本当の脅威は…
ー孤児院ー
「こちらですよ。」
グレンに案内されたのは、教会と渡り廊下で繋がっている孤児院だった。教会よりは建物自体新しく、なかなかの広さだった。
「……そこそこ広いんだな。」
キルアはキョロキョロと周りを見渡しながら呟いた。グレンは微笑みながら頷いた。
「優しい人達からの寄付金のお陰で、少しずつですが拡張していったんです。まぁ、広さの分、ここに来る子供達が多いのも事実ですが……あいたっ。」
グレンがそこまで話すと、上から何かが落ちてきてグレンの頭に当たった。
「あ!先生ごめんね!当てるつもり無かったんだ!」
「先生痛そ〜!」
「?」
キルアが声のする方を見ると、二階の廊下から子供達がこちらを見ていた。
「もう……私の頭にタンコブができちゃいますよ?」
グレンは苦笑いしながら、落ちてきた汽車の玩具を拾い上げた。
「あれ?先生、その人お客さんなの?」
「なんでマントなんか被ってるのー?」
子供達は不思議そうにキルアのことを見ていた。キルアは顔を少し伏せながら黙っていた。
「こらこら、お客様に失礼ですよ。すみません、これを渡してくるので、先に行っててください。この先まっすぐ言って突き当りを右に曲がったところに赤い扉の部屋がありますから。」
「あ、あぁ……分かった。」
グレンが階段の方に走っていくのを見送ると、キルアは言われた通りに進んだ。
「……ん?」
突き当りについて、そのまま右に曲がろうとしたキルアだったが、左側の廊下を見るとキルアは足を止めた。
「……地下の、階段か?」
薄暗い左側の通路の奥には、下に降りる階段があった。そこは進まないようロープが張られていたが、キルアは何故かどうしてもそっちに進みたくなった。
「……いい思い出もねぇはずなんだけどな。」
キルアはそう呟くと、そのまま左に曲がって階段を降りていった。
ー地下ー
下に降りると、そこは真っ暗な通路が続いていた。キルアは足元に気をつけながらゆっくり奥に進んでいった。
「……あの時のまんまか。まぁ寄り付きたくもないわな。」
キルアが独り言を言いながら歩き続けると、やがて鎖と南京錠で固く閉ざされた扉が現れた。キルアは何の躊躇もなく、それを鎖鎌で断ち切って扉を開けた。そして中に入ると、そこには巨大な何かの装置が中心にあり、その周りにも小型の装置がいくつも並んでいた。
「……懐かしい、って言いたくねぇなぁ。」
キルアはフッと笑い、中心の装置にそっと触れた。
「人を散々改良した挙句、簡単に捨てやがって……っとにどいつもこいつもふざけてんな。」
そう、ここはかつて戦争のために『人間兵器』を研究、制作していた実験施設だった。キルアは生まれついた時からここで被験体として肉体改造などされていた。全身に広がる刺青も、『人間兵器』になる際に化学反応で現れたものだった。『人間兵器』は身体能力を人間が耐えられる極限まで上げられ、五感も野生動物並に感じるように改良された。不要な感情は捨てさせ、ただ人や物を破壊することに快楽を感じるようにすることで、人を殺すこと、国を壊すことへの抵抗を無くすことに成功した。実際に戦争に『人間兵器』を導入し、実用的であることが確認されたが、本格的に『人間兵器』を導入し始める前にこの研究は中止になった。キルアはその原因を知らなかった。研究が中止になり、被験体と下級研究員が全員処分される寸前に一人逃げ出すことに成功したため、事情など知る由もなかったのだ。
「ま、俺にはもう関係ねぇ事だけどな。お陰で今まで生き延びてこれたし……切り裂きジャックさえいなけりゃ、もっと……」
キルアはだんだん声が小さくなり、やがて唇を噛み締めるように口を閉ざした。拳を強く握りしめ、何かを必死に堪えるように肩を震わせた。
「っ……俺だって……俺だって『普通の人間』になりたかったっての!!!」
キルアは怒りをぶつけるように、拳を装置に振り下ろした。鈍い音が部屋に響き渡り、装置は大きくへこんだ。キルアは荒れた呼吸を落ち着かせながら、血が滲んだ拳を見つめた。
「……何もしてねぇのに、好きでこんなんになった訳じゃねぇのに……俺ァ普通の幸せも許されねぇのか……?」
キルアは泣きそうな顔をしながら、額を装置にそっと当てて呟いた。その声はあまりにも悲しそうで、今までのキルアからは想像もつかないような弱々しさだった。キルアはただの殺人鬼ではなく、一人の『被害者』だったのだ。
「こちらですよ。」
グレンに案内されたのは、教会と渡り廊下で繋がっている孤児院だった。教会よりは建物自体新しく、なかなかの広さだった。
「……そこそこ広いんだな。」
キルアはキョロキョロと周りを見渡しながら呟いた。グレンは微笑みながら頷いた。
「優しい人達からの寄付金のお陰で、少しずつですが拡張していったんです。まぁ、広さの分、ここに来る子供達が多いのも事実ですが……あいたっ。」
グレンがそこまで話すと、上から何かが落ちてきてグレンの頭に当たった。
「あ!先生ごめんね!当てるつもり無かったんだ!」
「先生痛そ〜!」
「?」
キルアが声のする方を見ると、二階の廊下から子供達がこちらを見ていた。
「もう……私の頭にタンコブができちゃいますよ?」
グレンは苦笑いしながら、落ちてきた汽車の玩具を拾い上げた。
「あれ?先生、その人お客さんなの?」
「なんでマントなんか被ってるのー?」
子供達は不思議そうにキルアのことを見ていた。キルアは顔を少し伏せながら黙っていた。
「こらこら、お客様に失礼ですよ。すみません、これを渡してくるので、先に行っててください。この先まっすぐ言って突き当りを右に曲がったところに赤い扉の部屋がありますから。」
「あ、あぁ……分かった。」
グレンが階段の方に走っていくのを見送ると、キルアは言われた通りに進んだ。
「……ん?」
突き当りについて、そのまま右に曲がろうとしたキルアだったが、左側の廊下を見るとキルアは足を止めた。
「……地下の、階段か?」
薄暗い左側の通路の奥には、下に降りる階段があった。そこは進まないようロープが張られていたが、キルアは何故かどうしてもそっちに進みたくなった。
「……いい思い出もねぇはずなんだけどな。」
キルアはそう呟くと、そのまま左に曲がって階段を降りていった。
ー地下ー
下に降りると、そこは真っ暗な通路が続いていた。キルアは足元に気をつけながらゆっくり奥に進んでいった。
「……あの時のまんまか。まぁ寄り付きたくもないわな。」
キルアが独り言を言いながら歩き続けると、やがて鎖と南京錠で固く閉ざされた扉が現れた。キルアは何の躊躇もなく、それを鎖鎌で断ち切って扉を開けた。そして中に入ると、そこには巨大な何かの装置が中心にあり、その周りにも小型の装置がいくつも並んでいた。
「……懐かしい、って言いたくねぇなぁ。」
キルアはフッと笑い、中心の装置にそっと触れた。
「人を散々改良した挙句、簡単に捨てやがって……っとにどいつもこいつもふざけてんな。」
そう、ここはかつて戦争のために『人間兵器』を研究、制作していた実験施設だった。キルアは生まれついた時からここで被験体として肉体改造などされていた。全身に広がる刺青も、『人間兵器』になる際に化学反応で現れたものだった。『人間兵器』は身体能力を人間が耐えられる極限まで上げられ、五感も野生動物並に感じるように改良された。不要な感情は捨てさせ、ただ人や物を破壊することに快楽を感じるようにすることで、人を殺すこと、国を壊すことへの抵抗を無くすことに成功した。実際に戦争に『人間兵器』を導入し、実用的であることが確認されたが、本格的に『人間兵器』を導入し始める前にこの研究は中止になった。キルアはその原因を知らなかった。研究が中止になり、被験体と下級研究員が全員処分される寸前に一人逃げ出すことに成功したため、事情など知る由もなかったのだ。
「ま、俺にはもう関係ねぇ事だけどな。お陰で今まで生き延びてこれたし……切り裂きジャックさえいなけりゃ、もっと……」
キルアはだんだん声が小さくなり、やがて唇を噛み締めるように口を閉ざした。拳を強く握りしめ、何かを必死に堪えるように肩を震わせた。
「っ……俺だって……俺だって『普通の人間』になりたかったっての!!!」
キルアは怒りをぶつけるように、拳を装置に振り下ろした。鈍い音が部屋に響き渡り、装置は大きくへこんだ。キルアは荒れた呼吸を落ち着かせながら、血が滲んだ拳を見つめた。
「……何もしてねぇのに、好きでこんなんになった訳じゃねぇのに……俺ァ普通の幸せも許されねぇのか……?」
キルアは泣きそうな顔をしながら、額を装置にそっと当てて呟いた。その声はあまりにも悲しそうで、今までのキルアからは想像もつかないような弱々しさだった。キルアはただの殺人鬼ではなく、一人の『被害者』だったのだ。
