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本当の脅威は…

「……こらぁああああッ!!!」

そんないい感じの雰囲気を、遠くから走ってきたグレンの怒鳴り声がぶち壊した。

「また勝手にここに来て……って、あっ!!客人まで巻き込んで…ずっとこの人捜してたんですからね!?私の労力返しなさいッ!!」

グレンは三人に駆け寄ると、急に聞こえた怒鳴り声に心臓が爆発しそうになって死にかけてるキルアを放置して双子を叱りつけた。

「あーあ、見つかっちゃった……。」

「先生、うるさいのだ。その客人が先生の怒鳴り声で死にかけてるのだ。」

「はっ!ドッキリ系だめでしたっけ!すみません!!」

グレンは慌ててキルアの背中を擦り、ペコペコと頭を下げながら謝った。

「……もう嫌だ……。」

キルアは完全に弱ってしまい、膝を抱えうずくまってしまった。

「あぁ、どうか子供のように拗ねないでください。飴ちゃんあげますから、ね?」

「餓鬼扱いしてんじゃねぇクソ牧師!!!」

キルアは頭を撫でようとするグレンの手を振り払った。グレンは微笑み、スっと手を引っ込めた。

「その様子でしたら大丈夫ですね、よかった。」

「ちっ。」

キルアは舌打ちをすると、すくっと立ち上がり砂を払った。

「んで?何なんだよこの餓鬼共は?散々人を振り回しやがって……。」

「この子達は赤ん坊の頃にある方から預けられた双子です。女の子の方が姉のリオ、男の子の方が弟のレオです。」

「……リオと、レオ?」

キルアはその名を聞くと、目を見開いて名前を繰り返した。

「ええ、確か若い男の人が雨の日に二人を抱えて預けに来たんですよ。「この子達の親は訳あって急遽遠い地に旅立たなければならなくなった。自分はこの子達をここに届け、親が戻ってくるまで金銭的援助をするよう約束した。」と言われまして……。」

「その人はたまに僕達に会いに来てくれるのだ!とっても優しい人で、この孤児院に定期的に寄付をしてくれているのだ!」

「その人はいつも僕達に言うんだ!「お父さんとお母さんは必ず君達を迎えに来る。寂しいだろうけど、それまでは俺がしっかり守るから。」って!だから僕達、ずっといい子にして待ってるんだ!」

リオとレオは眩しい笑顔でキルアに教えた。キルアはその時何かに気付き、ぐっと拳を握った。

「……あの野郎……っ。」

「?どうかされました?」

グレンはキルアの様子に違和感を覚え、顔を覗き込もうとした。

「……用事を思い出した。」

キルアはそう呟くと、乱暴にポケットに手を突っ込み、鍵を取り出してグレンに押し付けた。

「え?あ、ちょっと……!」

「あいつの金は、全部ここに寄付するように言われた。好きに使え。じゃーな。」

キルアはそう言うと地面を思い切り蹴り、孤児院の屋根に飛び乗った。リオとレオはそれに感激しながらキルアに向かって叫んだ。

「お兄ちゃん!また僕達と遊びに来てくれる!?」

「次は離れまで行くのだ!そこにはここより綺麗な花畑があるのだ!お兄ちゃんもきっと気に入るぞ!」

「……あぁ、また来てやるよ。」

キルアは軽く手を振り、にっと笑うと屋根の向こう側に飛び降りて消えてしまった。

「……行っちゃったのだ。」

「でも、また遊んでくれるって!楽しみだね!」

「うむ!待ち遠しいのだ!!」

「……あなた達、やけにあの人に懐いてますけど、何でですか?」

グレンは珍しそうに首を傾げて二人を見つめた。

「「何となく!!」」

二人はニコッと笑い、手を繋いでまた遊びに行ってしまった。

「……何となくで人をダクト滑り台に落とさないでください。」

グレンは深くため息を吐き、額に手を当てた。そして押し付けられた鍵を見つめ、瞳を細めた。

「……そう言えば、あの双子を預けに来た人、そろそろ来る時期なのにまだ来てませんね。まぁ化け物が出る物騒な時ですから、仕方ないのかも知れませんが……。」

グレンはそこであることに気がついた。

「ん?あの人……そう言えばどんな顔でしたっけ…?」
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