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ひとときの安らぎ

そして昼過ぎ頃、漸く町の安全が確認され、人々は我が家に戻る事を許された。逃げる際に大いに目立ってしまったため、これ以上人の目につかぬよう最後に出ようとしたジャック達に政府の人間が声を掛けた。

「お待ちください。」

「あ?」

ジャックは首だけを振り向かせ、政府の人間を見た。政府の人間はジャックに歩み寄り、ある物を手渡した。それは大きなルビーが嵌められた純金で出来た指輪だった。

「…何だ、この指輪?」

「それは我々政府の許可証代わりです。それがあれば立ち入り禁止の場所でも入れるようになります。拝見させていただいたところ、あの化け物に対抗できるのは、貴方しかいません…恥ずかしい限りですが、お力をお貸し頂きたい。」

「成程、要するにあいつらが出てきたらどこ入ってもいいから退治しろってことか。」

ジャックは指輪を太陽に照らして観察しながら言った。政府の人間は申し訳なさそうな顔をしながら続けた。

「そういわれると辛いものです。我々が守るべき市民に、このような危険な事を頼むわけですから…。それ以外でも、何か調べる必要があれば何かと役に立つはずです。困ったことがあれば、それを見せてください。」

「…ま、お守り程度に貰っとくわ。」

ジャックはそう言って微笑むと、指輪を胸ポケットにしまった。

「我々も何が情報が手に入り次第、ご連絡いたしますので、お名前と電話番号か住所をお教えいただけますか?」

「……あ、あぁ。」

ジャックはそういわれると、急にドキッとして青ざめた。クロエは慌ててジャックの腕を引っ張って耳打ちした。

「安心しなさいよ。今のあんたはただの市民A、名前教えたところで、誰も『切り裂きジャック』という殺人鬼なんて知らないわ。」

「お、おぉ…そうだった。」

ジャックは安心して肩をなでおろし、さっと振り返った。

「俺の名前は…ジャッ、ジャックだ。普通の、ジャック。」

(馬鹿……。)

クロエは呆れた様な顔をした。

「住所と名前はこれに載ってるから。」

「ジャック殿…成程、万屋ですか。何卒、ご協力お願い致します。」

政府の人間はジャックの名刺を受け取ると、きっちり敬礼をした。ジャックは軽くお辞儀して、早足でその場を離れた。クロエがその後ろをちょこちょことついて行ったあと、政府の人間は不思議そうに呟いた。

「…あの娘は、あの方の子供だろうか…?随分若い父親だな…。」
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