新たな脅威
「…そんな嘘、誰が信じるもんですか。」
クロエは怒りを露にし、神を名乗る男…ゼウスをぎろっと睨んだ。
「神なんて存在しない…神がいるのなら、あたしは神に散々裏切られた!いくら願っても、神は助けてなんてくれなかった!!」
「だから、僕は救うよ。」
ゼウスは急に優しい表情になり、静かにそう言った。クロエは目を見開き、声が出なくなった。
「罪人を裁くことというのは、罪人の『罪』を取り除くってこと。『罪』を取り除かれた罪人はただの人となる……僕は君達を『罪』の鎖から解き放つためにここにいるんだ。」
「何言ってるの。現にクロエちゃん達に呪いをかけて苦しめてるじゃないの、これのどこが救いなの?」
ロニーは不服そうに腕を組んでゼウスを睨んだ。
「馬鹿だなぁ。罪人の『罪』をただで取り除いてあげるだなんて、気前が良すぎるんじゃない?取り除くには、己の『罪』を自覚し、しっかり償わないといけない……呪いをかけることで己の『罪』を自覚し償うチャンスを与えたんじゃないか。ま、そのチャンスも無駄にしようとしている輩もいるけどね?」
ゼウスはクスッと笑い、チラッとクロエを見た。クロエはハッと我に返り、再びゼウスを睨んだ。
「さて、無駄話をしにここに来たんじゃないんだよ。この死者達をどうにかしないと…。」
ゼウスは再び動き出した化け物達の方に体を向けた。
「…死者達って…?」
ロニーは眉をぴくりと動かし、化け物達を見た。
「彼らはこの国の『罪』の結晶…とでも言っておこうかな?この国に流れた何百万もの死者の血が、時を経て動き始めたんだ。『忘れられた歴史』を、取り戻すために…。」
「っ!!」
ロニーはその言葉に反応し、息を飲んだ。クロエの方はよくわかっていないようで、首を傾げていた。
「死んでも死にきれないだろうね……何故彼らが死んだかを、この国は忘れようと…いや、消そうとしてるんだから。」
ゼウスは瞳を細め、襲い掛かってくる化け物達に手を向けた。
「だからと言って、既に死んだ者が今を生きる人間を殺していいはずがないんだよ。」
ゼウスはそう言うと再び光を放った。すぐにその光は円を描き、巨大な魔方陣を描き出した。それに化け物達が攻撃をしてくると、魔方陣は盾の役割を果たし、その攻撃を食い止めた。力と力が対立し、鋭い音をたてながら火花が辺りに飛び散った。
「くっ……流石にこの数だとこの程度じゃ甘かったかな?全く君達の力は底知れないね…っ!」
ゼウスはもう片方の手にも別の魔方陣を描き出し、そこから蒼い焔を生み出した。
「まぁ直に君達を成仏させてあげるからさ……その時までちょっと大人しくしといてくれないかな!?」
ゼウスは盾の魔方陣を消すと同時に、焔を化け物達に向かって放った。焔は凄まじく燃え盛り、化け物達をあっという間に飲み込んでしまった。
「ギィアァアアッッッ!!!!」
化け物達は奇声を放ちながら苦しみ、消えかけながらもまた地面に沈んでいった。
「んー、完全には力を消耗し切れなかったか。まぁあれで全部ではないし、あまり意味はないか。」
ゼウスはパンパンと手を払いながらブツブツと独り言を呟いた。ゼウスの力を見た二人はまた唖然としていた。
「……本当に神なのかしら。」
「う、嘘よそんなの……どっかの凄腕の魔法使いよ。」
ロニーとクロエは少し引きながらコソコソと話した。ゼウスはむすっとしながら二人を見た。
「別に信じようが信じまいがどっちだっていいけど、一応助けてあげたんだからお礼ぐらい言ってほしいもんだね。」
「お礼なんか言わないわよ。言ってほしいならジュニちゃんとクロエちゃんの呪いを解きなさい。」
ロニーはクロエを背中に隠し、拳を構えた。
「うわ…ちょっ…!?」
「それでも解かないっていうなら、あたしがあんたの頭殴り潰すわよ!」
「キャー、ロニーカッコイイーやれやれー。」
クロエはふざけた調子でロニーの応援をした。ゼウスはやれやれと苦笑いしながら後退りした。
「いやいや…君に殴られたらこの僕でもやばいと思うし…ね?それに僕には呪いを解くことは出来ないし…、」
「あん?」
ロニーはいつもの女性の声ではなく、恐らく地声である低い声でガラ悪く聞き返した。ゼウスは冷や汗をかきながら、首に巻いたマフラーをクイッと口元まで上げた。
「あはは……参ったな…。」
「っ!?」
ロニーはそのマフラーと仕草を見ると、目を見開いた。
「……あんた、なんでそのマフラーを持ってるの…。」
「……え?」
ゼウスは一瞬言葉の意味が理解出来ず、上手く返事ができなかった。
「なんでって……そりゃ僕のものだからだよ。」
「嘘、あんたのものの筈がない。」
ロニーはハッキリとした口調で言った。
「その水色のマフラー、端にMの文字と太陽と月の刺繍がしてある…マリアがジャックにあげたマフラーよ。」
「そ、そんな…同じものぐらい僕が着けてたっておかしくないじゃないか。」
ゼウスはさらに鼻の上までマフラーを上げ、何やら焦っている様子だった。
「それと同じものはないわ。だってそれはマリアの祖母が自分で作ったものなんだから。それに、あなたのその仕草…ジャックの癖よね。」
「…ジャックって、お父さんの方の?」
クロエはチラッとロニーを見て尋ねた。
「そうよ……この際、ややこしいからジョーカーって言った方がいいわね。」
ロニーは頷き、ふと瞳を細めた。
「……この名前、あまり呼ばれたくなかったみたいだからね。」
「……。」
ゼウスは隙を見て退散しようとしていたが、それに気付いたロニーは足元に落ちていた小石を拾い上げ、思い切りゼウスの顔目掛けて投げつけた。ゼウスは血の気が引き、ギリギリの所で避けた。
「ひっ……。」
小石は後ろの壁にぶつかり、粉々に粉砕した。それだけでなく、壁の一部もパラパラと崩れていた。
「……あれ当たったら死んでたわね…。」
クロエはプルプルと震えながら壁を見つめるゼウスを少し憐れんだ。
「あたしに拳を握らせたら敵わないってことも知ってたみたいだし…、」
ロニーはゆっくりゼウスに歩み寄りながら、質問を投げかけた。
「あなた……本当は、誰なの…?」
「……ロナウドっ!!」
ゼウスは大声でロナウドを呼んだ。すると上からロナウドが飛び降りてきて、ロニーとゼウスの間に降り立った。そして手にしていた懐中時計をパカッと開き、それをロニーの方に投げた。
「全く、手のかかる人だ。」
ロナウドがそう言うと、懐中時計から鋭い光が放たれ、ロニーが目をつぶった瞬間に二人の姿が消えてしまった。
「っ!?」
「消えた…?」
二人は辺りを見渡したが、懐中時計すら見つからなかった。
「……逃がしちゃったわね。」
ロニーは苦笑いしながら、クロエの方を振り返った。その表情の裏に何かを秘めていることを、クロエは察した。
「ロニー、大丈夫……?」
「ええ、大丈夫。馬鹿よね、あれがジョーカーなわけ……いや、ジョーカーが生きているわけないのに。」
ロニーは泣き出しそうな声で、小さく呟いた。
「……ジャックのお父さんも、亡くなってるのね。お母さんは知ってたけど……。」
クロエは少し気まずそうにしながら言った。ロニーは首を横に振り、遠くの方を見つめた。その先には今は政府の本拠地になっている、かつての王家の城が見えた。
「正式には、生きてるか死んでるか分からないのよ…。ジョーカーはこの国の王を相手に、一人で戦ったわ。王の軍勢はそれは凄い実力を持った者の集まりだった。でも結果は王の負け……王は死に、軍勢は全員戦えない程度に負傷していた。でも、ジョーカーは見つからず、見つかったのはジョーカーの夥しい量の血だけ……。どこかへ引き摺られた形跡も無く、ただ一箇所に血溜まりができていただけだったの。」
「……どうして、ジョーカーは王と戦うことになったの?王と戦うなんて、国と戦ってるのと一緒じゃない。」
クロエは不思議そうに首を傾げた。ロニーは困ったように笑い、クロエの頭を撫でながら言った。
「理由を話せば、長くなるわ。まずは店に戻って、手当しながらジュニちゃんを助ける作戦を練らないと。」
「……そうね、わかった。」
クロエは頷き、差し出されたロニーの手を握った。そして二人は急いで店に戻っていった。
クロエは怒りを露にし、神を名乗る男…ゼウスをぎろっと睨んだ。
「神なんて存在しない…神がいるのなら、あたしは神に散々裏切られた!いくら願っても、神は助けてなんてくれなかった!!」
「だから、僕は救うよ。」
ゼウスは急に優しい表情になり、静かにそう言った。クロエは目を見開き、声が出なくなった。
「罪人を裁くことというのは、罪人の『罪』を取り除くってこと。『罪』を取り除かれた罪人はただの人となる……僕は君達を『罪』の鎖から解き放つためにここにいるんだ。」
「何言ってるの。現にクロエちゃん達に呪いをかけて苦しめてるじゃないの、これのどこが救いなの?」
ロニーは不服そうに腕を組んでゼウスを睨んだ。
「馬鹿だなぁ。罪人の『罪』をただで取り除いてあげるだなんて、気前が良すぎるんじゃない?取り除くには、己の『罪』を自覚し、しっかり償わないといけない……呪いをかけることで己の『罪』を自覚し償うチャンスを与えたんじゃないか。ま、そのチャンスも無駄にしようとしている輩もいるけどね?」
ゼウスはクスッと笑い、チラッとクロエを見た。クロエはハッと我に返り、再びゼウスを睨んだ。
「さて、無駄話をしにここに来たんじゃないんだよ。この死者達をどうにかしないと…。」
ゼウスは再び動き出した化け物達の方に体を向けた。
「…死者達って…?」
ロニーは眉をぴくりと動かし、化け物達を見た。
「彼らはこの国の『罪』の結晶…とでも言っておこうかな?この国に流れた何百万もの死者の血が、時を経て動き始めたんだ。『忘れられた歴史』を、取り戻すために…。」
「っ!!」
ロニーはその言葉に反応し、息を飲んだ。クロエの方はよくわかっていないようで、首を傾げていた。
「死んでも死にきれないだろうね……何故彼らが死んだかを、この国は忘れようと…いや、消そうとしてるんだから。」
ゼウスは瞳を細め、襲い掛かってくる化け物達に手を向けた。
「だからと言って、既に死んだ者が今を生きる人間を殺していいはずがないんだよ。」
ゼウスはそう言うと再び光を放った。すぐにその光は円を描き、巨大な魔方陣を描き出した。それに化け物達が攻撃をしてくると、魔方陣は盾の役割を果たし、その攻撃を食い止めた。力と力が対立し、鋭い音をたてながら火花が辺りに飛び散った。
「くっ……流石にこの数だとこの程度じゃ甘かったかな?全く君達の力は底知れないね…っ!」
ゼウスはもう片方の手にも別の魔方陣を描き出し、そこから蒼い焔を生み出した。
「まぁ直に君達を成仏させてあげるからさ……その時までちょっと大人しくしといてくれないかな!?」
ゼウスは盾の魔方陣を消すと同時に、焔を化け物達に向かって放った。焔は凄まじく燃え盛り、化け物達をあっという間に飲み込んでしまった。
「ギィアァアアッッッ!!!!」
化け物達は奇声を放ちながら苦しみ、消えかけながらもまた地面に沈んでいった。
「んー、完全には力を消耗し切れなかったか。まぁあれで全部ではないし、あまり意味はないか。」
ゼウスはパンパンと手を払いながらブツブツと独り言を呟いた。ゼウスの力を見た二人はまた唖然としていた。
「……本当に神なのかしら。」
「う、嘘よそんなの……どっかの凄腕の魔法使いよ。」
ロニーとクロエは少し引きながらコソコソと話した。ゼウスはむすっとしながら二人を見た。
「別に信じようが信じまいがどっちだっていいけど、一応助けてあげたんだからお礼ぐらい言ってほしいもんだね。」
「お礼なんか言わないわよ。言ってほしいならジュニちゃんとクロエちゃんの呪いを解きなさい。」
ロニーはクロエを背中に隠し、拳を構えた。
「うわ…ちょっ…!?」
「それでも解かないっていうなら、あたしがあんたの頭殴り潰すわよ!」
「キャー、ロニーカッコイイーやれやれー。」
クロエはふざけた調子でロニーの応援をした。ゼウスはやれやれと苦笑いしながら後退りした。
「いやいや…君に殴られたらこの僕でもやばいと思うし…ね?それに僕には呪いを解くことは出来ないし…、」
「あん?」
ロニーはいつもの女性の声ではなく、恐らく地声である低い声でガラ悪く聞き返した。ゼウスは冷や汗をかきながら、首に巻いたマフラーをクイッと口元まで上げた。
「あはは……参ったな…。」
「っ!?」
ロニーはそのマフラーと仕草を見ると、目を見開いた。
「……あんた、なんでそのマフラーを持ってるの…。」
「……え?」
ゼウスは一瞬言葉の意味が理解出来ず、上手く返事ができなかった。
「なんでって……そりゃ僕のものだからだよ。」
「嘘、あんたのものの筈がない。」
ロニーはハッキリとした口調で言った。
「その水色のマフラー、端にMの文字と太陽と月の刺繍がしてある…マリアがジャックにあげたマフラーよ。」
「そ、そんな…同じものぐらい僕が着けてたっておかしくないじゃないか。」
ゼウスはさらに鼻の上までマフラーを上げ、何やら焦っている様子だった。
「それと同じものはないわ。だってそれはマリアの祖母が自分で作ったものなんだから。それに、あなたのその仕草…ジャックの癖よね。」
「…ジャックって、お父さんの方の?」
クロエはチラッとロニーを見て尋ねた。
「そうよ……この際、ややこしいからジョーカーって言った方がいいわね。」
ロニーは頷き、ふと瞳を細めた。
「……この名前、あまり呼ばれたくなかったみたいだからね。」
「……。」
ゼウスは隙を見て退散しようとしていたが、それに気付いたロニーは足元に落ちていた小石を拾い上げ、思い切りゼウスの顔目掛けて投げつけた。ゼウスは血の気が引き、ギリギリの所で避けた。
「ひっ……。」
小石は後ろの壁にぶつかり、粉々に粉砕した。それだけでなく、壁の一部もパラパラと崩れていた。
「……あれ当たったら死んでたわね…。」
クロエはプルプルと震えながら壁を見つめるゼウスを少し憐れんだ。
「あたしに拳を握らせたら敵わないってことも知ってたみたいだし…、」
ロニーはゆっくりゼウスに歩み寄りながら、質問を投げかけた。
「あなた……本当は、誰なの…?」
「……ロナウドっ!!」
ゼウスは大声でロナウドを呼んだ。すると上からロナウドが飛び降りてきて、ロニーとゼウスの間に降り立った。そして手にしていた懐中時計をパカッと開き、それをロニーの方に投げた。
「全く、手のかかる人だ。」
ロナウドがそう言うと、懐中時計から鋭い光が放たれ、ロニーが目をつぶった瞬間に二人の姿が消えてしまった。
「っ!?」
「消えた…?」
二人は辺りを見渡したが、懐中時計すら見つからなかった。
「……逃がしちゃったわね。」
ロニーは苦笑いしながら、クロエの方を振り返った。その表情の裏に何かを秘めていることを、クロエは察した。
「ロニー、大丈夫……?」
「ええ、大丈夫。馬鹿よね、あれがジョーカーなわけ……いや、ジョーカーが生きているわけないのに。」
ロニーは泣き出しそうな声で、小さく呟いた。
「……ジャックのお父さんも、亡くなってるのね。お母さんは知ってたけど……。」
クロエは少し気まずそうにしながら言った。ロニーは首を横に振り、遠くの方を見つめた。その先には今は政府の本拠地になっている、かつての王家の城が見えた。
「正式には、生きてるか死んでるか分からないのよ…。ジョーカーはこの国の王を相手に、一人で戦ったわ。王の軍勢はそれは凄い実力を持った者の集まりだった。でも結果は王の負け……王は死に、軍勢は全員戦えない程度に負傷していた。でも、ジョーカーは見つからず、見つかったのはジョーカーの夥しい量の血だけ……。どこかへ引き摺られた形跡も無く、ただ一箇所に血溜まりができていただけだったの。」
「……どうして、ジョーカーは王と戦うことになったの?王と戦うなんて、国と戦ってるのと一緒じゃない。」
クロエは不思議そうに首を傾げた。ロニーは困ったように笑い、クロエの頭を撫でながら言った。
「理由を話せば、長くなるわ。まずは店に戻って、手当しながらジュニちゃんを助ける作戦を練らないと。」
「……そうね、わかった。」
クロエは頷き、差し出されたロニーの手を握った。そして二人は急いで店に戻っていった。
