スクールライフ
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4月。2年目の高校生活の幕開け。新入生よりちょっぴり早く始まる学校生活。慣れない2年生の教室。少しだけ変わったクラスメイト。学生らしく始業式は脳内での創作活動からの睡眠時間に当てた。ガタガタと周りの立ち上がる音で目が覚めて、慌てて一緒に立ち上がり礼をすれば、今日の一大イベントは終わったようなものだ。もうすぐで部活の時間だ。2年生の1日目が終わろうとしていてもまだザワザワと落ち着きのない教室で、わたしも例に違わず急いていた。ホームルーム終了の挨拶をしてすぐに、1年から同じクラスだった友達に手を振って教室を後にした。廊下にも人がちらほらと居て、やっぱりザワついている。たんたんっと軽い足取りで階段を降りていく。気持ちは2段飛ばしくらいの気持ちだが、生憎運動神経がないので1段ずつ確実に降りていく。転んで利き手を捻るなんて最悪だから。職員室で部室の鍵を借り、小走りで渡り廊下を抜けていく。特別教室の校舎に入ればもうすぐ部室だ。『美術準備室』と書かれた扉に鍵を差し込んで回転させると、カチャリ、となるはずの音はしない。大抵は自分が1番乗りなのだが、どうやら今日は先客がいるらしい。顧問はそこまで熱心ではないし、一体誰だろうか。首を捻りながら、それなりの勢いで扉を開け放つが、そこには誰もいない。不用心だなぁ、と呟きながら自分の画材を持って美術室へと繋がる引き戸をそっと開けると、そこには物凄く個性的な髪型をした人が背中を向けて座っていた。こんな人、1年のときには見た事がないが...。制服を着ていないと言うことは生徒ではないのだろう。新任の教師か、はたまた外部コーチか何かか。扉の所でぽかんと考え倦ねていると、その人が振り向いた。
「あれ、美術部員?」
こくりと頷くと、早いね、と言って立ち上がった。その手にはとても繊細な彫刻があった。
「すぐ片付けるね」
窓際に置かれたそれは、繊細で個性的でとても綺麗で...まるでキラキラと輝いているように見えた。こんなに綺麗な彫刻をわたしは見たことがない。そもそも、彫刻を見る機会なんて滅多にないのだけれど。
「すごい...」
思わず声が漏れた。ハッとしてこれを作ったであろう人物を見ると、目を丸くしてきょとんとしている。心からの本音を不意に聞かれてると恥ずかしくなるもので、かーっといっきに顔に熱が集まる。ふふっ、と笑うものだから余計にだ。
「ありがとう。作品を見て貰えるって嬉しいね」
そう言って彫刻に手を添える。その指は、細くて長くて白くて、まるでその彫刻の手のようだった。
「えっと、先生?も一緒に続きしたらいいじゃないですか!」
わたしの提案に、んー、と少しだけ逡巡する。名残惜しそうな視線が彫刻に注がれていた。
「僕、一応顧問だし、監督責任って言うのがあるからさ」
「じゃあ、こうしたらいいです!」
ガタガタと自分の準備を、先生が今まで彫刻を彫っていたであろう場所のすぐ隣に展開した。そして、先生が座っていたであろう椅子に座って、自分のキャンバスを見る。
「ほら、よく見える」
にっと笑って振り返ると、目を丸くした先生がいた。何か諦めたように息を吐くと、他の部員がくるまでね、と言って彫刻を手にこちらへと歩を進めた。他の部員が来ることはなく、先生は彫刻を完成させ、わたしは小さな油絵を完成させた。
次の日、友達に先生の事を話すと、少しだけ話題になった。ウタ先生と言って、しっかりと始業式で紹介されていたらしい。担当教科は美術。美術部の新顧問だそうだ。寝てたのバレたな。部活に向かうと、今度はキャンバスの前に個性的な後ろ姿があった。手には彫刻刀ではなく鉛筆が握られていて、これまた個性的な世界が広がっている。鉛筆1本で表されたモノクロームな世界は、なんだかダークな雰囲気を醸し出していた。
「三上さん、こんにちは」
「こんにちは...って言うか、名前知ってたんだ」
「2年3組、三上 若葉さん。始業式が始まって早々に熟睡し始めた問題児、ってところかな?」
あ、やっぱりバレてた。と言うか、最初から知られてたようだ。
「唯一の真面目な部員だって聞いたから、どんな子だろうと思ってさ。」
もう少し上手く寝ようね、とクスクス笑う先生。はーい、と気のない返事をして、また先生の隣にキャンバスを立てた。こうしてわたしの2週目の学校生活は始まった。
「あれ、美術部員?」
こくりと頷くと、早いね、と言って立ち上がった。その手にはとても繊細な彫刻があった。
「すぐ片付けるね」
窓際に置かれたそれは、繊細で個性的でとても綺麗で...まるでキラキラと輝いているように見えた。こんなに綺麗な彫刻をわたしは見たことがない。そもそも、彫刻を見る機会なんて滅多にないのだけれど。
「すごい...」
思わず声が漏れた。ハッとしてこれを作ったであろう人物を見ると、目を丸くしてきょとんとしている。心からの本音を不意に聞かれてると恥ずかしくなるもので、かーっといっきに顔に熱が集まる。ふふっ、と笑うものだから余計にだ。
「ありがとう。作品を見て貰えるって嬉しいね」
そう言って彫刻に手を添える。その指は、細くて長くて白くて、まるでその彫刻の手のようだった。
「えっと、先生?も一緒に続きしたらいいじゃないですか!」
わたしの提案に、んー、と少しだけ逡巡する。名残惜しそうな視線が彫刻に注がれていた。
「僕、一応顧問だし、監督責任って言うのがあるからさ」
「じゃあ、こうしたらいいです!」
ガタガタと自分の準備を、先生が今まで彫刻を彫っていたであろう場所のすぐ隣に展開した。そして、先生が座っていたであろう椅子に座って、自分のキャンバスを見る。
「ほら、よく見える」
にっと笑って振り返ると、目を丸くした先生がいた。何か諦めたように息を吐くと、他の部員がくるまでね、と言って彫刻を手にこちらへと歩を進めた。他の部員が来ることはなく、先生は彫刻を完成させ、わたしは小さな油絵を完成させた。
次の日、友達に先生の事を話すと、少しだけ話題になった。ウタ先生と言って、しっかりと始業式で紹介されていたらしい。担当教科は美術。美術部の新顧問だそうだ。寝てたのバレたな。部活に向かうと、今度はキャンバスの前に個性的な後ろ姿があった。手には彫刻刀ではなく鉛筆が握られていて、これまた個性的な世界が広がっている。鉛筆1本で表されたモノクロームな世界は、なんだかダークな雰囲気を醸し出していた。
「三上さん、こんにちは」
「こんにちは...って言うか、名前知ってたんだ」
「2年3組、三上 若葉さん。始業式が始まって早々に熟睡し始めた問題児、ってところかな?」
あ、やっぱりバレてた。と言うか、最初から知られてたようだ。
「唯一の真面目な部員だって聞いたから、どんな子だろうと思ってさ。」
もう少し上手く寝ようね、とクスクス笑う先生。はーい、と気のない返事をして、また先生の隣にキャンバスを立てた。こうしてわたしの2週目の学校生活は始まった。
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