呪術短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
制限時間2分前。ドクドクと煩い心臓に比例して荒くなる息を両手を口に当てて必死に抑える。幸い足音は聞こえない。
今私が居る場所は高専内に用意されている五条さんの個人部屋。学生達の使う寮とはまた別の場所に用意されている一室だ。普通ならあまりこんなことは有り得ないのだが行き来するのが面倒だとか言った五条さんの我儘から罷り通った事象だ。言い出した時は本当にあの人は厄介な人だと呆れたのを覚えている。そしてその部屋の隅に足を抱きかかえながらただ刻々と時間が過ぎるのを待っている。一考すればすぐに見つかってしまいそうに思われる隠れ場所だが"灯台下暗し"という諺にもある通り盲点になり得る場所だと考えた。まさか五条さんもすぐに見つかる確率の高い自分の部屋に隠れているとは考えないだろう。それに"高専から出てもいい"という条件を提示されているのだから高専から出ていると考えるのが定石だ。高専の外は山に覆われている為に特殊な物、もしくは何らかの術式を使用しない限り見つけるのは困難に近い。きっと今頃血眼になって見つかる筈の無い高専外を探しているに違いない。それを裏付けるように始まってしばらくは聞こえていた私を呼ぶ声や足音が10分を過ぎた辺りから聞こえなくなっているのだ。
左手首に付けている腕時計を確認する。残り時間1分前。周囲に気配は無い。大丈夫逃げ切れる。もう解放される。期待と緊張で心臓が壊れるんじゃないかと思うくらい早く鼓動する。
長針がもうすぐ1周する。私の勝・・・
「みーつけた!」
近距離から聞こえる筈の無い声がして一瞬息が止まった。視線を向けたままの腕時計の長針はまさに今一周し終わりゲームの終わりを告げている。声がしたのはそれよりも僅かに前。それが意味することは・・・
ギギギ・・・とまるでロボットのように首を動かし声のした方に視線を向けるとそこには信じたくなかった現実がある。思わずヒッと小さく悲鳴が出た。20分前に見たのと何ら変わりのない姿で、しかし口に浮かべている笑みは最後に見たモノよりもずっと深く不気味で。
「あっはは!凄い顔してるよお前!」
「な、んで、足音、」
記憶を思い返してみても近づいてくる気配も足音も、ドアを開ける音だってしなかった。隠れている間、物音を聞き逃さないようにずっと耳を澄ましていたのだから間違いない。それなのにこの人は此処に来ている。確かにその手でドアを開けて入ってきている。
「あぁ!もしかして何にも物音がしなかったから僕が近付いて来てたことに気付かなかったとか?バッッカだなぁ!お前に悟られずに動くくらい僕にとっては朝飯前だよ」
「・・・っ!じ、術式は使わないって言ったじゃないですかっ!」
「だから使ってないってば。単にお前の危険察知能力が弱すぎたってだけでしょ」
声を荒らげる私に呆れたように五条さんは溜息を吐く。嘘だ、私だってこれでも呪術師の端くれ。常に命の危険と隣り合わせの任務を何度も繰り返してきた。なのにそれすらもこの人の前では無意味だというのか。それ程までに圧倒的な差があるというのだろうか。
「まさかとは思うけど、本気で僕から逃げ切れると思った?術式も使わない僕相手ならたった20分くらい楽勝だって?ちょーーっと考えが甘すぎじゃない?」
またこの声だ。低く威圧的で、心臓を鷲掴みされているような嫌な感覚。
「少し期待を持たせてあげようと思って時間ギリギリまで待機してたんだよ。言っただろ?すぐに終わったらつまらない、って。ね、僕を待ってる時間はどうだった?楽しかった?ドキドキした?」
また楽しそうに口に弧を描いたままゆっくりと私に向かって歩いてくる。恐怖からか思うように動かない体に鞭を打ち逃げようと後ずさりするもすぐに壁に背がついてしまった。
「僕は最高にドキドキしたよ。見つけたらどんな顔を見せてくれるのかな、捕まえた後お前をどうしてやろうかなと思ってさ」
逃げ場を無くした私の目線に合わせて屈んだ五条さんの手が頬をなぞる。怖い、恐ろしい。
「良い顔してる。ほら、いつもみたいに生意気に言い返したら?まぁ、敗者であるお前にそんな権利無いんだけど。・・・にしても、数ある逃げ場所の選択肢の中から僕の部屋を選んでくれるとはね。少し予想外だったけど捕まえてから運ぶ手間が省けて大助かりだ。良い子だね。褒めてあげる」
「い、いやっ!離してくださいっ!やだっ!」
私の腕を掴みそのまま強く引っ張られ立ち上がらせられる。そしてそのまま部屋に備え付けられているベッドの上に放り投げられた。ベッドのスプリングが反動でギシギシと音を立てる。
投げられた衝撃に対応しきっていない私に覆い被さるようにして五条さんが上に乗ってきた。いつの間にか目隠しは外され剥き出しになった青い瞳はギラギラと不穏な色を含んでいて、そのあまりの恐怖に視界が滲む。
「え、なに、これくらいで泣いてんの?案外可愛いとこあるんだねー。いつもあんなに強気なクセに」
「わ、たしに何、するつもり、ですかっ?」
「んーそうだね・・・実は迷ってるんだよね。何からやろうかなって」
その言葉に見開いた瞳から涙がポロリと零れ落ちる。何"から"?この人は私にどれだけのことをしようとしているのだろう?
「ずっと興味があったんだよね。お前を屈服させたら一体どんな顔してくれるんだろうって。ぐちゃぐちゃに泣いて縋る顔なんて特に見てみたいな。お前の顔割と僕好みだからさぁ、きっと凄く唆ると思うんだよね」
「ば、馬鹿なことは止めてくださいっ!頭とち狂ったんですか!?そんなことが許される訳が」
「黙れよ」
「ひ、ぐっ・・・!!」
震えた体と声で絞り出した必死の訴えも首に掛けられた手によって簡単に封じ込まれてしまう。咄嗟にその手を掴み引き剥がそうと試みるも力の差が歴然すぎてビクともせず、そのままギリギリと力を込められ私の呼吸の術を奪っていく。
「ゲームする時に僕ちゃんと言ったよね?僕が勝ったら今後お前のことを好きに出来る口実を与えるってことだって。今お前を生かすのも殺すのも僕の機嫌次第ってワケ」
青い瞳が怪しく光る。この人の瞳だけは好きだった。澄んだ青空を思わせるあの色だけは。でも今の瞳は・・・。呼吸が満足に出来ない苦しみから生理的な涙がポロポロと流れ落ちていく。
「だから大人しく僕に好きにされてろよ。あぁ、でも最初は抵抗された方が良いかな。捩じ伏せる楽しさを感じたいし。あ、勿論今日だけじゃ終わらせないからね?逃げたいなら逃げても良いけどその時は僕も本気で追い掛けるからそのつもりで。理解力のあるお前なら僕の言ってること分かるよね?」
そう言って五条さんはやっている残酷な所業と残虐な台詞を感じさせない程無邪気な、まるで幼い子供みたいな顔でニコリと笑った。
「まぁ、死なないように頑張ってね」
今私が居る場所は高専内に用意されている五条さんの個人部屋。学生達の使う寮とはまた別の場所に用意されている一室だ。普通ならあまりこんなことは有り得ないのだが行き来するのが面倒だとか言った五条さんの我儘から罷り通った事象だ。言い出した時は本当にあの人は厄介な人だと呆れたのを覚えている。そしてその部屋の隅に足を抱きかかえながらただ刻々と時間が過ぎるのを待っている。一考すればすぐに見つかってしまいそうに思われる隠れ場所だが"灯台下暗し"という諺にもある通り盲点になり得る場所だと考えた。まさか五条さんもすぐに見つかる確率の高い自分の部屋に隠れているとは考えないだろう。それに"高専から出てもいい"という条件を提示されているのだから高専から出ていると考えるのが定石だ。高専の外は山に覆われている為に特殊な物、もしくは何らかの術式を使用しない限り見つけるのは困難に近い。きっと今頃血眼になって見つかる筈の無い高専外を探しているに違いない。それを裏付けるように始まってしばらくは聞こえていた私を呼ぶ声や足音が10分を過ぎた辺りから聞こえなくなっているのだ。
左手首に付けている腕時計を確認する。残り時間1分前。周囲に気配は無い。大丈夫逃げ切れる。もう解放される。期待と緊張で心臓が壊れるんじゃないかと思うくらい早く鼓動する。
長針がもうすぐ1周する。私の勝・・・
「みーつけた!」
近距離から聞こえる筈の無い声がして一瞬息が止まった。視線を向けたままの腕時計の長針はまさに今一周し終わりゲームの終わりを告げている。声がしたのはそれよりも僅かに前。それが意味することは・・・
ギギギ・・・とまるでロボットのように首を動かし声のした方に視線を向けるとそこには信じたくなかった現実がある。思わずヒッと小さく悲鳴が出た。20分前に見たのと何ら変わりのない姿で、しかし口に浮かべている笑みは最後に見たモノよりもずっと深く不気味で。
「あっはは!凄い顔してるよお前!」
「な、んで、足音、」
記憶を思い返してみても近づいてくる気配も足音も、ドアを開ける音だってしなかった。隠れている間、物音を聞き逃さないようにずっと耳を澄ましていたのだから間違いない。それなのにこの人は此処に来ている。確かにその手でドアを開けて入ってきている。
「あぁ!もしかして何にも物音がしなかったから僕が近付いて来てたことに気付かなかったとか?バッッカだなぁ!お前に悟られずに動くくらい僕にとっては朝飯前だよ」
「・・・っ!じ、術式は使わないって言ったじゃないですかっ!」
「だから使ってないってば。単にお前の危険察知能力が弱すぎたってだけでしょ」
声を荒らげる私に呆れたように五条さんは溜息を吐く。嘘だ、私だってこれでも呪術師の端くれ。常に命の危険と隣り合わせの任務を何度も繰り返してきた。なのにそれすらもこの人の前では無意味だというのか。それ程までに圧倒的な差があるというのだろうか。
「まさかとは思うけど、本気で僕から逃げ切れると思った?術式も使わない僕相手ならたった20分くらい楽勝だって?ちょーーっと考えが甘すぎじゃない?」
またこの声だ。低く威圧的で、心臓を鷲掴みされているような嫌な感覚。
「少し期待を持たせてあげようと思って時間ギリギリまで待機してたんだよ。言っただろ?すぐに終わったらつまらない、って。ね、僕を待ってる時間はどうだった?楽しかった?ドキドキした?」
また楽しそうに口に弧を描いたままゆっくりと私に向かって歩いてくる。恐怖からか思うように動かない体に鞭を打ち逃げようと後ずさりするもすぐに壁に背がついてしまった。
「僕は最高にドキドキしたよ。見つけたらどんな顔を見せてくれるのかな、捕まえた後お前をどうしてやろうかなと思ってさ」
逃げ場を無くした私の目線に合わせて屈んだ五条さんの手が頬をなぞる。怖い、恐ろしい。
「良い顔してる。ほら、いつもみたいに生意気に言い返したら?まぁ、敗者であるお前にそんな権利無いんだけど。・・・にしても、数ある逃げ場所の選択肢の中から僕の部屋を選んでくれるとはね。少し予想外だったけど捕まえてから運ぶ手間が省けて大助かりだ。良い子だね。褒めてあげる」
「い、いやっ!離してくださいっ!やだっ!」
私の腕を掴みそのまま強く引っ張られ立ち上がらせられる。そしてそのまま部屋に備え付けられているベッドの上に放り投げられた。ベッドのスプリングが反動でギシギシと音を立てる。
投げられた衝撃に対応しきっていない私に覆い被さるようにして五条さんが上に乗ってきた。いつの間にか目隠しは外され剥き出しになった青い瞳はギラギラと不穏な色を含んでいて、そのあまりの恐怖に視界が滲む。
「え、なに、これくらいで泣いてんの?案外可愛いとこあるんだねー。いつもあんなに強気なクセに」
「わ、たしに何、するつもり、ですかっ?」
「んーそうだね・・・実は迷ってるんだよね。何からやろうかなって」
その言葉に見開いた瞳から涙がポロリと零れ落ちる。何"から"?この人は私にどれだけのことをしようとしているのだろう?
「ずっと興味があったんだよね。お前を屈服させたら一体どんな顔してくれるんだろうって。ぐちゃぐちゃに泣いて縋る顔なんて特に見てみたいな。お前の顔割と僕好みだからさぁ、きっと凄く唆ると思うんだよね」
「ば、馬鹿なことは止めてくださいっ!頭とち狂ったんですか!?そんなことが許される訳が」
「黙れよ」
「ひ、ぐっ・・・!!」
震えた体と声で絞り出した必死の訴えも首に掛けられた手によって簡単に封じ込まれてしまう。咄嗟にその手を掴み引き剥がそうと試みるも力の差が歴然すぎてビクともせず、そのままギリギリと力を込められ私の呼吸の術を奪っていく。
「ゲームする時に僕ちゃんと言ったよね?僕が勝ったら今後お前のことを好きに出来る口実を与えるってことだって。今お前を生かすのも殺すのも僕の機嫌次第ってワケ」
青い瞳が怪しく光る。この人の瞳だけは好きだった。澄んだ青空を思わせるあの色だけは。でも今の瞳は・・・。呼吸が満足に出来ない苦しみから生理的な涙がポロポロと流れ落ちていく。
「だから大人しく僕に好きにされてろよ。あぁ、でも最初は抵抗された方が良いかな。捩じ伏せる楽しさを感じたいし。あ、勿論今日だけじゃ終わらせないからね?逃げたいなら逃げても良いけどその時は僕も本気で追い掛けるからそのつもりで。理解力のあるお前なら僕の言ってること分かるよね?」
そう言って五条さんはやっている残酷な所業と残虐な台詞を感じさせない程無邪気な、まるで幼い子供みたいな顔でニコリと笑った。
「まぁ、死なないように頑張ってね」