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本当の脅威は…

とある町外れの廃工場ー

「…ふーっ、これで三十通りはやったか?」

町外れにある廃工場で、キルアはジャックを無茶苦茶に痛めつけていた。ジャックは左肩に鉄板を打ち付けられ、腕を封じられてしまった挙句、コンクリートの壁に太い杭であらゆる関節を打ち付けられて固定されていた。全身切りつけられ、深く切り裂かれた腹からは内臓などが見えるほどだった。目も潰され、ジャックはただただ生きているうちは味わえない……いや、死んでも味わうことは出来ない苦しみの中でか細い呼吸を繰り返すだけだった。

「そんなのいちいち数えてないよ。て言うか、本当にその状態で生きてるのかい?内臓見えてるじゃないか…うえっ。」

「一応生きてるみてぇだぜ?すげぇよなぁ、頭ぶっ刺しても本当に死なねぇんだぜ?一体どんな痛みを味わってんだろうな!?」

「さぁね、人間は到底知り得ないようなもんじゃないかい?だってこんだけ体抉られて、血なんか流れきっちまいそうな勢いなのに死ねないんだから。普通こうなる前にとっくに死ぬよ。」

ガルディアはヤスリで爪の形を整えながら淡々と言った。ガルディアは元々暗殺者として働いていたため、特にグロテスクなものはどうもなかったが、流石にジャックの状態は気持ち悪いらしく、あまり見ようとしていなかった。ただジャックの悲鳴や苦しむ声を、まるで音楽を楽しむように聴いていた。

「だよな~。こうやって内臓鷲掴みにしてやっても死ねねぇから……普通に感触も痛みも感じちまうよなぁ?」

そう言うとキルアはジャックの裂けた腹に手を突っ込み、内臓を乱暴に掴んだ。

「ゔぁ……ッッッ!!!」

ジャックは抉れて見えもしない目を見開きながら大量に血を吐き、動かない体を必死に動かそうと身動ぎした。キルアは楽しそうに笑い、ぱっと手を離した。

「いいぜぇ、その顔……。そろそろへばってもいいんだぜ?あの餓鬼殺してやるだけだからよ……!」

キルアは手にベッタリとついたジャックの血をべろりと舐めながらそう言った。ジャックは必死に呼吸をしながら、決して気絶しまいと酷い痛みと戦っていた。

「……う、っせぇ……っ、ま、だ……くたばっちゃ……ね、よ……ッ!!」

「へへっ、流石切り裂きジャックだぜ。その度胸、褒めてやるよ。」

キルアはポンポンとジャックの頭を撫でると、ふと時計を見た。

「そうだな……、特別に一回寝んねさせてやるよ。俺の鎖鎌も壊れちまったことだし、休憩だ休憩!」

「いいのかい?そんな甘やかして…。」

ガルディアは呆れたようにキルアを見た。

「おう、ついでにオメェも一回休んでこいよ。こいつに結構やられてたじゃねぇか。」

「だーれのせいであんな目にあったと思ってるんだい!」

「いって!!」

ガルディアはヤスリをキルアの額に命中させると、ため息を吐きながら立ち上がった。

「……ま、確かに回復し切ってないし、お言葉に甘えて休ませてもらうよ。逃がすんじゃないよ?アンタすぐ誰か殺しに行こうとするんだからさ。」

「こんなんでこいつも動けるわけねぇって。長時間離れたりしねぇし、安心して寝てこいよ。」

キルアは額を擦りながらガルディアに早く行くよう促した。ガルディアはふっと微笑み、キルアに歩み寄った。

「分かったよ……ほんじゃ、お休み。」

そう言うと、ガルディアはキルアの唇にキスをした。キルアはガルディアの唇が離れると、自分の唇をぺろっと舐めた。

「ん、お休み~俺の子猫~。」

キルアはヒラヒラと手を振った。ガルディアはフフッと笑うと、部屋の隅の影に溶けるように沈んで消えていった。

「……オメェも一回寝とけ、起きたらまた可愛がってやるからよ?あの大事な餓鬼を殺されねぇように精々耐える体力蓄えときな……っと!!」

そう言ってキルアは振り返ると、先ほど投げつけれたヤスリを思い切りジャックの眉間に突き刺した。

「ッ………!!」

ジャックは何が起こったのか理解する間もなく、目を開いたままがくりと力尽きた。キルアはニヤリと笑いながらヤスリを抜き取り、ポイッと投げ捨てた。

「あ~、俺ってなんて優しいんだか。憎くて憎くてたまらねぇ相手に休む時間をやるなんて……優しすぎて自分でも泣けてくるぜ。」

キルアは一人でベラベラと喋りながら、焚き火の横で切れた鎖鎌を直し始めた。





ー1時間後ー

「……っし!綺麗に直ったぜ!流石俺だなぁ~」

キルアは馴れた手つきであっという間に鎖鎌を直し終わると、焚き火にかざして傷が無いか確認していた。

「……切り裂きジャックはまだ寝ちまってるしなぁ……、切れ味具合を確かめてぇから、ちょっくら殺してくるか!」

キルアはにやっと笑うと、スクっと立ち上がって鎖鎌を担いだ。

「……ま、ほんの二、三人だし、ガルディアが起きてくる前に帰れるよな。」

キルアは少しガルディアに言われた言葉を気にしながらも、ノコノコと外に出ていってしまった。

「…………。」

その時、ジャックの様子に僅かな変化があった事にも気が付かずに…。
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