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謎の襲撃者

あれから数週間、ジャックはひたすら犯罪者の情報を集めたが、やはりこれと言ったものはなく、男の情報も全く見つけられずに途方に暮れていた。

「あー!もう埒があかねぇ!!こうなったら直接奴を探した方がはえーじゃねぇか!!」

ジャックは書類を投げ捨て、机を叩きながら立ち上がった。

「何言ってるのよ。今のあなたに何が出来るの?相手はふざけた魔力の持ち主…そんな簡単に殺せると思ったら大間違いなんだから。」

クロエは溜息を吐きながら雑誌を読んでいた。

「ずっと寛いでる居候野郎に言われたくねぇんだよ!こっちはかの有名な『切り裂きジャック』だ!」

「だった、ね。」

クロエは雑誌を置いてジャックを見た。

「大体、よくわからないわ。前も言ったけど、あなたがけしかければその程度の犯罪者を意図的に生み出すのなんて簡単なはずよ?なのにその『切り裂きジャック』はそんなことしない…しかもよく調べてみれば殺す相手をよく選んでるそうじゃない。噂の『切り裂きジャック』と実際の『切り裂きジャック』は、どうも違う気がするわ。一体あなたは何が目的なの?」

「そんなの前にも言っただろ?俺は俺の存在をこの世に知らしめるために…。」

「本当にそれだけなの?」

クロエがさらに問うと、ジャックは黙り込んだ。クロエはその様子を見て、ジャックが何か隠しているような気がした。暫く沈黙が続くと、ジャックは頭を掻きながら口を開いた。

「そんなの、テメェには関係ねぇだろ。あームシャクシャしてきた、タバコ吸ってくるわ。」

そう言うとジャックは机の上にあるタバコの箱を握り締めて出ていってしまった。クロエはまた溜息を吐き、ソファーに凭れた。

「…男って本当に面倒臭いわね…。名を知らしめるためなら、それこそ無差別に殺していった方がいいじゃないのよ。なのに…あれは一体何がしたいのかしら?」

クロエはふと窓から外を眺めた。先程まで晴れていた空は急に曇りだし、風も強くなってきていた。

「あら…雨でも降るのかしら?もう、世話が焼けるわねぇ…雨が嫌いなのもどうしてなのかしら。」

クロエはぴょんっとソファーから降りると、傘を持ってジャックを追い掛けようと扉を開けた。すると階段の下で、人の形をした黒い物体が複数クロエを見ていた。

「……あら?」
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