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本当の脅威は…

ー森の奥ー

その頃キルアはバルの頼み事を果たすために森の奥をひたすら歩いていた。あれからかなりの時間が経ったが、まだ教会についていなかった。

「……こんなに遠かったっけな。」

キルアはまるでその教会に行ったことがあるようなことをポツリと呟いた。すると漸く森が開けているところが見えた。

「お、やっと森を抜けられるか。…念の為に顔は隠しとくか。」

そう言うとキルアは一度立ち止まり、足元から影のようなものを出現させた。それはゆっくりキルアの体を包み込み、やがて真っ黒なフード付きのマントに変わった。キルアはフードを深く被って顔を隠すと、足早に森を抜けた。

「さぁて、教会はどこだっけなぁ?」

キルアは広大な草原を目を凝らして見渡すと、かなり離れたところにポツリと立っている建物を見つけた。

「……マジかよ。」

キルアはまだ歩くのかとウンザリしながら呟いた。

「…しょーがねぇなぁ。金も回収しなきゃなんねぇし、ここで帰んのも意味ねぇし。」

キルアは大きくため息をつくと、建物に向かって再び歩き出した。





ー寂れた教会ー

「…………やっと、着いた……ッ!!」

思った以上に離れていた建物に、キルアはやっとのことで辿り着いた。元々体力に自信はあったものの、既に膝が笑っていた。

「……しかし結構ボロいな…。本当にここで孤児院なんかやってんのか?」

「えぇ、やっていますよ。」

キルアが独り言を言うと、急に後ろから返事が返ってきた。

「うぉおっ!?」

キルアは肩を震わせながら驚き、一歩後退しながら振り返って身構えた。

「オ、オメェいつからそこにっ!?」

「貴方が『やっと着いた』と言った時から、ですよ。」

こんばんはと続けて挨拶をした金の長髪で右目に眼帯をした男は、にこっと優しく微笑んでいた。

「もー、驚かすんじゃねぇよぉ……俺ァドッキリ系には弱ぇんだから。」

キルアは胸をさすりながら警戒を解いた。

「それは失礼しました。なんせ昔から気配を消すのが得意でして……最近じゃ、無意識の内に気配が消えていて子供達にもよく怒られてしまいます。」

男は苦笑いしながら軽く頭を下げた。

「あ、申し遅れました。私はここの牧師、グレンと申します。こんな遅くにどうされました?」

男、グレンは首を傾げながらキルアに問いかけた。キルアは少し何と説明しようか迷いながら答えた。

「あー……っと、ちと頼まれ事をされてな。これを届けるようにと、そいつの金を取ってくるようにって。」

キルアがグレンに土地の権利書を渡すと、グレンはすぐに誰に頼まれたのかが分かり、目を見開いた。

「まさか、バルさんがわざわざ取り返しに……?」

「らしいな、ガキ共のためとか何とか言ってたぜ。まぁ襲われて死んじまったけど。」

「っ!!」

グレンはその言葉を聞いて表情を険しくした。

「襲われたって……誰に?」

「さぁな、あの黒い化け物だったけど、人の姿にも変わってた。あー、あのオッサンは見覚えがあったみてぇだぜ?そんな反応してた。」

「……そう、ですか。」

グレンは一度目を閉じて深呼吸をすると、目を開いて微笑んだ。

「わざわざありがとうございます。これで政府の人間も何も言えないでしょう。子供達も安心して暮らせます。」

「あんまりショックはなさそうだな。」

「……、慣れてますから。」

グレンは少し肩を窄めながら苦笑いした。

「彼のことは後で私が迎えに行きます。彼のお金を持っていくんですよね?」

「あ、あぁ。そんな簡単に渡していいのか?」

キルアは無防備そうなグレンを見て逆に心配になった。グレンはふふっと笑い、頷いた。

「そのポケットに入っている彼が持っていた鍵…そしてこの権利書をちゃんと渡してくれた貴方は信頼できますから。」

「あ?」

そう言ってキルアの横を通り過ぎたグレンを見た後、キルアは自分のズボンのポケットを確認した。確かに鍵は入っているものの、外見からでは何が入っているのか、普通の人間…ましてや片目の彼にわかるはずがなかった。

「……、何でわかったんだよ。」

キルアはポカンとしながらグレンの後をついていった。
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