想いが募れば募るほど苦しくて堪らなかった。
でもそれも此処で終わり。ギュッと強く閉じた瞼の裏に浮かんだのはレムナンの無邪気な笑顔。そう、私の記憶に残すのはそれだけで十分だ。
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