呪術短編
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夏油は彼女の声が好きだった。穏やかな鳥の囀りや美しい音色を彷彿とさせる心地よいその声が。恋人としての贔屓目も勿論あるのだろうが、その声に呼ばれる度に自然と心が浮き足立つのを感じていた。
「傑」
「もう1回。今度は少し声を高くして」
「傑」
「うん。じゃあ同じように次は好きだよって言って」
「え〜それは恥ずかしいよ」
「・・・駄目かい?」
「も〜仕方ないなぁ。・・・好きだよ」
「ありがとう」
カチッとボイスレコーダーのスイッチを押す音が部屋に響く。夏油はそのボイスレコーダーを耳に当てながら再生ボタンを押し、先程録音した彼女の声を確認する。
「・・・うん、いいかな」
「終わり?」
「うん、終わりだよ。ありがとう」
「突然声を録音させて欲しいなんて言うからびっくりしたよ。どうするの?それ」
「こうしておけばいつでも何処にいても聞きたい時に君の声が聞けると思ってね」
「う、嬉しいけどそれなら電話した方が良くない?そうすれば私も傑の声聞けるし」
「それはもうこれからは意味を成さないよ」
「意味を成さない?どうして?」
「・・・知りたい?」
薄く笑った夏油が彼女の肩をトン、と少し強めに押すと力を抜いていた彼女は勢いに押されすんなりと後方に倒れた。そんな彼女の上にすぐさま夏油が覆い被さる。夏油の左手は彼女の顔の横に置かれ、右手は彼女の喉元に当てられた。
「傑?」
「知ってる?首の中央辺り、所謂喉仏がある所に強い外傷を受けると一時的ではあるけれど声が枯れたりするそうでね。君だと・・・この辺りかな」
グッと喉に触れている夏油の親指が押し込められると違和感と息苦しさに彼女の顔が歪んだ。
「く、るしいよ傑、」
「あぁ、ごめんね。なるべく君が痛くないようにしてあげたいんだけどやっぱり難しいかな」
「さ、っきから何の話してるの?意味が分からないよ!」
先程まで普通に話していた夏油の突然の奇行と不可思議な言動に彼女は戸惑いの声を上げた。喉を撫でる手つきは優しいのに目付きはギラギラと不穏な色を映しているものだから不気味で仕方がない。体を起こそうと力を入れてみたものの夏油との体格差は歴然でビクともせず押し返されてしまった。
「難しかったかな?簡単に言うと君の喉を潰そうとしているのだけど」
「な、にそれ、本気で言ってるの?」
「勿論。本当は声帯を切り取ってしまいたいのだけど私がやったら手元が狂って君が死んでしまうかもしれないし、かと言って病院でやってもらうには色々と弊害があるだろうから妥協案として定期的に君の喉を潰すことにしたんだ。少なくとも声色を変えられるし嗄れ声になれば声を出す機会も減るだろうと考えたんだ」
困ったように眉を下げる夏油を彼女は信じられないものを見る目で見つめた。この人は誰だろう?彼女が知る夏油はいつも穏やかで優しく、いつだって彼女を尊重してくれる恋人だった。多少頑固で融通の利かない所はあったけれど少なくとも彼女に危害を与えるような人物ではなかった。
しかし現に今、夏油は彼女の上に覆いかぶさり彼女の細い首に手を添えて逃げ場を奪っているだけで無く、彼女を傷つけることを声高に宣言した。本能的に彼女が逃げようと身をよじるとそれを阻止するように添えた手に力を込めた。
「やめ、てっ、すぐる」
「君が逃げようとするのが悪いと思うな。一応今日まで勉強はしてきたし大方成功すると思うけれど、力加減が難しくてね。うっかり手元が狂った場合、酷いと呼吸困難になったりして苦しむらしいから大人しくしていた方が賢明だと思うよ」
首に添えられた手を掴み引き剥がそうと試みるも悲しいほどにビクともしない。あまりにも強い狂気と恐怖に襲われた彼女の瞳から涙が溢れる。
「なんで、なんでよ、傑・・・!やめて、お願いっ!」
「理由?そんなの、君の声が好きだからに決まってるだろう」
「嘘っ!好きだったらこんなことしないっ!!」
「違うよ、反対だ。好きだからこそ自分だけの物にしてしまいたいんだ。他の誰も聞くことが出来ないように。・・・君の声は私だけを呼んでいれば良いんだ。私にだけ愛を囁ければ、それで十分じゃないか」
だからこそのボイスレコーダーだった。彼女に何度も何度も声色を変えて貰いながら呼ばせた夏油の名前と愛の言葉は全て、彼女の本来持っていた美しい声を自分だけのものにする為の夏油の策だった。計り知れない嫉妬心。執着心。普段の柔和な態度の中に隠されたそれが夏油の持っていた本質の愛だった。しかし今更気付いた所で彼女にはもう逃げ場が無い。
「大丈夫、これから繰り返し何度もやるつもりだから徐々に上手くなって苦しみも軽くなるよ。大体がすぐに治ってしまうそうだけど、何度も繰り返せば元に戻らなくなるかもしれないと思うんだ。だから私と一緒に頑張ろうね」
微笑みながら言った夏油の言葉に彼女は顔面を蒼白とさせながらパクパクと口を動かした。心因性の失声症。最早喉を潰すまでも無く彼女の声が失われたことにも気付かずに夏油は彼女の首を・・・・・・・
「傑」
「もう1回。今度は少し声を高くして」
「傑」
「うん。じゃあ同じように次は好きだよって言って」
「え〜それは恥ずかしいよ」
「・・・駄目かい?」
「も〜仕方ないなぁ。・・・好きだよ」
「ありがとう」
カチッとボイスレコーダーのスイッチを押す音が部屋に響く。夏油はそのボイスレコーダーを耳に当てながら再生ボタンを押し、先程録音した彼女の声を確認する。
「・・・うん、いいかな」
「終わり?」
「うん、終わりだよ。ありがとう」
「突然声を録音させて欲しいなんて言うからびっくりしたよ。どうするの?それ」
「こうしておけばいつでも何処にいても聞きたい時に君の声が聞けると思ってね」
「う、嬉しいけどそれなら電話した方が良くない?そうすれば私も傑の声聞けるし」
「それはもうこれからは意味を成さないよ」
「意味を成さない?どうして?」
「・・・知りたい?」
薄く笑った夏油が彼女の肩をトン、と少し強めに押すと力を抜いていた彼女は勢いに押されすんなりと後方に倒れた。そんな彼女の上にすぐさま夏油が覆い被さる。夏油の左手は彼女の顔の横に置かれ、右手は彼女の喉元に当てられた。
「傑?」
「知ってる?首の中央辺り、所謂喉仏がある所に強い外傷を受けると一時的ではあるけれど声が枯れたりするそうでね。君だと・・・この辺りかな」
グッと喉に触れている夏油の親指が押し込められると違和感と息苦しさに彼女の顔が歪んだ。
「く、るしいよ傑、」
「あぁ、ごめんね。なるべく君が痛くないようにしてあげたいんだけどやっぱり難しいかな」
「さ、っきから何の話してるの?意味が分からないよ!」
先程まで普通に話していた夏油の突然の奇行と不可思議な言動に彼女は戸惑いの声を上げた。喉を撫でる手つきは優しいのに目付きはギラギラと不穏な色を映しているものだから不気味で仕方がない。体を起こそうと力を入れてみたものの夏油との体格差は歴然でビクともせず押し返されてしまった。
「難しかったかな?簡単に言うと君の喉を潰そうとしているのだけど」
「な、にそれ、本気で言ってるの?」
「勿論。本当は声帯を切り取ってしまいたいのだけど私がやったら手元が狂って君が死んでしまうかもしれないし、かと言って病院でやってもらうには色々と弊害があるだろうから妥協案として定期的に君の喉を潰すことにしたんだ。少なくとも声色を変えられるし嗄れ声になれば声を出す機会も減るだろうと考えたんだ」
困ったように眉を下げる夏油を彼女は信じられないものを見る目で見つめた。この人は誰だろう?彼女が知る夏油はいつも穏やかで優しく、いつだって彼女を尊重してくれる恋人だった。多少頑固で融通の利かない所はあったけれど少なくとも彼女に危害を与えるような人物ではなかった。
しかし現に今、夏油は彼女の上に覆いかぶさり彼女の細い首に手を添えて逃げ場を奪っているだけで無く、彼女を傷つけることを声高に宣言した。本能的に彼女が逃げようと身をよじるとそれを阻止するように添えた手に力を込めた。
「やめ、てっ、すぐる」
「君が逃げようとするのが悪いと思うな。一応今日まで勉強はしてきたし大方成功すると思うけれど、力加減が難しくてね。うっかり手元が狂った場合、酷いと呼吸困難になったりして苦しむらしいから大人しくしていた方が賢明だと思うよ」
首に添えられた手を掴み引き剥がそうと試みるも悲しいほどにビクともしない。あまりにも強い狂気と恐怖に襲われた彼女の瞳から涙が溢れる。
「なんで、なんでよ、傑・・・!やめて、お願いっ!」
「理由?そんなの、君の声が好きだからに決まってるだろう」
「嘘っ!好きだったらこんなことしないっ!!」
「違うよ、反対だ。好きだからこそ自分だけの物にしてしまいたいんだ。他の誰も聞くことが出来ないように。・・・君の声は私だけを呼んでいれば良いんだ。私にだけ愛を囁ければ、それで十分じゃないか」
だからこそのボイスレコーダーだった。彼女に何度も何度も声色を変えて貰いながら呼ばせた夏油の名前と愛の言葉は全て、彼女の本来持っていた美しい声を自分だけのものにする為の夏油の策だった。計り知れない嫉妬心。執着心。普段の柔和な態度の中に隠されたそれが夏油の持っていた本質の愛だった。しかし今更気付いた所で彼女にはもう逃げ場が無い。
「大丈夫、これから繰り返し何度もやるつもりだから徐々に上手くなって苦しみも軽くなるよ。大体がすぐに治ってしまうそうだけど、何度も繰り返せば元に戻らなくなるかもしれないと思うんだ。だから私と一緒に頑張ろうね」
微笑みながら言った夏油の言葉に彼女は顔面を蒼白とさせながらパクパクと口を動かした。心因性の失声症。最早喉を潰すまでも無く彼女の声が失われたことにも気付かずに夏油は彼女の首を・・・・・・・