スクールライフ
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6月。球技大会の優れなかった結果なんて微塵も残さず梅雨が来た。衣替えをしたとたんに肌寒い日が続く。そして早々にやって来る中間テスト。授業態度は不真面目だけれど、そこそこの結果を残しているから特には問題ない。と、思う。能ある鷹は爪を隠すではないけれど、家ではちゃんと勉強しているのだ。一応。テスト1週間前。部活動禁止期間でもわたしは部室に行く。勉強をしに。家で勉強をしているとはいったけれど、やっぱり学校や図書館でした方が集中できるのは間違いない。去年は誰もいない美術室で1人黙々と勉強をしていた。今年はたぶん、きっと、ウタ先生がいる。必ず職員室で部室の鍵を持って行くのが当たり前だったのに、この数ヶ月でそれはしなくなった。いつでも、だいたいは先生がいるから。
「しつれーしまーす」
鍵の空いている部室を開けながらそう言えば、くるりと振り向く個性的な背中。ぱちくりと目を瞬かせる。そして、少しずつ怪訝な面持ちへと変わっていく。
「...部活禁止...だけど?」
「お勉強しにきましたー」
その証拠に画材は持ってません、とアピールするように両手を広げる。先生は、あぁ、と納得したようだ。
「僕、いない方がいい?」
「え、わかんかいトコ聞くんで居て下さい」
退室しようとする先生の腕を掴んで阻止をする。
「中間テストに美術はないよ?」
「美術以外の教科は教えてくれないんですか!?」
でもいいです。教えてくれなくても、隣で絵を描いていてくれたら、それだけで落ち着いて勉強してられる。無言でも、お互いの鉛筆や筆や彫刻刀などの音が聞こえるだけで、落ち着ける位には距離が縮まったと思う。毎日のように一緒に部活動をしていたから。
「教えてくれなくてもいいです。たぶんわかるから。先生は先生のことしてていーですよ!」
「ふふ、じゃあお言葉に甘えて」
先生はキャンバスの前に戻り、わたしはその隣の机に教科書を広げた。中間テストは国語・社会・数学・理科・英語の5教科。国語と英語は雰囲気だから勉強しない。テスト範囲を軽く復習する程度だ。数学は公式さえ覚えておけば大丈夫。応用問題なんて公式を複数使うってだけだ。理科なんてもはやポイントだけ抑えておけばある程度は大丈夫。問題は社会だ。美術史はすらすらと出てきても、世界や日本の歴史は繋がらないし、地理なんて日本とヨーロッパくらいしかよく知らない。おまけに社会のテスト範囲はいつも篦棒に広い。いつもいつも、なぜこんなにも莫大な量を出すのかとげんなりする。今回はどうやって覚えたものか。思わず口がへの字になる。
「社会、苦手なの?」
「!?」
ビックリした。集中していただけに、凄く驚いた。いつの間にかキャンバスを離れて後ろから覗き込む先生に全く気付かなかった。
「な、なんで?」
「ため息吐いてたから」
自分でも無意識に吐いていたらしいため息に気付いて来てくれるとか...やさしっ!それにしても、わかるから大丈夫、なんて啖呵切ってなかったかな、わたし。
「...まぁ...得意では、ないです」
ブツブツと小声で尻すぼみになって行く言い訳なんて、先生は気にしない。顔の横から伸びてきた手が、とん、と机に置かれる。それはぐちゃぐちゃと言い訳だらけになる頭を全部吹っ飛ばした。
「範囲どこからどこまで?」
先生の個性的な模様が入った手がわたしの教科書を捲る為に少し曲げられれば自然と近付いて来る顔。どきりと心臓が跳ねた。いや、ドキッってなんだわたし。我に返って範囲を伝えると、広いね、と笑った。よくよく見ると、先生の耳や目元には無数の穴が空いていて、こんなんでよく教師になれたな、なんて思ってしまった。
「範囲が広いってことは、本当に大事なところしか出ないって事だよ。細かいところは出ないんじゃないかな?」
あくまで僕の予想だからね、と釘を刺しながら不意に向けられた顔の口元にも穴が空いていた。わお、と軽く驚いていると、聞いてる?、と首を傾げる先生。そんな先生はなんだか可愛く見えて、その無数のピアス穴はただの黒子か何かなんじゃないかとさえ思えてくる。
「先生って...ギャップ萌えだね」
「...え?」
「何でもないです!社会、教えて下さい!」
こんなに近くで先生を見れるのは、生徒の中ではきっとわたしだけ、だよね。なんだかそれが嬉しくて、この気持ちが恋だったらいいな、なんて少女漫画みたいな事を思う。同時に、先生と生徒の恋ってヤバいかなともおもうのだけれど...。可愛い仕草とか、歳上の余裕とか、個性的な作品とか、ふとした時に掛けてる眼鏡とか、先生をいいなと思う理由がいっぱいあり過ぎるなぁ。なんだかこのまま先生に溺れていってしまいそうだ。
「しつれーしまーす」
鍵の空いている部室を開けながらそう言えば、くるりと振り向く個性的な背中。ぱちくりと目を瞬かせる。そして、少しずつ怪訝な面持ちへと変わっていく。
「...部活禁止...だけど?」
「お勉強しにきましたー」
その証拠に画材は持ってません、とアピールするように両手を広げる。先生は、あぁ、と納得したようだ。
「僕、いない方がいい?」
「え、わかんかいトコ聞くんで居て下さい」
退室しようとする先生の腕を掴んで阻止をする。
「中間テストに美術はないよ?」
「美術以外の教科は教えてくれないんですか!?」
でもいいです。教えてくれなくても、隣で絵を描いていてくれたら、それだけで落ち着いて勉強してられる。無言でも、お互いの鉛筆や筆や彫刻刀などの音が聞こえるだけで、落ち着ける位には距離が縮まったと思う。毎日のように一緒に部活動をしていたから。
「教えてくれなくてもいいです。たぶんわかるから。先生は先生のことしてていーですよ!」
「ふふ、じゃあお言葉に甘えて」
先生はキャンバスの前に戻り、わたしはその隣の机に教科書を広げた。中間テストは国語・社会・数学・理科・英語の5教科。国語と英語は雰囲気だから勉強しない。テスト範囲を軽く復習する程度だ。数学は公式さえ覚えておけば大丈夫。応用問題なんて公式を複数使うってだけだ。理科なんてもはやポイントだけ抑えておけばある程度は大丈夫。問題は社会だ。美術史はすらすらと出てきても、世界や日本の歴史は繋がらないし、地理なんて日本とヨーロッパくらいしかよく知らない。おまけに社会のテスト範囲はいつも篦棒に広い。いつもいつも、なぜこんなにも莫大な量を出すのかとげんなりする。今回はどうやって覚えたものか。思わず口がへの字になる。
「社会、苦手なの?」
「!?」
ビックリした。集中していただけに、凄く驚いた。いつの間にかキャンバスを離れて後ろから覗き込む先生に全く気付かなかった。
「な、なんで?」
「ため息吐いてたから」
自分でも無意識に吐いていたらしいため息に気付いて来てくれるとか...やさしっ!それにしても、わかるから大丈夫、なんて啖呵切ってなかったかな、わたし。
「...まぁ...得意では、ないです」
ブツブツと小声で尻すぼみになって行く言い訳なんて、先生は気にしない。顔の横から伸びてきた手が、とん、と机に置かれる。それはぐちゃぐちゃと言い訳だらけになる頭を全部吹っ飛ばした。
「範囲どこからどこまで?」
先生の個性的な模様が入った手がわたしの教科書を捲る為に少し曲げられれば自然と近付いて来る顔。どきりと心臓が跳ねた。いや、ドキッってなんだわたし。我に返って範囲を伝えると、広いね、と笑った。よくよく見ると、先生の耳や目元には無数の穴が空いていて、こんなんでよく教師になれたな、なんて思ってしまった。
「範囲が広いってことは、本当に大事なところしか出ないって事だよ。細かいところは出ないんじゃないかな?」
あくまで僕の予想だからね、と釘を刺しながら不意に向けられた顔の口元にも穴が空いていた。わお、と軽く驚いていると、聞いてる?、と首を傾げる先生。そんな先生はなんだか可愛く見えて、その無数のピアス穴はただの黒子か何かなんじゃないかとさえ思えてくる。
「先生って...ギャップ萌えだね」
「...え?」
「何でもないです!社会、教えて下さい!」
こんなに近くで先生を見れるのは、生徒の中ではきっとわたしだけ、だよね。なんだかそれが嬉しくて、この気持ちが恋だったらいいな、なんて少女漫画みたいな事を思う。同時に、先生と生徒の恋ってヤバいかなともおもうのだけれど...。可愛い仕草とか、歳上の余裕とか、個性的な作品とか、ふとした時に掛けてる眼鏡とか、先生をいいなと思う理由がいっぱいあり過ぎるなぁ。なんだかこのまま先生に溺れていってしまいそうだ。
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