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探し物

ーロニーBARー

「それで、オバケが怖いからジュニちゃんだけ図書館にいかせたのね。」

次の日、クロエはロニーの店で留守番をすることにした。散々ジャックに文句を言われ、朝から喧嘩していたのだが、とうとうジャックの方が折れて承諾したのだ。とはいえ、例の男にまた何かされては自分の命が危ないと言うことでロニーにクロエを預け、現在に至る。

「だってしょうがないじゃない。お城と繋がった地下室にいて、時計が大幅に狂ったのよ?こんなの普通じゃないわ!」

クロエはムスッと不機嫌そうにカウンターの椅子に座り、ロニーと対面して話した。

「そりゃ怖いのはわかるけど……ジュニちゃんじゃ、どれが原本か分からないんじゃないの?」

ロニーは心配そうに頬に手を当てながら首を傾げた。

「そうなのよ…だからそれっぽい本を見つけたら手当り次第持って帰ってきてもらって、安全なところであたしが確認するの。そう提案したら、『俺はあんたの荷物運びじゃねぇんだぞ!!』ってヤケに怒っちゃって…ほんっとに器が小さい男!!」

クロエは少しジャックの真似をしながら怒りを露にした。ロニーは苦笑いしながらクロエを宥めた。

「まぁまぁ…ジュニちゃんだって普段は左腕使えないんでしょ?何でも斬れちゃうから。そんな状況じゃ、資料運ぶのも大変なのよ…利き腕じゃないんだし。」

「そうだけど……。」

クロエは少し口を尖らせ、視線をそらした。

「クロエちゃんだって、本当は分かってるんでしょう?大変だってわかってるのに、結局ジュニちゃんあなたに合わせてくれたこと……ヤケクソで行ったんじゃないって。だから元気ないんでしょ。」

ロニーはそっとクロエの頭を撫でながら微笑んだ。

「……。」

「後悔してるなら、オバケが怖くなくなるよう特訓しましょ!魔法が使えなくてもフライパンを出す術が出来るんでしょ?なら頑張ればオバケを追い払うぐらいの術使えるようになるわ!」

ロニーはクロエの手を握り、大きく頷いた。

「ロニー……。」

「…とはいえ、その肝心な術のやり方がわからないわね…。」

ロニーは額に指を置き、何か方法がないか考えた。するとクロエはカウンターに手をバンっとつき、覚悟を決めた顔でロニーを見つめた。

「…ロニー、どこか広い部屋無い?」

「…あるわよ、あたし達の隠れ部屋がね。」

ロニーはクロエの瞳を見てふっと笑い、横の壁を親指で指さした。





ー図書館地下室ー

その頃ジャックは黙々と本を探し続けていたが、それっぽいのは見つからず、本棚に凭れて一旦休憩していた。

「くっそぉ…俺だって幽霊とか得意じゃねぇってのに〜…。大体この大量の本の中一人で探すのなんて無理だろ…。」

ジャックはため息を吐き、ふと天井を見つめた。

「…つーかこの装飾本当にすげぇな。複雑な形をよくここまで金属で表現出来たもんだぜ。」

ジャックはじっと装飾を見つめているうちに、ふとある事に気がついた。

「……ん?そういやこんな感じの形、城以外で見たな…。どこで見たんだっけな…?」

ジャックは必死に思い出そうと、頭を悩ませた。その時、服のポケットから指輪がポロッと落ちた。ジャックは床に転がった指輪を見て、目を見開いた。

「そうだ!こいつだ!!」

ジャックは指輪を拾い、金とルビーの繋ぎ目をよく見てみた。そこには美しく繊細な装飾が施されていた。

「こいつと部屋の装飾の形…パターンがほぼ一緒じゃねぇか。単なる偶然とは思えねぇな。」

ジャックは指輪を握りしめ、立ち上がって部屋の装飾を片っ端から確認し始めた。

「どこかに何かあるかもしれねぇ…この指輪が鍵になるような…。」

暫く探し続けると、丁度ドアと対面している本棚と天井の境目に、小さな窪みを見つけた。そこの装飾の形は、窪みの部分だけ途切れており、指輪をはめれば丁度繋がりそうだった。

「ここにはめれば。」

ジャックはゴクリと唾を飲み、そっと指輪をはめてみた。するとカチッと小さな音が鳴った瞬間、地響きが起こり、ドアに対面している本棚以外の全ての本棚が動き始めた。

「うおっ!?」

ジャックは必死に梯子にしがみつき、落ちないようにした。本棚は全体的に後退り、部屋が段々と広くなっていった。暫くすると本棚の動きが止まり、ドアに対面している本棚の両端にスペースができた。ジャックは恐る恐る梯子を降り、空いたスペースを見てみた。しかしそこには特に何も無かった。

「な、何だよ…こんだけ動いて何もなしとか……うぉおおっ!?」

そう言った瞬間、再び地響きを起こしながらドアに対面している本棚がゆっくりと床に沈んでいった。完全に本棚が床に沈むと、そこに新たな扉が現れた。

「…なんつー仕掛けだよ。」

ジャックは色々と圧倒されながら、そっと扉を開けた。

「…なんだここ。」

扉の向こうには上りの階段が続いており、二十段毎に本が左右一冊ずつ置かれていた。そして六十段目の次は百段目に、一冊だけ光に照らされた大きな本が置かれていて、計七冊の本がその部屋にあった。

「……一冊一冊、高そうな台に置かれてやがるな。しかも一番上のなんかライトアップまでされてんじゃねぇかよ。」

ジャックは本を確認しながらゆっくりと階段を上り始めた。本に綴られている題名などの文字は、全て金色に輝いていた。

「相当貴重な本ってわけだな…。隠し部屋まで作って保管してんなら、ぜってぇ当たりじゃねぇか。」

ジャックは一番上まで上ると、光に照らされた本をそっと手に取った。

「……この著者は……。」

ジャックは著者名の文字をゆっくり撫でながら、小さく呟いた。それは少し寂しそうな声だった。

「……取り敢えず、ここの七冊だけ持っていくか。」

ジャックはそう言うと、七冊の本を持ってきていた大きなカバンに詰め込み、隠し部屋を出た。

「おっと…指輪を回収しとかなきゃな……って、ありゃ?」

ジャックは床に沈んだ本棚の上を見て首を傾げた。本棚と共に沈んだ筈の指輪が、丁寧に置かれてあったのだ。

「………どうやって外すか悩まずに済んだけどよ…。もうここ怖ぇよ……!!」

ジャックはすぐに指輪を拾い、逃げるように地下室を後にした。

「……幽霊扱いしないでほしいものだ。」

ジャックがいなくなった後、本棚の隙間に隠れていたロナウドはそう呟きながら出てきた。

「さて……ここの扉は、隠しておかねば。」

ロナウドは懐中時計を取り出しながら、ふっと微笑んで隠し部屋の扉を見つめた。

「また、坊ちゃんに怒られてしまう。」
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