スクールライフ
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5月。少しずつ暑くなってくる気温。球技大会の種目決めがされて、わたしはバレーボールになった。勿論そんなもの体育の授業でしかやった事のない運動音痴はサーブすら入れるのがやっとだ。レシーブなんて以ての外。もはや溜息しか出ない。放課後はいつもソッコーで部活に行っていたのに、この期間はそれを許して貰えない。昼休みも放課後も、練習だと駆り出され、くたくたになって帰宅すると絵を描く余裕もなく寝てしまって全く作品が進まない。授業中に描く落書きしか進まない。
昼休み、4限終了のチャイムと共にやっとの思いでお弁当を片手に教室を抜け出し職員室を経由して部室へと走った。球技大会まで1週間、激化する練習をついに免れた。...と言うか、サボった。1日くらい、今日くらい、いいよね?はーーー、と大きく長いため息を吐きながら美術準備室に入り、中から鍵をかける。これで邪魔されない。久しぶりの部室。見慣れない作品がいくつか増えていて、どれもこれもウタ先生の作品だとすぐに分かる繊細な物だった。その中にあったスケッチブックをぱらぱらと捲る。そこには学校の風景だったり、何かのデザインだったり、デッサンだったり、いろいろと描かれていた。さすが美術教師。暇さえあれば何かを創作しているみたいだ。関心しながらページを進めて行くと、まだ白紙の残るそのスケッチブックの最後のイラストを見て目を丸くした。
「あれ、三上さん。」
鍵をかけた扉から現れたのは、このスケッチブックの持ち主で、慌ててそれを机に戻した。お邪魔してまーす、と取って付けたような笑顔を貼り付けた。
「お弁当、食べに来たの?」
こくこくと頷く。先生の手には購買のビニール袋が下げられていた。
「先生もこれからご飯ですか?」
うん、と頷く先生は普段通りだ。色々見てたの分かってるだろうに...。見られて困るような物はないって事...?むむむっと1人逡巡していると、先生が隣まで来ていてビックリした。
「一緒に食べる?」
「いいんですか?」
「その為に来たんじゃないの?」
「...そうです。」
先生の机に、美術室から椅子を1つ持ってきて2人で並んでお昼を食べる。
「お弁当、美味しそうだね」
「自分の好きな物しか入れないですから」
「自分で作ってるの?」
「うち、両親共に忙しいから。」
「ふーん。頑張ってるね」
えらいえらい、と頭を撫でられた。先生の白くて大きな手が頭を滑っている。無言でお弁当を食べ進めるが、顔が熱いから、わたしは今きっと真っ赤だ。
「三上さん、練習はいいの?」
お昼を食べ終わって美術室に移動し、そこの窓から見える景色に先生が振り返る。窓から見える中庭と校庭には体操服を着て練習に励む生徒が沢山いた。ここからはこんなに沢山の生徒が見えるんだ。
「いつも練習頑張ってえらいね」
さっきのスケッチブックを思い出した。
「高校2年生の球技大会は1回きりだよ」
わたしの心の罪悪感を、この人は見透かしているのだろうか。遠くにちらりと見えたチームメイトをじっと見つめる。生憎、わたしはしっかりと体操服を身に着けている。こうして逃げてはいるけれど、心のどこかで向き合わないと行けないことくらい分かっている。そんな葛藤を知ってか知らずか、先生はいつも通りすました顔で背を叩く。その手はとても優しい。
「先生、わたしね、運動苦手だしみんなに迷惑かけるのが苦しくて逃げてきたんだ...。」
このままじゃいけない。そんなのわかってる。苦い顔のまま足元をじっと見て、覚悟をきめる。ぎゅっと拳を握りしめれば、それも固くなる。
「わたし頑張るから、試合見に来てね!」
見上げた先生はにっこりと笑って頷いてくれた。そして、行ってらっしゃい、と送り出してくれる。苦手な事でも逃げてばっかりじゃダメだよね。先生、ありがとう。わたし頑張るね。頑張るから、もっとわたしを見てて。先生のスケッチブック、わたしでいっぱいにしてやる。
昼休み、4限終了のチャイムと共にやっとの思いでお弁当を片手に教室を抜け出し職員室を経由して部室へと走った。球技大会まで1週間、激化する練習をついに免れた。...と言うか、サボった。1日くらい、今日くらい、いいよね?はーーー、と大きく長いため息を吐きながら美術準備室に入り、中から鍵をかける。これで邪魔されない。久しぶりの部室。見慣れない作品がいくつか増えていて、どれもこれもウタ先生の作品だとすぐに分かる繊細な物だった。その中にあったスケッチブックをぱらぱらと捲る。そこには学校の風景だったり、何かのデザインだったり、デッサンだったり、いろいろと描かれていた。さすが美術教師。暇さえあれば何かを創作しているみたいだ。関心しながらページを進めて行くと、まだ白紙の残るそのスケッチブックの最後のイラストを見て目を丸くした。
「あれ、三上さん。」
鍵をかけた扉から現れたのは、このスケッチブックの持ち主で、慌ててそれを机に戻した。お邪魔してまーす、と取って付けたような笑顔を貼り付けた。
「お弁当、食べに来たの?」
こくこくと頷く。先生の手には購買のビニール袋が下げられていた。
「先生もこれからご飯ですか?」
うん、と頷く先生は普段通りだ。色々見てたの分かってるだろうに...。見られて困るような物はないって事...?むむむっと1人逡巡していると、先生が隣まで来ていてビックリした。
「一緒に食べる?」
「いいんですか?」
「その為に来たんじゃないの?」
「...そうです。」
先生の机に、美術室から椅子を1つ持ってきて2人で並んでお昼を食べる。
「お弁当、美味しそうだね」
「自分の好きな物しか入れないですから」
「自分で作ってるの?」
「うち、両親共に忙しいから。」
「ふーん。頑張ってるね」
えらいえらい、と頭を撫でられた。先生の白くて大きな手が頭を滑っている。無言でお弁当を食べ進めるが、顔が熱いから、わたしは今きっと真っ赤だ。
「三上さん、練習はいいの?」
お昼を食べ終わって美術室に移動し、そこの窓から見える景色に先生が振り返る。窓から見える中庭と校庭には体操服を着て練習に励む生徒が沢山いた。ここからはこんなに沢山の生徒が見えるんだ。
「いつも練習頑張ってえらいね」
さっきのスケッチブックを思い出した。
「高校2年生の球技大会は1回きりだよ」
わたしの心の罪悪感を、この人は見透かしているのだろうか。遠くにちらりと見えたチームメイトをじっと見つめる。生憎、わたしはしっかりと体操服を身に着けている。こうして逃げてはいるけれど、心のどこかで向き合わないと行けないことくらい分かっている。そんな葛藤を知ってか知らずか、先生はいつも通りすました顔で背を叩く。その手はとても優しい。
「先生、わたしね、運動苦手だしみんなに迷惑かけるのが苦しくて逃げてきたんだ...。」
このままじゃいけない。そんなのわかってる。苦い顔のまま足元をじっと見て、覚悟をきめる。ぎゅっと拳を握りしめれば、それも固くなる。
「わたし頑張るから、試合見に来てね!」
見上げた先生はにっこりと笑って頷いてくれた。そして、行ってらっしゃい、と送り出してくれる。苦手な事でも逃げてばっかりじゃダメだよね。先生、ありがとう。わたし頑張るね。頑張るから、もっとわたしを見てて。先生のスケッチブック、わたしでいっぱいにしてやる。