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謎の襲撃者

無事避難地域に辿り着いた二人は、そのままそこで一夜を過ごすことになった。流石に全ての人が建物で過ごすことは出来ず、二人は屋根が大きい建物の裏で休むことにした。

「…しっかし、何だったんだろうな。」

ジャックは支給されたタオルで髪を拭きながら口を開いた。

「さぁ…生きている人間では無いことは確かね。」

クロエは先ほど支給された新しい服に着替えていたが、やはり体が冷えたのか腕を摩っていた。

「そりゃそうだろーよ。あんな真っ黒で目も口もねぇなんて人間じゃねぇよ。」

ジャックは溜息を吐きながら壁に凭れた。

「この呪いがなかったら、それこそ終わってたぜ。あんなのまともにやり合えねぇ。」

「あら、珍しく弱気ね。」

クロエはジャックを見つめた。

「もしかしてオバケとか怖いのかしら?」

「ばっ、馬鹿かテメェ!!俺がそんなの怖いわけねぇだろ!」

ジャックは明らかに動揺しながらそう答えた。

「ふーん。意外とビビリなのね…。あ、もしかして逃げてる時に聞こえた情けない叫び声の持ち主は、あなただったのかしら?」

「はぁ!?ちげぇし、俺叫んでねぇし!」

「あらそ、まぁどうでもいいけど。とにかくもう疲れたわ…。」

クロエは壁に凭れながらうとうとし始めた。

「…こんな汚いところで、しかも外でこんな服で寝るなんて…最悪だわ。寒いし、絶対体痛くなる。」

「文句が多いな、相変わらず。あいつらに襲われないだけましだと思えよ。」

ジャックは上着を脱ぐと、乱暴にクロエにかけた。

「っ……。あなたは寒くないの?」

「俺は真冬に外で寝るなんて全然苦痛じゃねぇから、雨に濡れたぐらいザラじゃねぇよ。」

「…。」

クロエは暫くジャックの顔を見つめたあと、上着をギュッと握りしめながら丸まった。

「…一応言っておくわ。ありがとう……。」

「……おう。」

ジャックは真上の空を見つめながら返事をした。クロエはそれを聞くと、静かに瞳を閉じた。しかし、やはり寒かったのか少し震えていた。

「……世話がやけるお嬢だぜ。」

ジャックはそっとクロエを抱き寄せ、自分の体温で温めた。するとクロエの震えは止まり、やがて健やかな寝息を立て始めた。

「…しかし、あいつの言ってたこいつの過去って、一体何だ?」

実はジャックはクロエを探す途中、クロエと男の会話を途切れ途切れに聞こえていた。そこでクロエが罪を犯す前に何かあったことを悟っていたのだ。

「…ま、俺も話さなかったし、聞くのもあれだからな。気になるが、ほっといてやるか。」

ジャックはフッと微笑み、それから夜明けまで静かに雨を見つめていた。
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